16話 武器屋の娘
あらすじ
異世界にこぶたとして転生した元人間、チョップは相棒の牛侍、ベテラン冒険者のレガと供に旅を続けていた。旅の途中、言葉を話せるようになったチョップ達。一行はモスイ村の村長マイから「ダンジョンに行ったっきりで帰っていない若者の救出」を依頼され、それを了承するのだった。
レガが取ってくれた宿屋でぐっすり眠ったチョップ達は、ダンジョンに行くための準備をすることにした。レガには木刀が折れて剣が無かったので村に1つしかない武器屋へと向かうことにした。
若い女店主
「いらっしゃい、よく来たね!あんたたちの事は聞いてるよ!」
武器屋に入ると、活発な女性店主が話しかけてきた。
どうやら昨日の一件が、武器屋まで届いてしまったらしい。
本当に気を付けようと思う。
レガ
「やぁお姉さん。俺は剣士をやっているんだが、剣が折れてしまってさ・・・」
頭をかきながら、照れたように話すレガ。
牛侍は、その様子を冷たい目で見ていた。
若い女店主
「ほぉん、そうだったのか?うちには剣がたくさんあるが者によってピンからキリだ。予算はどのくらいい持ってきたんだ?」
レガ
「予算か・・・。今は大体大銀貨が3枚と、銀貨が6枚しか無くってさぁ」
レガが全財産を暴露して、値切り交渉を始めようとしたとその時には、店主の姿は無く
「ちょっと待ってな」と言って、店の奥へ入ってしまった後だった。
値切らせる気は一切ないようだ。中々やりおる。
そう思っていたレガの目の前にいくつか剣が広げられた。
若い女店主
「今出せるのは、これくらいだ!」
「右から、大銀貨3枚、大銀貨2枚と銀貨5枚、大銀貨2枚ってところだね」
レガはそれらの剣をじっくりと見てみる。
どれも素晴らしい剣だと思った。
どれも丁寧に打ち込まれていて、刀身輝きが美しい。
この1本を打つのには、研鑽を重ねる歳月と生まれ持ったセンスが必要だ。
借りにもベテランのレガには、剣を触り感触を知ることでそれが分かるくらいにはなっていた。
しかし、レガにはずっと気になっていた剣が1つある。
レガ
「壁に掛かってる剣はいくらなんです?」
そう言って壁に掛かっている剣を指差した。
遠目から見るだけでも、その刀身は吸い込まれるように美しく。
長年培った剣士の直感が「これはとんでもない剣」だと、レガに囁いているからだ。
店主は
「ごめんね…、それは売り物じゃないんだ」
と、悲しそうに断った。
どうやら、あの剣は亡くなった女店主の父、その形見だったらしい。
「私が生まれてすぐにダンジョンで死んじまってよ…。私は、親父の顔を1度だって見たことがねぇんだ。だから親父の使っていたあの剣をあそこに飾ってしまうんだよ」
「そうだったのか・・・。知らなかったとはいえ失礼なことを聞いちまった。・・・ごめんな」
レガは店主に頭を下げた。
店主は「いいよいいよ!」と笑って、他の剣を持ってこようとしていた。
チョップにはダンジョンという言葉が引っかかって、女店主にもう少し話を聞くことにした。
チョップ
「もしかしてそのダンジョンは最近、村人が帰らなくなったってところ?」
若い女店主
「あぁ、そうだよ」
牛侍
「奇遇ね、私たちはそのダンジョンの準備で、武器を探しにきたのよ」
若い女店主
「あんた達!あそこに行くのかい!?」
と店主は驚いた。
それから「ちょっと待って」と私たちを引き留めた後、カウンターで考え事をする店主。
「よし」と言った後、店主は驚きの提案をするのだった。
若い女店主
「それならさ、お金はいらないからこの剣を持って行ってくれないかい」
そう言って、壁に掛かっている剣を下ろしてレガの胸に押し付けた。
レガ
「親父の形見なんだろう。・・・もらっちゃっていいのか?」
戸惑うレガだったが、
「あぁ。だけどその代わり、親父みたいにおっ死ぬんじゃねぇぞ・・・!」
という強い言葉を受けて「おう!」と力強く答えたのだった。
チョップ達はマイ村長や村人に見送られた後、ダンジョンに向かって歩き始めた。
レガの腰には、店主に貰った形見の剣がかかっている。
案内してくれているのは最近遭難した若者の妹だそうだ。
歩いてる最中も、妹から
村の少女
「お兄ちゃんのためにごめんなさい!絶対に帰ってきてください!」
と言われ、気が引き締まったチョップ、牛侍、レガ。
そしてついに3人は…
村の少女
「ここが…アントライオンダンジョンです」
地下へと続く巨大な遺物。アリ地獄迷宮・アントライオンダンジョンに到着した。




