19話 レガと隠しルート
あらすじ
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップは相棒の牛侍、ベテラン冒険者のレガと共に旅を続けていた。道中、言葉を手に入れたチョップと牛侍。一行はダンジョンに挑むが、離れ離れになってしまう。今回はレガの物語。
レガ
「だぁー!多すぎだろ!?」
30分ほど前の事だ。
チョップ、牛侍と離れてしまったレガはダンジョンの中で赤毛のイノシシのようなモンスターを見つけた。女店主に貰った剣の威力を試したくなり、イノシシに居合付きをお見舞いしたレガ。
剣は簡単にイノシシの肉を貫き、いとも簡単に倒れて消えてしまった。
レガ
「こいつはすげぇや…」
レガが剣の威力に感心していると、暗闇の奥から無数の目が自分を睨みつけている事に気づいた。
その数はおよそ暗くてすべてが見えなかったが、30を超える数に見えた。
レガ
「嘘でしょおおおおおおお!?」
仲間を倒されたイノシシは鼻息荒くレガに突進を開始した。
・・・それから気の遠くなるほどの長い時間、襲い掛かるイノシシから逃げ続けていた。
「もう足がやばい・・・歳かな・・・」
ゼェゼェと呼吸が荒くなったレガとイノシシの距離がみるみる縮んでいく。
「やばいな・・・」
体力が限界に近づいてきている。
このまま逃げるくらいなら戦って倒れようか。
そう思って振り返った時だった。
レガは、何者かに腕を強く引っ張られた。
腕をつかむ者の声
「早く、こっち!」
そう言われ、力を振り絞り岩の横穴に身を隠すレガ。
イノシシはまさに猪突猛進という感じで、レガを置いて、そのまま走り去っていった。
「良かった、行ったみたいだね」
透き通る女性の声が聞こえたが、暗くてよく見えない。
「おい、おっさん大丈夫か?」
若い男の声が聞こえたが、これもまた見えない。
「取り敢えず、ここから出ましょうよ、暑苦しいです…」
優しそうな少年の声も聞こえた。
そう言われて横穴から出るレガ。
続いてぞろぞろと3人の若者が出てきた。
1人は身長が高く整った顔立ちの青年、1人は性格が明るそうな若い女性。1人はメガネをかけた少年だ。
レガ
「助けてくれたんだよな、ありがとう」
レガは感謝の気持ちを伝えると、3人は「いいのいいの」と気にしていない様子だった。
イノシシがいなくなったことを確認したレガを含めた4人は、簡単な自己紹介をしながら歩き始めた。
レガはこの3人が1か月前に遭難した依頼の救出対象、その当人である事を知るのだった。
さらにはこの3人も、村長に「助けてほしい」と依頼されダンジョンに来たということが発覚する。
怒りに震えるレガは
レガ
「ここから出たら、あの村長ぶん殴ってやる・・・」
と闘志を燃やした。
「まぁまぁ」
と桃髪の女性、ルーに宥められた
「このダンジョンから出られないと殴ることも出来ませんけどね…」
メガネをかけた少年はハルという名前らしい。
リーダーのアバラキは
「諦めんな」
と落ち込んでいたハルを励ましてるようだった。
アバラキのたくましい姿を見たレガは、
(まだ若いのにこんな不気味なダンジョンに1か月も閉じ込められて、本当はお前だって辛いだろうに)
そう思った。そしてレガは、3人を勇気付けるようにこう言った。
レガ
「大丈夫だ!」
唐突言われた「大丈夫」というひどく抽象的な言葉に
ハル
「レガさん、なんで…そう言えるんですか?」
と、尋ねてきた。
レガ
「聞きたい?実はこのダンジョンには俺1人で来たんじゃ無いんだ。俺のちょー強い仲間、チョップと牛侍がいる」
ルー
「いったい誰ですか?その・・・変な名前の人たちは」
ルーも、レガが話す変な名前に興味があるようだ。
アバラキも静かに話を聞いている。
レガは「まぁ、人じゃないんだけどな」と嘘のような本当の話。
不思議な家畜と出会った物語を、3人に話し始めたのだ。
アバラキ
「牛と豚が話すのか、信じられんな…」
レガの話を聞き終えて、アバラキがそうこぼした。
ルー、ハル
「会ってみたいね!」「僕も!」
ルー、ハルも興味津々と言った様子で目が輝いている。
勇気づけるための強力な助っ人・・・って感じで紹介しようと思っていたのだが、話しているうちに段々と楽しくなってしまったレガが次の話を切り出そうとした。
レガ
「チョップは魔法が使えるし、牛侍も…」
その時だった。
ガラガラッ!と、レガの立っていた崖が崩れたのだ。
「どぉわぁー!?」
レガは真っ暗闇に落下していく。
咄嗟にアバラキがレガの手を掴み、レガは崖からぶら下がり宙づり状態になっていた。
アバラキ
「危ねぇ!大丈夫か!?」
レガ
「お、おう!」
アバラキ
「引っ張り上げるぞ!捕まれ!」
レガ
「いや・・・。ちょっとそのまま俺の手を持っててくれないか?」
アバラキ
「はぁ!?」
アバラキは意味が分からないとレガを引っ張りあげた。
「ハァ…ハァ…」と息を切らすアバラキの横でレガはさきほど見た、奇妙な光景を思い出していた。
ルー
「一体どうしちゃったんですか?」
放心状態のレガを見てルーが質問した。
レガ
「いや・・・落ちた先に道が見えたんだよ。あんなとこに道があるわけないのにさ」
レガが見たもの。それは
奈落の底へと繋がる壁にひっそりと開いている人がギリギリ通れるほどに、小さく見つかりずらい。
隠し部屋への道だった。




