26話 オークションで転移
あらすじ
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップは相棒の牛侍、ダンジョンで出会った新しい仲間、白ゴリと共に旅を続けていた。
モスイ村を出発して、旅を続けるチョップ達は、低い草花が広がる自然豊かな大地をゆっくり歩いていた。
チョップ
「ところで、牛侍は急に大きくなったよね」
チョップは確実に巨大化していた牛侍を見上げてそう言った。
牛侍
「えぇ?あぁ~気付いたらこうなってたのよー」
牛侍はおひさまの光を浴び眠たいのか、あくびをしながらそう答えた。
「ウホッ!」
と白ゴリはチョップがダンジョンで見つけた泥団子を、お手玉のように回しながら頷いた。
「いやいや、君の方がでかいじゃん」
チョップはツッコミをすれば
「ウッホー」
と、頭に手を当てて、「そうだった」と表現する白ゴリ。
チョップと牛侍はその姿がおかしくて笑ってしまった。白ゴリも楽しそうに笑った。
「白ゴリ…可愛いな」チョップは心の中でそう思ったのだった。
そんなこんなで道を歩いていると、一人の優しそうな冒険者と出会った。冒険者の名はメーチスと言うらしい。メーチスは
「近くに僕の住んでいる場所があります。よければお越しください」
と誘ってくれた。
行くあてが無いチョップ達は、ご好意に甘えることにしたのだった。
チョップ達が訪れたのは華麗なる貿易都市「コーネル」
様々な屋台や店が立ち並び、サーカス用のテントなどもあった。
初めて訪れる都市にチョップ達は目を輝かせて見学したのだった。
そしてメーチス行きつけの酒場でチョップ達は食事を楽しんだ。
食事を食べ終えたチョップは、旅の疲れが出たのか、睡魔に襲われてぐっすり眠ってしまったのだった。
数時間後にチョップは目を覚ました。
チョップのそばには牛侍と白ゴリが座っていて、鉄の柵のような物が辺りを囲ってる。
柵の上からは布が被せられていた。牛侍と白ゴリは足を金具で拘束されていた。
自分の足も金具で固定されている。チョップ達は柵に閉じ込められたのだ。
しばらくすると、布の外側からメーチスの声が聞こえてきた。
「さぁ!よってらっしゃい!見てらっしゃい!今日はとんでもない珍獣が入りましたよ!私共が手に入れたのは…なんと!人の言葉を使う動物!いやぁ、奇妙ですねぇ…珍しいですねぇ…」
口上手なメーチスの言葉を聞いて「欲しい!」「早く見たいですわ!」と叫ぶ人達がいた。チョップは悟る。
チョップ
「あぁ~~~これオークションだ」
牛侍
「オークション?」
牛侍が首を傾ける。
チョップ
「今から俺たちは・・・多分、見せ物として売られる」
牛侍
「それは困るわね!」
「ウホ!?」
牛侍と白ゴリは、必死に暴れるが柵は音を立てるだけでビクともしなかった。
そのかわり、布で覆われた柵から聞こえた大きな音にオークションを見る観客は、更に盛り上がっていた。
チョップ
「はめられた・・・たぶんメーチスが睡眠薬を盛ったんだ」
チョップが頭を抱える。
牛侍
「策が壊れないんじゃ・・・、どうしようかしら・・・」
牛侍もお手上げ状態だ。
悩んでいる2人を見て白ゴリが手を挙げた。
何やら白ゴリのお腹にあるポケットが光っている。
白ゴリのポケットに入れたのは確か、チョップの短刀、闇曇と泥団子くらいだったはず…。
白ゴリはポケットから光り輝く泥団子を取り出した。
チョップ
「光ってるね…」
牛侍
「この泥団子、どこで見つけたの?」
チョップと牛侍は泥団子を眺めながら、
チョップ
「ダンジョンの最下層…」
牛侍
「これってただの泥団子なのかしら…」
そう話していた。
しばらくすると、急激に泥団子の光が強くなり、白ゴリはびっくりして牛侍にしがみついた。
光がチョップ達を包み込む。
布を被った柵が光輝き、観客は大興奮だ。
光を演出だと勘違いしているのだろう。
メーチスは自慢のマイクで会場を更に盛り上げる。
「さぁ皆様!心の準備はよろしいか!?これを買った貴方は、貴族の中の貴族!自らの財力を存分に奮ってぇ!この珍獣を買いやがれぇ!」
会場は割れんばかりの歓声、怒号が飛び交っていた。メーチスは柵に手をかけ
「さぁ!ついにお披露目だぁ!こいつらが世にも珍しい!」
バサッと布を取り外し
「人の言葉を使うモンスターだぁ!」
声を高らかにそう叫んだ。
しかし聞こえてくるはずの歓声が聞こえない。それどころか辺りは静まり返っていた。
メーチスが柵を覗き込むと、そこにチョップ、牛侍、白ゴリの姿は無く、崩れた泥団子が1つあるだけだった。
ミニストーリー
ジン・ユン親子の休息
ユンは古い宿屋の一室で、森で出会った不思議な動物達の事を思い出していた。
「フフ、元気にしてるかなぁ?」
ジンはクスクスと笑うユンの姿を見て
「チョップ達のことかい?」
優しくユンに聞いてみた。
「うん!また会いたいなぁ」
ユンは楽しそうだった。久しぶりに見た娘の幸せそうな顔を見て、ジンは心が温かくなるのを感じた。
「レガさんは、強かったな」
ジンは、レガと夜中に稽古をつけあった事を思い出していた。
「レガさんと戦ったの?」
ユンが興味ありげに聞いてきた。
「あぁ、とても強くて、お父さんも頑張ろうって思えたんだ」
「いつか見てみたいなぁ、2人の戦い!」
ユンが目をキラキラと輝かせた。
「ユンにカッコいいとこ見せたいから、もっと強くなってみせるよ」
ジンはそう言って笑ったのだった。




