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9話 ルーキーとベテラン

あらすじ

異世界にこぶたとして転生してしまった元人間、チョップは相棒の牛侍と共に旅をしていた。旅の途中、ベテラン冒険者レガとの間に絆が結ばれる。しかし、レガはもうすぐ冒険者を引退するらしい。チョップ達はベテラン冒険者の引退会場に招かれたのだった。







ここはアザ村の中にある飲み屋である。

チョップ達はまったりとくつろいでいた。

牛侍は体が大きいので外でくつろいでいた。

少しかわいそうだが仕方がない。

いつか大きな店に連れて行こう、チョップはそう思った。


会場は、村人や冒険者達で賑わっていた。

レガは昔からの馴染みであろう人達と冒険者として最後の話をしている。その表情はこれまでの冒険に満足しつつも、どこか辞めたくない、そんな表情に見えた。


「バタン!」


大きな音が店の入り口から聞こえた。


「おぅおぅ!お前ら冒険者やめるんだってな!ったく情けねー」


冒険者が4人入ってきた。

1人は金髪、もう2人は茶髪で黒髪が1人のパーティーだ。

そして、リーダーらしき若い金髪の冒険者はレガの前の椅子に派手に座った。


「お別れのプレゼント」


そう言って大きな袋をレガの前に置いた。

レガは一言「ありがとう」と笑い、金髪がプレゼントと言った中身を開けてみる。


中に入っていたのはバキバキに折られたレガの剣だった。


「っ!!」レガは立ち上がり、金髪の冒険者を睨んだ。


「どうせ冒険者を辞めるんなら、その剣を貰ってやろうと思ってな〜」


男は満足そうに言い放つ。


「だが、あまりにもいらねぇから壊しちまった!」


「てめぇ…!」


レガは怒りに震えていた。

それもそうだろう。

バキバキになったレガの剣にはこれまでの数多くの思い出が詰まっている。


「あぁ?俺と戦うの…かかって来いよ。剣がないおっさんに何ができるか知らねぇけどよ!」


レガは悔しがりながらも、金髪を殴らなかった。


「はっ、つまんねぇ!帰るぞ」


殴られないと分かった金髪は、冒険者を引き連れて帰っていった。レガは金髪が帰った後「ちくしょう!」と声を荒げた。







「ブヒブヒ」


金髪が帰って少し時間が経ちチョップはレガを慰めていた。


「なんとなく声色でわかるぜ…ありがとな」


そう言うレガの顔色は暗かった。

先日忽然と姿を消した自分の剣が壊されたのだ。無理もない。


「なかなか優しいこぶただね。」


そう言ったのはユキさんだ。

とんでもないとチョップは鳴いた。レガは


「俺はよ、自分に腹がたってるんだ。剣を折られたことも悔しいが、勇気が出せねぇ自分に腹がたつ…」


と顔を顰めている。ユキさんは困り顔だったが


「まぁ自分を責めなさんな。これからは引退するんだし、ゆっくり暮らしていけばいいさ」


そう言って、レガの背中をバシッと叩いた。


「そう…だよな」


レガはユキさんの優しさに感謝した。


「ブヒブヒ」


チョップは異議ありと言わんばかりに鳴いた。


「ブヒブヒ、ブヒブヒ」


俺たちと一緒に冒険しよう。

そこで勇気をつかもう。チョップは真剣な表情で語りかけた。

チョップの様子を見たレガは


「あぁ、そうだな。元気つけてくれてありがとう、これからは農家にでもなって生きてくよ」


ここに来て伝わらない!

チョップはどうしようと悩んだ末に、レガを引っ張り外に連れ出した。


「ったく!なんだよ…」


レガは付いてきて不満そうだ。

チョップはこの時思いついていた。

自分の気持ちを言葉を使わずとも伝える方法を。



チョップは自身の蹄で、夜空を指した。


「あの星座は…グリフォン座?」


チョップはうさ耳の少女エリアと話していた時に

少女が好きな星座について話してもらっていた。


グリフォン座は冒険者という意味だ。

かつて一人の男がグリフォンと共に地をかけ、空を飛んで世界を冒険した。人は男の姿見て冒険者と呼んだ。

その出来事からグリフォン座は冒険者という意味になったそうだ。ちゃんと伝わるかな、そう思っていたところ


「星がどうかしたのか?」


とレガは気付いていなかった。

「これでも伝わらない!」と悩みこんでいるチョップ。

そこにユキさんがやってきた。

チョップはユキさんにも前足でグリフォン座を見せた。

ユキさんは「ん?」と言ってから


「おいレガ、グリフォン座の意味、知ってるかい?」


と聞いた。


「あぁ、知ってるよ冒険者だろ?それがどうした?」


「こぶたの蹄の先にある方向にはグリフォン座があるのよ…」


そう言われてレガはようやく気づいた。


「お前…!俺に冒険者続けろってことか…?」


チョップは嬉しそうに「ブヒブヒ」と鳴いた。

しかし現実は甘く無いと釘を刺すように、ユキさんが意見を述べた。


「とは言っても今、冒険者はたくさんいてね。私たちは他の の冒険者と特別に縁がある訳でもないし…」


「ブヒブヒ!」


チョップは牛侍のそばにかけ、自分と牛侍を交互にアピールした。


「お前たちが一緒に来てくれるのか…?」


「ブヒブヒ」「モォ〜」


豚と牛は、それぞれ鳴いた。

牛侍はチョップに続いただけだが。


「あんた、行って来なよ。この出会いは大切にした方がいい。私の勘がそう行ってるよ!」


「ユキまで!?」


レガは戸惑った。

普段真面目なユキがこんなことを言うなんて…そう思ったが、たしかにユキの勘は良く当たる。レガは覚悟を決めた。


「いいぜ!お前らと炎の中でも水の中にでも行ってやらぁ!」


「ブヒブヒ」


チョップは嬉しそうに鳴いた。

レガはこれから実際に炎の中と水の中に行くことになるのだが…。それはまだ、先のお話だ。





ミニストーリー

とあるベテラン冒険者(自称)の日記


今日凄いことが起きたんだ。

こぶたと牛を追ってたらいつの間にか一緒に冒険することになったんだ。

あの時、俺の放った矢が当たらなくて良かった。

心からそう思う。

そのこぶたと牛なかなかいい奴らでよ。

言葉は分からねえが気持ちが伝わってくるんだ。

慰めてくれたしな。

いつか名前を呼んでみたいがなんて呼べばいいのやら。

…まぁいいや!

明日から俺たちの冒険が幕を開ける!

今回は引退パーティーじゃない!

始まりのパーティーだ!俺はまだまだ頑張るぞ!



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