新品の畳は良い香り。
ヒミコはそれから授業内容以外のことは特に教えてくれなかった。
「先程の先生の話しは聞いてましたか?なら何故そのような答えになるのでしょう。ここの文章がヒントになってるでしょう。」
私に何か見えるから嫌われてると思っていたが、ヒミコは元々こういう話し方しか出来ないようだ。
授業が終わるとジュリオがヒミコにアピールしようとやってきた。
「さっき俺のこと見てたよね?俺はジュリオ、君のペアのジュリアの名前が似てるから覚えやすいでしょ。」
仲良くしてね、とジュリオが手を差し出す。
「……申し訳ありませんが。」
と、会釈をしてヒミコは教室から出ていってしまった。
「どんまい。」
「いや、別に俺フラれてないでしょ?きっと宗教上の理由かなんかだよ。」
「あー、ジュリオに触れたら汚れるもんね。しょうがない。」
「ジュリアも言うようになったねぇ。」
「二人とも、次は和室に移動よ。早くしないと置いてちゃうわよ。」
メアリーに声をかけられ慌てて和室へと移動する。
「あー……いいねぇ……」
畳の匂いが懐かしい。が、満喫してるのは私だけのようでチラホラと嫌がる話し声が聞こえてきた。
「やだぁ、何か草っぽい匂い。」
「だってこれも草でしょ、木じゃなくて草なんて大丈夫かしら。」
アルベルトを取り巻いてた二人だ。今もちゃっかりアルベルトの近くはキープしているらしい。
「アルベルトならこういう何もない部屋でも絵に出来そう。」
「床に直接座るなんて、出来ないどうしよー。」
「……」
アルベルトは諦めてるのかスルーを決め込んでいるのか女の子の話しは全く反応しない。
「邪魔、座んねぇならどけ。」
女の子を押し避けて、メルクリオがアルベルトの隣に座った。
あら、この二人意外に仲が良いのか?と思ったが、特に二人とも喋らずに無言で座っている。
私が一人でそわそわしている間にロウ先生がやって来て授業が始まった。
どうやら茶道の授業のようで、先生がお茶や順番の説明をしてくれる。
お茶の経験は皆無なので、しっかり見ておこうとロウ先生の見本を見ていると後ろから声をかけられた。
「……ジュリア、聞きたいことがあるの。」
「……どうぞ。」
ニーナだった。朝より何だか雰囲気が違う気がする。
「昨日……その……」
「はい、ではジュリアさん。この正解の順序はなんでしょうか。」
喋ってるのがバレて先生にあてられてしまった。
適当に答えるのも如何なものかと思い正直に先生に謝罪する。
「すみません、ボーとしてて聞いてませんでした。」
「そうですね。まずこの正解を伝えてませんから、気を抜かずに授業を受けてください。」
危うく適当に答えてたら危ないところだった。
そういえばニーナは何を言いかけてたのだろか。
本人にまた会った時に聞こうと思ったが、
それからニーナと会うことはなかった。




