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異世界の豚〜異世界に家畜として生まれた男の成り上がり  作者: アフ 郎
アントライオンダンジョン編
11/79

11話 敵

あらすじ

異世界にこぶたとして転生してしまった元人間のチョップは相棒の牛侍と共に牧場を抜け出し、旅を続けていた。その最中ベテラン冒険者のレガと出会う2匹。引退し、パーティーを組めたくなったレガをチョップ達は誘い、レガを仲間に加え冒険を再開するのだった。







「それでよ!その時の俺の活躍は凄いのなんので…」


今、チョップと牛侍はレガの武勇伝を聞かされていた。

巨大なドラゴンを倒した〜だの猛毒を吐くモンスターを倒したなどと言っているが、本当の事か疑わしい。いつか話せるようになったら問い詰めてやろうかな、そんな事を思ったのだった。

てくてくと草原を歩いていると草むらから影が飛び出した。


「おっ、モンスターのお出ましだ!」


水色のプルプルとした物体、スライムだった。

俺に任せとけ!レガは弓を引きしぼり、スライムに向けて矢を放った。

弓を受けたスライムは倒れた。続けざまに2体のスライムが飛び出してきた。


「戦ってみろよ!」


「ブヒブヒ…」


レガにそう言われて「えぇ…」と思ったチョップ。

牛侍を見ると自慢の突進でスライムを遠くにぶっ飛ばしていた。

それを見たチョップは自分も負けてられないという気持ちになり、スライムに体当たりをした。

スライムは倒れず、今度は俺の番と言わんばかりに体当たりをしてきた。

それからチョップとスライムによる激しい攻防が10分ほど繰り広げられた。

そしてついに…


「ブヒブヒ!」


チョップはスライムとの戦いに勝利した。


「おめでとさん!」「モォ〜」


2人とも祝ってくれた。「・・・優しいな」仲間のやさしさに涙をこらえながら自分の攻撃力の低さをどうしようと考えるチョップだったが

草むらの茂みに小さな緑色のスライムが隠れているのを見つけた。

チョップはレガを呼んで、これは何かと聞いてみた。


「おっこいつは!グリムスライムじゃねぇか!かなりレアなスライムだぜ!」


そう驚いたのだった。レガの大声に驚いたグリムスライムは森の方へと逃げていく。


「追うぞ!レアなモンスターからはアイテムが取れることがあるんだ!」


レガはそう言って走っていく。

チョップと牛侍も、元気に走っていくベテラン冒険者の背中を嫌々追うのだった…。







グリムスライムはどんどん森の奥深くに入っていく。

必死の形相で追うレガと2匹の家畜たち。そして…


「とぉーりゃあ!!」


レガがスライディングをしてグリムスライムを掴もうとしている。

しかし、あと一歩のところで届かない。


「あー!逃げられたかぁ!」


レガが悔しそうに去っていくグリムスライムを眺めていると、グリムスライムが何かにぶつかって高級そうなポーションへと変わった。

何かはモゾモゾと動いている。モゾモゾと動く何かはこちらの気配に気づいたようで


「おや?こんな所で人に出会うとは珍しい…」


そう、話したのである。






モゾモゾ動いた正体は屈強な体で髭を蓄えいかにも「渋い」という言葉が似あう男だった。

渋男の後ろには年齢は17歳くらいだろうか。薄紫の髪を束ねる美しい女がひっついていた。


「はじめまして、私はジン。ここで放浪している冒険者です。そしてこっちにいるのは私の娘ユンです。」


ジンが自己紹介をしてくれた。ユンは怯えるようにこちらを警戒している。


「すいません…。ユンは人見知りなもので…」


「いや!気にすること無いですよ!」


レガがそう言って、「ブヒブヒ」「モォ〜」とチョップと牛侍もレガに続いて気にするなと鳴くのだった。

その様子を見て


「お優しいのですね、ありがとうございます」


とジンがにっこり笑った。


それから、レガとジンは倒れている木には座って話し始めた。

チョップと牛侍、それからユンも話を聞いている。

たわいもない話でひとしきり盛り上がったレガとジン。

ジンはレガの人間性を気に入ったのか「ところで…」とある話題を切り出したのだった。


「ある日突然大切な人を誰かに奪われた時、貴方ならどうしますか?」


さっきまでとは打って変わりとても重い話題だった。

レガは「突然どうしたんです?」と聞こうとしたが、さっきまでとは違うジンの真剣な表情を見て深く考えこみ、自分の見解を示すことにした。


「それは絶対に許せないですよ。俺だったら怒りで我を忘れそうになりますね」


と言った。レガの言葉を聞いたジンの目には炎がメラメラと燃え始めた。

チョップにはそんな風に見えた。

一瞬の沈黙があたり一帯を包み込んだ後、ジンは表情を崩した。


「突然すいません、こんな質問をしちゃって、実は…」


それからジンは自分の昔話をしてくれた。ジンは昔、4人家族だったらしい。

愛する妻と子供たちは決して裕福では無いが、のどかに幸せに暮らしていたという。

しかし、そんな幸せをある日「一瞬で奪われた」とジンは言った。

とある国の兵士たちが村を理由もなく燃やしたのだと言う。

そして妻、長男は炎に焼かれ死んでしまい、住む場所も失ったジンとユンは、冒険者として生計を立てながら放浪している。

実際に起こっている昔話は、そこで締めくくられた。


チョップは話を聞いて許せないと思った。

もし、自分の大切な人が理由も無く殺されたなら自分は怒りで狂ってしまいそうだ。そう考え


「ブヒブヒ…」


辛いですねと鳴いた。それを聞いたジンは少し驚いた表情をした。その後に


「このこぶたは?」


とレガに聞いた。


「こいつらは俺の仲間です!俺が今も冒険者を続けてられるのは、こいつらのおかげなんですよ!」


そう言われたチョップと牛侍は照れながら2匹で顔を見合わせ笑った。それを見ていたユンは


「いいね…」


と小さな声で呟いた。ユンはジンの耳元に近づいてこしょこしょと何かを囁いた。

するとジンは何かを思い出しようで、くたびれたリュックから一つの杖を取り出した。


「これは我々が住んでいた村に残っていたものなのですが、これを持った動物は言葉が話せるようになるのだとか…」


ジンはそう言った。


「しかし、特別な存在にしか効果がないとも言われてまして…、ただの動物に持たせても何も聞こえないのです」


そう言いながら、袋に入った龍の形をした杖のような物をかちゃちゃと手で遊ばせるジン。


「そこのこぶたさんたち、試してみませんか?」


ジンはそう言うと杖をチョップに差し出した。

チョップはそれを受け取って、一言話してみた。


「こ・ん・に・ち・は」


チョップの口から確かに言葉が発せられた。


レガ、ジン、ユンは驚きのあまり、開いた口が塞がらない。完全に顎が外れている。

その様子がおかしかったチョップがさらに言葉を話そうとすると、牛侍に杖を取られてしまった。

そして…


「やっと、話せるわ」


牛侍からも女性の声が聞こえたのである。

3人は、牛からも声が聞こえたことによって目んたまが飛び出るほどに驚いていた。

チョップは牛侍の杖に近づいて


「俺の名はチョップ!こっちは牛侍!初めまして!」


と話した。

チョップと牛侍は、言葉を話すことが出来るようになった。



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