31話 背の高いご老人
あらすじ
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップは売れないミュージシャンのファイアと共に旅を続けていた。2人はギルドでの初演奏を行ったが、
結果は大失敗。落ち込んでいると1人のご老人に話しかけられたのだった。
背の高いご老人
「しょぼくれる必要なんて無いですよ?」
突然現れたのは、背がスラッと高く細身なご老人で、黒のスーツにシルクハット、オシャレな杖を持っていた。とても怪しい…。チョップはそう思った。
チョップ
「あなたは?」
「ほっほ、これは失礼。まだ名乗ってませんでしたな」
ボス・シャート
「私はボス・シャート。音楽好きの老いぼれです」
ほっほっほと笑いながらボスは話し、語り続ける
ボス・シャート
「貴方の歌…、テンポはバラバラ、声の出し方もダメでお世辞にもうまいとは言えません…」
首を横に振ってため息を吐いたボス。
ファイア
「そんなこと…!私が一番分かってるよ!」
ファイアが怒った。
ボス・シャート
「そうですか。ですが貴方には、まだ分かっていないことがある」
ファイア
「な、何よ…」
ボスは杖をくるくると回した。
ボス・シャート
「貴方の歌は素晴らしい。もっと自信を持ってもいいんですよ」
ボスは優しくそう言った。
「そんなこと…!無い!」
ファイアは否定したが、ボスもまた首を横に振り
ボス・シャート
「いいえ。私は、貴方の歌が心に響き、揺さぶられました。それに…」
ボスはチョップを見て
ボス・シャート
「あのこぶたも、貴方の歌が気に入っているようでしたよ」
そう言った。ファイアはチョップを見つめた。
チョップ
「ファイアの歌で、サラダ3杯は余裕!!」
「なに…それ…。ふふ」
ファイアは、久しぶりに笑った。
ファイア
「そうだね!自信持たなくっちゃ!ありがとう2人共!」
ボス・シャート
「は、はい…」
チョップ
「うんうん!」
ファイアは自信を取り戻したようだ。
ボス・シャート
「ところで…今こぶたが話しませんでしたか?」
チョップ
「・・・しまった!」
チョップは口を押さえたが
ボス・シャート
「豚が喋ったぁ…」
と、ボスは泡を吹いて倒れてしまった。
倒れたボスを宿屋まで運んだチョップとファイアは、3人部屋が無いので、4人部屋をとり、部屋までボスを運んだのだった。
しばらくすると、ボスが目を覚ました。
ボス・シャート
「なんだ…夢か…」
チョップ
「残念!夢じゃないよ!」
ボス・シャート
「豚が喋ったぁ!?」
ボスはまた倒れかけたが、なんとか堪えたようだ。
「落ち着こう。俺は・・・とても落ち着いているよ」
「そ、そうですな…」
それからチョップはボスに、自分が元人間であること、逸れた仲間を探してファイアと旅を続けていることを話した。ボスは「そんなことが…」と驚いていたが、状況を理解したようだ。
チョップ
「ボスさんは、どうしてこの町に来たんですか?」
ボス・シャート
「呼び捨てで結構じゃよ。わしはな…」
ボスは語り始めた。
ボスは元々、弦楽器を引くミュージシャンで仲間と共に演奏をしていたらしい。
しかし、歳を重ねるごとに仲間は先に逝ってしまい、ついには一人になってしまったという。
仲間を失い、生きがいも失ってゾミエスで何をするわけでも無く、ダラダラと暮らしていたらしい。
そして、なんとなく入ったギルドの演奏会でファイアとチョップを見つけた。
ボスはそう言って話を締めくくった。
「そうだったんだ…」
ファイアが、ボスの話を聞いて暗い顔になった。
「ありがとう…でもいいんだよ。もう落ち込むのはやめたからの」
そう言って、ボスは立ち上がった。
ボス・シャート
「ファイア、チョップ。さっき会ったばかりだが、わしはこの熱い心を抑えきれない!」
ボスは頭を下げて
ボス・シャート
「わしも、2人の旅に連れて行ってくれ…!」
と言った。
チョップとファイアは顔を見合わせて、
「よろしく!ボス!!」
声を揃えて、ボスを歓迎したのだ。




