58話 悪夢
あらすじ
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップは戦いの末に、謎の黒い鎧の襲撃に遭い、傷ついていた。チョップは意識を失っていたが、その時見たくも無い夢を見たそうだ。この話はチョップが見た夢の記憶だ。
いつから走っているんだ…。
………
みんなはどこだ…。
………
ここは何処なんだ…。
58話 悪夢
燃え盛る森林。立ち昇る黒煙。響き渡る絶叫。降り注ぐ黒の雪。
そんな景色に目を止めるわけでも無く、唯走っていた。おぼつかない2本の足で、大きく振る2本の腕で。失いたくない何かを、必死に守ろうとするように。
1つまた1つと灯りが消える様な気がした。その感覚が嫌で、堪らないほどに怖くて。
「!」
何かに気づいたのか声をあげた。
それを抱えあげ、もう一度地面に置いた。
「*」
何者かに声をかけられてまた走り出す。
すると、また立ち止まった。
「…か」「…」
何と言っているか分からないが、聞き取れる言葉もあった。しばらくしてまた走り出す。
少しずつ、視界がはっきりとしてきた。足元には弓や盾が無造作に置かれている。
先ほどより聞き取れる声が聞こえた。
「お…で…う…い」
その言葉に驚き、また走り出す。
走るにつれ、視界も完全に良くなってきた。
この夢もそろそろ終わりだろうか。
そう思っていると、目の前の丘に2つの人影が見えた。
1人は黒色の髪を束ねた男。
もう1人は紅い瞳が美しい女。
女はこちらに気づいてほんの少し、笑みを浮かべ、
「…遅いよ」
と言った。男が剣を振り下ろし、女の体から血が吹き出して、悪夢は終わった。




