45話 Sランクモンスター
あらすじ
今回も前話と同じく、9話で登場した金髪ルーキーギラバスの物語。
Sランクモンスターを討伐する旅に出る前夜、ある街の宿屋には夜遅くにもかかわらず灯りがついていた。
「ギラバス!あの宣言には痺れたぜ!」
ゴンダスがギラバスを称賛する。
「おいら、ギラバスに付いてきてよかったのん!これからも付いていくよん!」
「かっこよかった…」
ナマリンとチームもギラバスを褒めていた。
そんな仲間達に気を良くしまくっているギラバス。
「ふっふっふ、まぁ俺にかかればSランクなどチョチョイのチョイさ…」
拍手する仲間達。ギラバスの鼻は伸び、完全に天狗になっていた。
「あ!そういえばおいら、気になる噂を聞いたよん!」
ナマリンが指を立ててそう言った。
「なんでも、Sランクモンスターは白い毛を纏うゴリラだっていうんだ!」
「ゴリラ型のモンスターなら、前にも倒したことがあるぜ!」
ゴンダスは昔を思い出し、そう話した。
「おぉ、さっすがゴンダスだぜ!」
「すごい…」
今度はゴンダスを褒めるギラバスとチーム。
それから深夜になるまで宿屋の灯りが消えることは無かった。
次の日
「よしお前ら!出発するぜ!」「おー!」
ギラバス一向は、Sランクモンスターが住んでいるとされるアバラダ山に向けて出発した。
旅は順調に進み、アバラダ山まであと少しという場所に到達。一向は明日を決戦日として、森の中で野宿をすることにした。
「なぁギラバス」
焚き火の前でぐーたらしていたギラバスにゴンダスが話しかけてきた。
「俺はあんたに感謝してる」
「ど、どうしたんだ?いきなり」
ゴンダスは急に改まりそう話した。
「お前が旅に誘ってくれなかったら、世界はこんなに広いんだと知ることが出来なかった」
ゴンダスは、ナマリンとチームを眺めて
「そして、こんなに大切な仲間って思える人にも
出会えなかっただろうからよ」
「そうだねん、ギラバスありがとん」
「感謝する…」
ギラバスは仲間達の普段絶対に言わない言葉に、驚きを隠せなかった。
「な、なんだよ!いきなり」
「さぁな。でも今言っとかねぇとって思ったんだ」
「なんだよそれ!」
ギラバスはゴンダスの背中を叩いた。
「俺達はこれからもずっと一緒だ!しんみりするような事言うんじゃないぜ?」
するとゴンダスは笑顔を見せて「そうだな」と微笑んだのだった。
次の日
ギラバス一向は旅を再開した。
モンスターに襲われることもなく、山をどんどんと登っていく。
「そろそろじゃないん?」
ナマリンがギルドで貰った地図を見ながらそう話す。
「おっと、お出ましのようだ!」
ギラバスが意気揚々と話した。
ギラバスの目の前には、高さ10メートルはあろうかという白いゴリラがこちらを観察していた。
「ウッホ?」
白いゴリラから戦意は感じられない。
ここぞとばかりに、ナマリン、ゴンダス、チームは呪文の詠唱を開始する。
「森盛!」「アースプロテクト!」「オフェンシブソード!」
詠唱が完了し、ギラバスのステータスupの呪文がかけられた。
「よっしゃあ!行くぜおらぁ!」
ギラバスはゴリラに飛びかかった。
ギラバスの剣は、ステータスupの効果も乗せて白いゴリラの腕を傷つけた。
「ウホォ!」
痛そうに腕を振り回すゴリラ。
その隙を逃さないギラバスは、足に目掛けて剣を突き刺した。
ゴリラは呻き声をあげて転がった。
「どうよ!」
ギラバスは誇らしげにゴリラを見下ろした。
「ウホ…」
ギラバスがゴリラを見ると、手を震わせていた。
それは恐れての震えでは無い。怒りから発せられる震え。よってゴリラは本来であれば出す事のない技を使う。
ゴリラは大地に手を突き刺した。
「何やってんだ?」
ギラバスは何をしているか分からなかった。
しかし、ゴンダスは違った。
「ギラバス!逃げろお!」
ゴンダスはゴリラのしようとしている事を理解した。だが時すでに遅し。
ゴリラは大地をめくりあげ、大地そのものを投げてきたのだ。
その技の名。大台牛波
ギラバスは巨大な地面に押し潰されると思われた。
「うわああああ!!」
ギラバスは目を瞑り屈み込んだ。そんな事で防げるはずが無い。ギラバスは自分でもそう分かっていた。しかしいくら待っても衝撃が来ない。ギラバスが、恐る恐る目を開けてみると
ゴンダスがギラバスを守るように覆いかぶさっていた。
蒼白な顔をして、血を吐きながら。
大地は砂や石に変わり、サラサラと落ちていく。
大地が無くなるとゴンダスは役目を終えたかのように倒れてしまった。
「ゴンダス!!」
ギラバスはゴンダスに叫んだ。
しかし、ゴンダスはギラバスに見向きもしない。
その代わりに大声でもう2人の名前を叫ぶ。
「…ナマリン!」
「…チーム!」
その声に、2人が反応する。
「このゴリラには敵わねぇ!誰か囮が必要だ!ここで恩を返すぞ!俺の言いたいことが分かるか!!」
と訳の分からないことを言い出した。しかしナマリン、チームには伝わったようで
「そういうことねん。バッチリ伝わったよん」
「お前に言われずとも…!」
「おいらが囮になる!ギラバスは生きろ!」
「僕が囮になる!ギラバスは生きろ!」
そう言ってナマリン、チームは走り出した。
「何やってんだ…何やってんだお前らぁ!」
「お前を守ってんだよ!!」
ゴンダスが叫んだ。
「いいか、ギラバス。お前がいなかったら俺達は死んでも同然だった!だからさ…」
ゴンダスは無理やりに笑顔を作り
「これまでありがとう!」
そう言った。すぐさま血だらけの体を起こし、ゴリラに向かって走り出した。
「…………」
ギラバスは無言で立ち上がった。そして
「ちくしょおおお!!!!」
叫びながら。
泣きながら。
生きるために逃げた。




