77話 見送り
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップは和国ヤマブキを訪れていた。旅の道中、出会った親子のユン。チョップはユンの父親であるジンを探すため、聞き込みをしていた。その中でカエデと言う少女と出会う。旅の話をした後に、カエデと別れたチョップは、ゲルとユンが吉報を持って走ってきたことに気付くのだった。
「見つかったんだ!ジンの手掛かりが!」
ゲルがそう言って走り込んできた。
それからチョップ、ゲル、ユンの3人は宿に戻り、仲間が帰ってくるのを待つのだった。
最初にアルエが帰ってきた。
「ハハ、この私が聞き込みをしているのに情報を得られないとはな。こんな事はイレラシャドラで…」
アルエは、帰ってきて直ぐに、いつものように誰も聞いていない独り言を話し始めた。
続けてギラバスが帰ってきた。
「悪ぃ、結構な人数に聞いたけど情報なしだ」
ギラバスの肩には雪が積もっていた。それほど集中して探していたのだろう。
それから少し経ってから白ゴリも帰ってきた。
「ウッホー…」
夜遅くまで、粘った白ゴリもお疲れ様だ。
チョップは白ゴリがどうやって話さずに調査をしているか気になったのだった。
「皆そろったね」
ユンが辺りを見回して立ち上がった。
「皆これまでありがとう!お陰でお父さんを見たって人に出会ったよ!」
「おぉ!ついに!」
「ハハ…!やったなユン!」
「ウッホー!!」
2人と1匹も、ジンの手掛かりが見つかった事を心の底から喜んだ。ユンは1つ頷き
「その人によると、私達がいるヤマブキから南西に進んだとこにあるガリオンって国でお父さんらしい人を見かけたらしいんだ!」
「ふむ、8神兵の国か。ハハ…」
アルエが語り始める前に、ゲルが言葉を発する。
「おう!と、言うわけで俺もユンと一緒にガリオンに向かおうと思ってる!」
「!?」
一同は驚きの表情でゲルを見つめた。
「なんだよ!俺だって考えあっての事なんだぜ?」
ゲルは一息置いて話し始めた。
「ユンの父親探し。最初は、正直めんどくさかったしなんで俺が?って気持ちもあったよ。だけど…」
ゲルはユンを見て
「ユンの必死な姿を見てるとよ、最後まで見届けたくなったんだ。この親子の物語をな!」
「そう、か…。寂しくなるな」
ギラバスが友の決断になんとも言えない表情でいると
「ハハ、ならば私も行こう」
アルエがそう言った。
「アルエさん!いいの?」
「あぁ、ガリオンには何度か行った事があるし。何よりゲルがユンに手を出さないようにするための見張り役が必要だろう?」
「そんなことしねーよ!!」
「フフ!そうでした!」
「オォイ!」
ゲルがユンにツッコミを入れて、一同は笑った。
その日の宿屋は一段と騒がしかったそうだ。
そして…次の日。
「もう行っちゃうんだな」
チョップがそう言った。チョップの前には期待に溢れたユン、いつも通り「ハハ…」と話すアルエ。そしてこちらを振り向かないゲルがいた。
「うん!行ってくるね!」
「ハハ。チョップの顔を見てやったらどうだゲル。その無様な顔を…ふふ」
「うるせぇ!!」
アルエに答えるゲルの声は震えていた。
「チョップ、お前には本当に世話になったな。俺が今話せるのも仲間と言える存在が出来たのもチョップ。お前がいたからだ」
ゲルの言葉にチョップは
「その通りだ!感謝しろよ!」
と言った。
「そこは謙遜すると…!」
ゲルがそう叫びながら振り返ると、ゲルと同じように顔をぐしゃぐしゃにしているチョップがいた。
「また、会おう。絶対…!」
「お、おぉ…おううう!!!」
1匹のこぶたと1匹のスライムは、泣きながら別れを惜しんだのだった。




