46話 絶体絶命
あらすじ
Sランクモンスターを倒すためにアバラダ山に来たギラバス達。そこにいたのは巨大な白いゴリラ。
その強大な力を見たゴンダス、ナマリン、チームはギラバスを逃がすために囮になる決心をしたのだった。
怒り狂う白いゴリラは、腕と足に出血をしていた。その他にも小さな傷がいたる所に出来ていた。ナマリン、チームの攻撃によるものだ。
「ギラバス君は逃げきれたかなん?」
ナマリンがチームに話す。
「まだ安心は出来ない。ここで1秒でも時間を稼ぐ…!」
チームは思う。せめてギラバスだけでも生きてほしいと。それだけで自分達の命にも意味があると。
チームは幼い頃から自由が無かった。
手足は鎖で繋がれ満足な食事も貰えず、檻に入れられて生活していた。チームは奴隷だったのだ。
だが不幸中の幸いもあった。
いつもの様に檻から見える月を眺めていたチームは、ある家族の元へと売られる事となる。
その家族がとても優しかったのだ。
鎖を壊してくれ、美味しい食事も貰った。
そして何より嬉しかったのが初めての友達、ギラバスと会えた事だった。
彼は今でこそ捻くれた性格だが、本当は優しいことをチームは知っている。
「庭でかけっこをして、幼い時に約束もしたっけな…。覚えてるか知らないけど」
だがこの約束も死にゆく私には関係の無いことだろう。だが寂しくは無い。
「チーム君独り言かなん?僕にも話してほしいねん」
横には、こんな時でも明るいナマリン。
「悪ぃ、遅れた」
血だらけでも頼りになるゴンダスがいた。
「いや、なんでもない」
チームはギラバスを「生きさせる」という覚悟を決めた。
「ナマリン、ゴンダス」
チームは珍しくゲキを飛ばす。
「足掻くぞ!」
「おぉ!」
勝ち目のない戦いが、始まった。
ギラバスは逃げる。仲間を戦地に置いて。
仲間から遠ざかるたびに思い出されるのは、ナマリン、ゴンダス、チームとの思い出。
「今は逃げることに集中だ…」
自分に自己暗示をかけるように、そう言いながら山を下る。
「俺はクズだ…最低だ…」
仲間を置いて逃げることしか出来ない。
そんな自分に腹がたつ。
「生きなきゃ…生きないと…」
死ぬのは怖い。生きたい。だがここで疑問が生まれた。
「生きたところで…何になる…」
ギラバスはこれまでの旅を思い出した。
とても楽しい旅だった。いいことも悪いこともたくさんあった。だがその全てが楽しかった。
それは、紛れもなく仲間がいたからだ。
自然とギラバスの足は止まっていた。
「生きたところで…」
ギラバスは自分の本当の思いを口にする。
「生きたところで!あいつらがいなきゃ意味ねぇだろうが!!」
ギラバスは山を駆け上がり始めたのだった。
ドゴォ!
ゴリラの腕がナマリンを薙ぎ払う。
ナマリンは地面から空中に飛ばされ、落下した。
「ナマリン!!」
ナマリンはボロボロの体を起こそうとしていた。
しかしすぐに崩れてしまう。見るからに戦闘不能だった。
駆け寄ろうとするゴンダス。そこへ
「ぐふぅ!?」
ゴリラの大台牛波が飛んできた。
巨大な地面の塊に、ゴンダスとチームはなす術なく潰された。時間が経つにつれ、地面は砂へと変わった。ゴンダスが衝撃の大部分を受けていたため、チームはかろうじて意識があった。そして直感する。
「あぁ、ここまでね」
チームは、ギラバスが走り去った方へ、思うように動かない体を傾ける。
「あなたに会えてよかった、さようなら」
チームは目を瞑り
「ギラバス」
と名前を呟いた。その言葉は届かずにゴリラがトドメを刺すと思われたその時。
小さな叫び声が聞こえた。その声はだんだんと大きくなる。まさか…チームが瞑った目を開けると、右手に馴染みのある剣を持った人影がこちらに向かい走っていた。
それを見て安心したのかチームの意識はそこで途切れたのだった。
ギラバスは叫ぶ。
「ナマリン!」
一人一人
「ゴンダス!」
大切な仲間の名を
「チーム!」
生きてほしいと祈るように。
そしてその大声は、これまで眠っていたもう1匹のモンスターの目を覚ます。
ギラバスが辿り着く前に、ゴリラの攻撃が3人にダメ押しの一撃を与えようとした時。
「落ち着きな、やりすぎだよ」
黒く燃えるような毛並みの牛がゴリラの腕を受け止めた。
「まったく、昼寝したのにあんな大声で叫ばれちゃあねぇ」
巨大な牛は鼻を鳴らす。
「久しぶりだね、金髪ルーキー」
獄炎牛王であると同時にチョップの相棒。その牛の名は牛侍。
ギラバスはそんな牛侍に、どこか懐かしさを感じていた。




