6話 危機と邂逅
コーン牧場から逃げ出したこぶた。
チョップはうさ耳の少女エリアとすっかり仲良しになっていた。チョップの相棒、牛侍ものんびり座っている。
その姿、まさに侍。
この平和で幸せな時間がずっと続いたらいいとチョップは思った。しかし、そんなチョップの思いはすぐに打ち砕かれる事になる。
エリアの提案で、かくれんぼをする事になった。
「かくれんぼなんていつぶりだろう」そう思いながら草の茂みにチョップは隠れた。
牛侍もすぐ近くに隠れている。
しかし、体の大きい牛侍は、頭隠して尻隠さず状態になってしまっていた。
「もういいかーい」
チョップは小さな声で場所がバレないように「ブーヒブヒー」と鳴いた。
「行くよ〜」
エリアが探し始めたようだ。
チョップは見つからないように体を丸めたのだった。
行くよと言ってから10分ほど経った頃だろうか。
全然見つかる気配が無い。
牛侍と一緒に不思議に思っていると、グルルル…というチョップや牛侍とは違う鳴き声が聞こえてきた。
何か嫌な予感がする。
そう思った2匹は急いでエリアを探した。
チョップが感じた嫌な予感は、命中していた。
「グルルル…」
チョップは森を走り回り、やっとの思いでエリアを見つけた。エリアは倒れていた。
その側には角の生えた虎のような生き物が静かに佇んでいた。
「モォ〜!!」
牛侍が怒りながら角虎に突進していく。
しかし、突進はかわされて首元を噛まれてしまった。
大量の血が牛侍から溢れ出し、牛侍は動かなくなってしまう。
チョップの中に怒り、悲しみ、絶望の感情がドッと押し寄せた。しかし、こぶたにできる事などたかが知れている。
チョップは逃げたくなった。
…しかしチョップは逃げなかった。
逃げるどころか虎に対して立ちふさがる。
「よくも…」
チョップは虎に向かって歩いていく
「よくも!…よくも!俺の友達を…!」
こぶたは死ぬ覚悟で、虎に向かっていく。
しかし虎はなんのその、こぶたには興味が無いと言わんばかりだ。それを見てさらに怒りが湧いたチョップは走り出し
「うおぉぉぉ!!」
叫びながら前足を振り下ろした。
普通なら「こぶたvs虎」なんて、
どうみても虎がこぶたを噛んで終わりだと思うだろう。
しかし実際は違ったのだ。
突如として辺りは眩い光で満たされた。そして低い男の声が森に響き渡る。
「去れ、貴様の住処はそこではない」
その声が聞こえたやいなや、虎は尻尾を巻いて逃げ出してしまった。そして
「こぶたよ、時間を稼いでくれて感謝する。我は龍人、お前たちを助けに来た」
男の声は、たしかにそう言った。
それから龍人は牛侍のそばにより何か呪文のような言葉を唱えた。
「光よ、この者を救いたまえ」
そうすると牛侍の血が戻っていき、傷口も塞がってしまった。同じようにエリアのそばにいきエリアのことも治してみせた。
こぶたはあまりの出来事に唖然としていた。
それもそうだろう。
さっきまで瀕死だった2人が起き上がり、いつもの変わらぬ様子で動いていたからだ。
「久しいな、エリアよ。覚えているか?」
龍人が尋ねたが、エリアは今の状況が分かってないらしい。あたふたしていた。
「ふふ、まぁ良い。我はそろそろ戻るとしよう。あぁ、それから…」
帰ろうとしたかと思いきや。
何か言い忘れたように、龍人はこちらを振り返る。
「こぶた、名をチョップと言ったか。生きていく上で困ったことがその体では出てくるだろう。どうしようもなくなった時はこの森の最奥、我の住処を訪ねるが良い」
と言い龍人は光と共に消えてしまった。
「なんだったんだ今のは」とチョップは開いた口が塞がらなかった。放心状態から我に返ったチョップは、牛侍とエリアの元に向かった。
「ブヒブヒ!」
大丈夫かと聞いたら
「今のは…」
「モォ〜」
と返事が返ってきた。
2人とも生きていてよかった。
チョップは安心したのだった。
不思議な龍人に助けられたチョップ達。
その中でもチョップは自分の無力さを改めて知り、強くなりたいという感情が芽生えたのだった。




