66話 初めてのギルド
あらすじ
異世界から転生した元人間のこぶた、チョップは牛侍、ゲルと共に人の姿を手に入れた。チョップ達は、変人と龍人から遥か昔に姿を消した旅人を探してほしいと頼まれる。一行は変人によって貿易都市コーネルまで飛ばされたのだった。
貿易都市コーネル。
商人達の大声が鳴り止まないこの都市は、冒険者にとってはありがたい存在だろう。服から鎧、回復アイテムに食料品と、買いたい物があれば手に入らない事がないこの町。そしてこの都市が何故栄えたか、それはディラストル大陸へと渡る唯一の港がこの都市にあったからである。
チョップ達は今、コーネルの路地裏にいた。
「ここは…何処だろ〜」
「前に来た事がある、たしかコーネルって町だよ」
コウタの質問にチョップが答えた。
「お、ほんとだ!すげー」
ギラバスが何かに驚いていた。
「どうかしたか?」
牛侍が首を傾げた。
「久しぶりに自分のレベルを見たら、あまりにも高くてよ!」
「あぁ、ダンジョンに潜ったとはいえこんなにも上がるものなのか」
ギラバス、ゴンダスのレベルがかなり上がっているようでナマリン、チームも同様に上がっているらしい。
「俺達も確かめてみようか!」
一行は、チョップの提案でコーネルのギルドに向かうことになった。
チョップ、牛侍、ゲルは道を歩きながら感動していた。というのも、モンスターの姿では道を歩くのさえ危険と隣り合わせだったからだ。チョップと牛侍は道をズレた草むらを歩き、ゲルは人と交れずに洞窟で暮らしていたくらいなのだ。だからこそ、3人は当たり前に道を歩けることに感動していた。
「ここがギルドか…」
チョップは久しぶりにワクワクしていた。異世界に来る前に散々読み漁った転生小説。その中で幾度も登場したギルドという存在。巨大なギルドを見上げて、自分は異世界に来ているんだと実感した。
「入ろう!」
チョップ、牛侍、ゲルは案内役のギラバスと共にギルドに入った。
「いらっしゃいませ!ご用件は何ざんしょ!」
個性的なメガネをかけた女性に声をかけられた。
「俺たち最近冒険を始めたんだけど、レベルとか測ってもらえますか?」
「あぁ…また初心者さんですね、どうぞこちらへ」
女性のメガネが下にずれた。落ち込んでいるようだ。
「んんー、そうですわね。じゃあそこのイケメン!貴方から測りますわ!」
「お、俺からのようだぜ!イケメンだってよ!」
ゲルが笑いながらメガネの女性の前に立った。
「それでは測っていきますわね…」
そう言うと、女性は鑑定道具を取り出しゲルの体に当てた。
「ん…?んんん…!?」
女性は驚きの声をあげた。
「レベル20!?そんなに強くなさそうなのに!」
チョップは女性の鑑定道具をチラ見した。
ゲル・種族・スピンスライム Lv20
攻撃手段 体投げ 散毒液体 スペアボディ
「種族っ何なのかしら…まぁいいわ!次!そこのかわいこちゃん!」
「俺?」
チョップが自分を見るとメガネの女性はうんうんと頷き、ゲルは悔しそうに服を噛んでいた。
同じように鑑定道具を当てる女性
「んんんんん!?!?」
チョップはまたもチラ見した。
チョップ・種族・リバイブポーク Lv28
攻撃手段・噛みつき 体当たり 畳刃 アイスボール
「こんなに上がってたのか」
「貴方達イカれてるわね!最後よ!そこの美人!」
「私か」
牛侍は自身ある様子で女性の前に立った。
「オーラがありますわね…それではちょっと失礼」
女性は鑑定道具を牛侍に当てた。
「はあああああ!?!?」
チョップは驚きすぎて腰から崩れた女性の鑑定道具をチラ見した。
牛侍・種族・炎極王・Lv45
攻撃手段・突進 後ろ足蹴り 大対の構え 千燈泣顔 咆甲笑顔
さすが牛侍だ、とチョップは思った。3人ともLvが上がっているのは恐らく変人が何かしてくれたんだろう、牛侍が一番上がっているのはダンジョンで戦って得た経験値だろうな、とチョップは予想した。
「ありがとね」
牛侍がそう言ってギルドを出ようとすると、
「待ちなさい…貴方達…!」
こけていたメガネの女性がヨロヨロと立ち上がった。
「ギルドカードを作るまで返さないわよ!」
結局4人はメガネの女性に捕まり、身分を証明するためのギルドカードを作ることになったのだった。
ギルドを出る頃には大分時間が経ち、空は夕焼けに染まっていた。コウタや白ゴリ、ギラバスの仲間達と合流しなければと思っていた時、近くに黒い物が動いていた。チョップと牛侍は何者かに口を塞がれ、体を引き寄せられた。
「黒い鎧だ!」
口を塞いだのはゲルだった。黒い鎧が近くにいるといち早く気づき物陰にチョップと牛侍を引き込んだのだ。
「行ったようだな…」
ゲルが辺りを確認した。
「いきなり腕を掴むな、間違えて切ってしまったじゃないか」
牛侍がゲルの腕を持っていた。
「ぎゃああああ!!俺の腕があああ!!なんちゃって」
ゲルは牛侍の持っている手を自分の体にくっつけた。するとスライムの体は再生し、元の姿に戻った。
「バカやってないで…どうすんだよ!あいつらチョップが襲われたってやつだろ!」
「ふむ…なら私がどうにかしよう」
牛侍が立ち上がった。
「どうにかって…どうするんだよ!」
「私が黒い鎧達を引きつける。その間にチョップ、ゲル、ギラバス、それと白ゴリお前達は船に乗れ」
「ウホ?」
都市を歩き回っていた白ゴリに気づき牛侍はそう話した。
「あいつらは強いぞ」
チョップが警告をするが、
「あいつら程度に負ける気がしないわ。それにゴンダスやナマリン、チームを放ってはおけないだろう?」
「あいつらの事は私に任せて、あんた達はやるべきことをやりな。後から追いつくからさ」
「ウホォ…」
「ふふ、また会おう!」
牛侍はそう言うと、黒い鎧を追って走り出した。
チョップ達は港へと向かい船に乗った。
「牛侍って強いんだろ?なら大丈夫だぜ!」
「あぁ、牛先生は誰にも負けない。それと船のお金絶対返せよな!?」
「あぁ、必ず返すよ」
「ウホホ!」
チョップだって牛侍は大丈夫だろうと思っていた。
しかし、傷つき眠っていた時に見た夢。戦場を走り、赤髪の女が倒れる夢が忘れられなかった。
何故ならば夢に出てきた女の美しい髪は、人の姿を手に入れた、牛侍の髪の色と同じだったから。




