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嘘つきは泥棒のはじまりだよ。



イージッタの喋り声とレミジオの相槌を聞きながら山道を進む。


それに対してメルクリオは明らかにイライラとしていた。


「レミジオのそのお洋服も趣味が、いっ、良いわよね……どこの有名店なのかしら。あ、私の服はね……」


「るせーんだよ、さっきからベラベラとよぉ。」


とうとうキレちゃった。


「なっ、何よ……あんたには話かけてないでしょ!」


「話かけてなくても聞こえてんだよ、テメーの作り話ばっかがよぉ。」


「作り話?」


私の疑問の呟きにはアルベルトが答えてくれた。


「彼女は料理が得意という話だろう。ポルケッタは豚の丸焼きの事だ。」


「そーだよ、単に焼くだけの豚の丸焼きに上手も下手もあるかよ、くっだらねぇ。」


「まぁまぁ、豚の丸焼きにも焼き加減とかあるだろうし。ほら、焚き火で食べ物を焼くのって難しいしね。」


昔、お兄様が釣った魚を黒焦げにして怒られたなぁ。近いと焦げるし、遠いと生焼けになるし意外と難しいんだよ。


「あああ、あんた達の知ってるポルケッタとは違うのよ!私のポルケッタは料理なの。ねぇ、レミジオ!」


「すまない、僕はどのポルケッタも食べたことがないからわからないんだ。」


いきりたつイージッタに素直に返すレミジオ。真面目か。


「それだけじゃねぇだろ。貴族でもないくせに貴族のフリしやがって。なっさけねぇ。」


あ、確かに「私の城では……」とか言ってたよね。中二病かと思って気にしてなかった。


メルクリオの言葉にイージッタは顔を真っ赤にして、森の奥に走って行ってしまった。


「わ、ちょ、誰か追いかけないの?」


「そういう君が追いかけたらいい。」


「はっ、追いかけてきて欲しがってんだよ。」


幸い道は曲がってはいるが、地図を見る限り一本道だから迷ったりすることはないだろうけど……


「でも女の子だし、何かあったら危ないんじゃないかな。」


「そうだね、彼女も走り続けることはないだろうし、ある程度ペースを早めて追い付こう。」


さすがレミジオ、紳士だ。

それ以上二人も文句を言わずにペースを上げて山道を登る。


しかしイージッタの姿は見えない。


「もしかして、道からそれちゃったのかな……山道って真っ直ぐ歩いてるようでもグルグル回る事があるみたいだし。」


それなら評価なんか気にせずに先生に伝えるべきだ。


「毎年使われてるだけあって、道は草も生えてなくてわかりやすい。別の道を歩く意味はないだろう。」


「俺たちが探してる様子をどっかで隠れて見てるんじゃねぇの。」


うーん、イージッタの性格ならその可能性もあるのかもしれない。


そう思いつつ、ひょこっとイージッタが見えないかと周りを見ながら歩いていると、道からそれた木の枝にイージッタのリュックがかかっているのを見つけた。


「あ、あれって……」


「イージッタのリュックだね、この奥に行ってしまったのかな。」


「いやおかしいだろうよ、何でわざわざ奥に行くのにリュックを枝にかけるんだよ。」


確かにメルクリオの言う通りだ。たまたま引っ掛かっても取れない高さではない。


もしかしたらお花詰みに行って、目印にかけた可能性もあるけど。


「まだ時間はある、少し奥まで行ってみて、イージッタがいなかったら戻ってまた進もう。」


レミジオの指示の元、少しずつ奥へと歩いていった。


気づくと日が沈みかけていた。


私たちはいつも蝋燭やランプのある場所で暮らしていた、だから気づかなかったのだ。


本当に光がないと自分の体すら見えないくらい真っ暗になると。

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