28話 ミュージシャン・チョップ誕生
あらすじ
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップはこれまで共に旅を続けていた仲間とはぐれてしまった。チョップは何も食べずに7日間仲間を探し続けたが、残念ながら見つけられなかった。体力も空腹も限界に来ていたチョップは、古い公園で歌っている一人のミュージシャンと出会う。
チョップは夢を見ていた。ふわふわのベッドの上で、沢山の料理を食べながら、幸せに暮らす夢を。この夢がいつまでも続けばいいのに…。余りにも辛すぎる現実にチョップはそう思った。すやすやと眠るチョップはトントンと肩を叩かれる。今いい夢見てるから起こさないでくれ…。チョップはそう思ったが、体を揺らされて目が覚めてしまった。
チョップ
「せっかくいい夢見てたのに!」
チョップが不機嫌そうにそう話すと、
「嘘!?喋った!」
と青髪の女性が隣で驚いていた。
チョップ
「えっと…あなたは?」
ファイア
「私の名前はファイア!貴方が私にチップをくれて倒れちゃったから、ここまで運んできたの!」
ファイアと名乗った女性はそういった。眠気が覚めてきて、自分の状況を確認してみる。足に包帯が巻かれていて、痛みが和らいでいた。
「ありがとう、ファイア」
チョップが感謝すると、
「これで貸し借りは無しだからね!」
輝く銀貨1枚と銅貨3枚をチラつかせてファイアは笑った。
「ところで貴方、名前はあるの?」
「あぁ、チョップだよ」
そう言うと、ファイアは笑いだし
「チョップに…チップを貰ったのか!私は!」
と吹き出していた。「元気だな〜」チョップは天真爛漫なファイアの姿を見て、心が和んだのだった。
ここはファイアの住んでいる家だそうで、ファイアのお父さん、お母さんもチョップを歓迎してくれた。
ファイアの両親は言葉を話すチョップに驚いた。しかし、すぐに慣れて暖かいスープや、新鮮な野菜をチョップに食べさせてくれた。
チョップは1週間振りの食事を「ガツガツ」と食べた。空きっ腹に暖かいスープが染み渡り、新鮮な野菜がこれほどまでに美味しいと思えたのは、こぶたに転生して初めての事だった。
チョップ
「こんなに美味しい食事を、ありがとうございます」
チョップはファイアの両親に感謝した。
「いえいえ、こちらの方こそありがとう」
チョップは両親から感謝された。
「なんの事ですか?」
「ファイアが「初めてチップを貰った」と大はしゃぎでしたよ」
ファイアのお父さんは、嬉しそうに笑った。
「でも、うちの娘…オンチでしょう?どうしてチップを?」
お母さんが小声で聞いてきた。
「それは多分、ファイアさんの歌に乗せた気持ちが、俺に響いたんだと思いますよ」
チョップは照れながらそう話すと、両親は
「そうなんです!ファイアの歌には気持ちがこもってるんです!」
と泣いて喜んだのだった。
それからチョップはファイアの部屋に戻った。
ファイアは
「まぁ座りなさいよ」
と、笑顔で手招きしていた。ファイアの横に座ると
「どうやってここまで来たの?」
と質問をしてきた。チョップはこれまでにあった出来事をファイアに聞かせてあげた。
「そっか…仲間と離れ離れになったんだね」
ファイアは俯いてそう言った。そしてもじもじと手を合わせ始めた。
「行くあて、とかあるの」
「いや、ここが何処かも分からないし、今は…」
「じゃあさ!」
ファイアが勢いよく、立ち上がった。
「私と…私と!」
ファイアは、勇気を振り絞って
「ミュージシャンになってよ!」
チョップに思い切って提案をしたのだった。
「ミュージシャン??」
チョップは戸惑った。まさかいきなりミュージシャンに誘われるとは思っていなかった。ファイアは、ミュージシャンになるメリットを説明した。
「私は、今のままじゃ一流のミュージシャンになれない!だから旅をするの!」
「チョップは、旅をしながら仲間を探す!」
ファイアの話はヒートアップしていく。
「チョップは人じゃないから、人の私がいると何かと都合がいいでしょ?私は一人旅なんて絶対いや!」
「お互いが、お互いを支え合うの!ねぇ、お願い!」
手を合わせて、頼みますと頭を下げたファイア。
チョップは自分を助けくれたファイアに、何か恩返しがしたいと思っていたので
「とってもいいね!」
と了承して、ファイアの熱い思いを受け止めた。
チョップ達は両親に二人で旅をする事を話した。
前々から旅をしていたいと言っていた一人娘に、念願の友達ができた。両親は
「チョップならば安心してファイアを任せられる」
と、二人旅を許可してくれた。
その日の夜。部屋で眠るチョップをファイアが起こした。ファイアは不安そうな顔で尋ねてきた。
「ねぇ…私達って、もう友達?」
「なんだ、そんなことでしたか」とチョップは自らの胸を軽く叩き
「友達で、仲間だ!」
と言った。ファイアは嬉しそうに
「うん!!」
と、ありったけの笑顔を見せた。




