停滞もまた道筋。
「まぁ、あまり収穫はなかったけど帰ろうか。」
シャマリオ先生がジュリオと私を促すが、ジュリオは何かを考えて動かない。
「ジュリオ……?」
「うん……もう隠しても仕方ない。ジュリアを信じていこうと思うのですがどうですか?」
「君の判断に任せるよ。あくまで僕は聞こえる事を伝えるだけだ。」
「何の話……。」
「前に俺には情報提供者がいると言ったよね。それがシャマリオ先生。」
シャマリオ先生が情報提供者、確かにこのショタ加減は色々な所に忍び込めそうだけども。
「僕の家系は人の声が聞こえるんだ。全てじゃないけどね。」
「こ、心の声が聞こえるってことですか!」
確かに特技って言ってた気がする。まさか本当だったとは……
「全部がはっきり聞こえる訳じゃないよ。君が僕の事をしょた先生って名前を略して呼んでたのとか、強い気持ちとか、そんなところだよ。」
「ヒミコが視えて、先生が聞こえる。聞こえたことを教えてください。」
「それがね、僕もわからないんだ。てんせいってジュリアからは強く聞こえてたけど。」
「てんせい……?ジュリア、俺のカードは先生で全てだ。知ってることは教えて欲しい。」
言うべきなのか、言ったからといって信じて貰えるのだろうか。
けれど私もこれ以上一人でどうにか出来る範囲を越えすぎているのも確かだ。
「信じて貰えないと思うけど、私はこの世界で起こることを知ってた。ヒミコみたいに視える訳じゃないし、ほとんど変わってしまったけど。」
おそらくシャマリオ先生が聞こえるのは一部であって、心の中が全てと言うわけではないはずだ。
本人も言ってたように全てが聞こえるのであれば、こんな事件だって簡単に解けるだろう。
「それは……具体的に何を知ってたの?」
「……レミジオとメアリーが結ばれる。」
「え、それはないでしょ。メアリーの声は聞こえた事があるけど、そんなこと微塵もなかったはずだよ。」
シャマリオ先生には疑われているようだ。そりゃそうか……
「ニーナが死ぬことは……?」
「誰が死ぬことも知らなかったよ。私が知ってた記憶ではこの交換留学にはセレナも一緒にいたはずなのに、セレナはいなかった。」
「セレナの代わりにニーナが来たってことか。」
「それはわからないよ。」
申し訳ないが、私を含めモブが一緒にだったのかなんていちいち覚えていない。
代わりといってもセレナはここで死ぬことはなかったし。
「これから、何が起こる?」
「ジュリオがメアリーに告白してフラれる。」
「ぶはっ」
シャマリオ先生が思わず吹き出す。いや、本当の事を言ってるはずなんだけどな。だってサスペンスじゃなくて恋愛なんだよこの小説は。
「ジュリア、俺はまじめに話してるんだけど。」
「私だってまじめに話してる。」
「確かに嘘はついてないのかな。」
「悪いけど、事件の事は本当に何も知らないよ。」
「……ジュリアが何かしたから、事件が起きた……?」
それは私もずっと思っていた。だが第三者から言われると予想以上にキツイ。
「まぁこの国にも予知とかもあるけど、それを予想して対策したら予知が変わるなんてよくある話さ。」
シャマリオ先生がフォローをしてくれる。確かに普通に考えればパラレルワールドとして選択肢の数だけ未来は変わる。
けどここは小説の中のはずで、未来は一つしかないはずなのだ。
「結局の所、悪魔のせいかもって話だけが収穫か……」
「悪魔って本当にいるの?」
「悪魔はどこにでもいるよ。心の問題さ。」
性悪説のような考えだろうか。あまり国の宗教には興味がなかったのだが、学園に戻ったら調べてみよう。
事件については、ほぼ進展はしてくれなかった。




