5話 うさ耳の少女
「あれ…ここは…?」
こぶたは見知らぬ場所で目を覚ました。辺りを見渡してみると、とても大きな湖だった。
そして、こぶたはさっきまでカラカラだった喉が潤っていることに気づいた。
「気がついた?こぶたさん」
声が聞こえた。
こぶたはゆっくり声の主を見上げる。
声をかけてくれたのはうさ耳が生えた小さな少女だった。
瞳の色は赤色で、とても優しそうな顔をしていた。
「君は?」
こぶたは尋ねた。無論うさ耳の少女にはブヒブヒとしか聞こえないのだが…
「疲れてるでしょ?倒れているあなたを見つけて
ここまで運んできたの」
こぶたは納得した。
この少女が自分を助けてくれたのか。
少女が助けてくれなかったら倒れた場所でくたばっていただろう。そう思って
「助けてくれてありがとう」
そう言った。しかし残念ながら伝わらなかったようだ。
「お友達の牛さんならあそこよ」
そう言われ、少女が指差す方をみると、いつも穏やかな牛侍が、ガブガブ水を飲んでいた。牛侍が無事でよかった。
「それにしても不思議!なんでこぶたさんと牛さんが一緒にいるの?始めてよ、こんなこと!」
「ブヒブヒ」
「それに、2人はどこから来たの?ここら辺には牧場は無かったはずだけど…」
「ブヒブヒ…」
「なんだか大変だったみたいね…」
会話になっているかは分からないが、鳴き声の調子でなんとなく伝わった気がする。すると少女は突然照れてみせた。
「私ね、昔から話すのが苦手で、友達が出来なかったの。そんな時に心の支えになってくれたのが
あなたみたいな動物よ!」
少女は昔話をしてくれた。牛侍も話を聞こうと近くに来た。
どうやら、少女が今よりもさらに小さかった頃。
友達が一人も出来なかったらしい。
仕方なく一人で遊んでいる時に、感情があるかのような動物に出会ったというのだ。
「あなた達からは、あの時の動物と同じ雰囲気を感じるの!なんていうか…心が通じ合ってるみたいな!」
たとえ、言葉は話せなくとも心が通じ合っている。
そう言ってくれて、こぶたと牛侍はとても嬉しかった。
「私達、今日から友達ね!」
そう言った少女は「握手しよう!」と手を出した。
こぶたは照れながら、少女の手のひらに自分の前足を乗せたのだった。
ミニストーリー 「名前」
「ところでこぶたさんの名前はなんていうの?」
そう言えば、この世界にきて名前を考えたことが無かった。
うーんと、悩んでいると
「チョップ」
と少女が呟いた。
「どうかな?あなたの名前…」
こぶたは、少女の提案した名前を気に入ったので、片方の前足を軽く上にあげた。
「良かった!」
チョップの旅は、まだまだ始まったばかりだ。
ステータス
チョップ
攻撃手段
・体当たり
元人間で、車に跳ねられて死んでしまった主人公
こぶたとして異世界に転生した。出荷されたくないと、コーン牧場から脱走をして旅をしている。
牛侍
攻撃手段
・突進
・後ろ足蹴り
コーン牧場で友達になった牛。名前はチョップがつけた。まだ何か秘密がありそう…?
うさ耳の少女
森の中でチョップと出会い、名前をくれたうさ耳の少女。
動物が好き。