アロマとかお香とかお洒落よね。
ジュリオと共にニーナの部屋に入る。
仮住まいなので私と同じような間取りで、別段変わった所はなさそうだ。しいて言えばアロマでも焚いてたのか独特の匂いが少しする。
「居なくなった手がかりはなさそうだね。」
「女性の部屋に勝手に入ったのに、手がかりが何もないとはね。」
あ、女性の部屋だから私に一緒にきて欲しかったのか。
一人で入ると変態だもんね。
「そういえば……電話がある部屋とかないよね?」
「電話?電話は職員室にしかないはずだけど。」
「だよね。」
「何、ジュリアも隠さずに話してよ。」
「いや、ニーナが居なくなった日の前の夜に何か部屋から話し声が聞こえてきた気がしてさ。」
私の言葉にジュリオはより真剣な表情になり私を見つめる。
「あ、でも次の日にニーナに聞いても一人だったって怒ってはいたよ。」
「話し声の内容は?」
「全然聞こえなかったよ、少し争ってる感じはあったけど……」
「はぁ……」
ジュリオは私にあからさまに使えないなこいつという顔をしてきた。いやいや、あんたの情報屋でも助手でもないからね。
「もういいでしょ、出よう。」
これ以上はお互い有益な情報はないだろう。そう思い部屋から出ようとするが、視界の端に入った花瓶が気になり足を止める。
どこがどう、と言うとわからないのだが何か違和感を覚えた。
「この花……」
「花……?確かに珍しい色の花だね。」
白のユリなのだが、赤い模様が何本か見える。
珍しい種類のユリなのか、でもこの葉っぱの葉脈が赤いのは理科の実験とかで前の世界でみた現象ではないのか。
そう考えると私は花瓶をとって花を取り出した。
「あぁ……」
予想通り、花瓶には赤色の水が溜まっていた。
この匂い、おそらく血の匂いだ。
「なんで、こんな所に血が……」
ジュリオも驚き、他にも何か無いかと二人で再度部屋を探すと床のカーペットにも模様に紛れて血痕があるのに気がついた。
「ここにも血が……ジュリオ、警察に伝えた方がいいんじゃない?」
科学捜査がない以上、血痕があったからといって何か進むかはわからないが、誘拐で捜査されているならばここに血痕があるのは多少の手がかりになるのではないか。
「そうだね……ただこの血痕、上からというよりは下から染み出た感じがする。」
ジュリオはそういうとカーペットをめくる。
すると床には明らかに致死量とわかる血液の後があった。
「ひっ……」
気づいてしまうと部屋には血の匂いが充満してたのかと思わされた。
「ここで、何があったのか。」
ニーナの姿は部屋にはない。だがここで事件に巻き込まれたのであろうとわかる。
犯人はカーペットで血の跡を隠そうもしたのか。
これは確実に警察案件だ。急いで部屋から出てジュリオが警察に伝えてくれることになった。
お役御免となったが、事件の起こったであろう隣の部屋は怖い。もし可能なら別の部屋を用意して貰おうとニーナの部屋の隣の自分の部屋に入る。
「…………え?」
入ってすぐにベッドがあり、机が横にある簡易な部屋だ。そんな部屋のベッドに
お人形のように着飾られた、血まみれのニーナが座っていた。




