74話 野宿
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップはエゾンマ大森林で死にかけの女、アルエと出会う。アルエは、助けられたお礼に和国ヤマブキへと案内してくれるようで、チョップ達は和国ヤマブキに向かう事にしたのだった。
アルエに案内されてから、2日が経った。
「和国ヤマブキが近い、ハハ」byアルエ
チョップ達はこの言葉を疑い始めていた。しかしこのアルエという女は死ぬほど強かった。
2日間、何度もモンスターに襲われたがアルエが瞬殺していた。何体かのモンスターは、かなり強そうだったのだが、アルエは息をするようにモンスターを倒していく。
「ハハ、もうすぐ夜だ。今日も野宿するか!」
アルエの提案で、チョップ達は休む事にするのだった。
料理を作っているのはギラバスだ。
ゴンダス、ナマリン、チームと旅をしていた時にも料理を作っていたそうで、ギラバスの料理の腕は中々のものだった。
「今日は何を作ってくれるんだ?」
チョップが質問した。
「今日はさっきアルエさんが倒したホワイトベアをシチューにするんだ。今ゲルと白ゴリに近くに食べられる山菜が無いか見てもらってる」
「シチュー!楽しみだな〜」
「それにしてもアルエさん、あんた相当強いな」
ギラバスがアルエを見てそう言った。
「ハハ、呼び捨てでいいぞ。そんな事も無いさ」
アルエは圧倒的な力を持ちながら謙虚だった。残念な事に天然が入っているので締まらない。だが、そこが彼女の魅力とも言えた。
「ギラバスさんから見ても、アルエさんは強いんですか?」
「ん、あぁ。牛先生も強かったが、アルエ…の強さは異常だな」
「そうなんだ…!」
「ハハ、そんなに褒めるな。照れる」
「おぉーい!食えそうなもん手当たり次第取ってきたぜー!」「ウホー!」
ゲルと白ゴリが帰ってきたようだ。
「よし!シチューも仕上げに取り掛かるぞ!」
その日の夜。チョップ達は山菜たっぷりのシチューを満腹になるまで堪能したのだった。
その日の夜、チョップは夢を見た。
炎が燃え盛る森で、漆黒の雪が降り注ぎ、大事な灯りが一つずつ消えていく悪夢。その夢は、この前と同じ。真っ黒な髪の男が、真っ赤な髪の女を殺した所で終わった。
「眠れないのか」
「アルエ…」
「私で良かったら話を聞こうじゃないか、ハハ」
アルエはチョップの横に座った。
「悪夢を見るんだ。大切な何かを、次々に失っていく夢を」
「そうか」
アルエは少し考えてチョップに話しかけた。
「失うのは嫌か?」.
アルエの質問に何と答えるか考えるチョップ。
「もし…失うものが仲間だったり、大切な人だったら、嫌だな」
チョップはそう答えた。
「なるほど。ハハ、悪くない」
アルエはチョップの答えを聞いて立ち上がり
「なら守ればいい。お前が強くなって、大切な人の危機を必ず救えるように」
アルエの普段とはかけ離れた言葉に
「アルエに言われると、変な感じだな」
「ハハ、それはどういう意味だ?」
アルエは不満そうにそう言った。
「いや、なんでもない…」
チョップは慌てて今の言葉を訂正した。そして
「ありがとう、俺強くなるよ。大切な人を守れるくらいに」
と前を向いて言った。
「ハハ、その意気だ」
その日に見えた月は、雲から顔を出していて、清々しいほど綺麗に見えていた。




