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アドベンチャーノート  作者: ririy
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お泊り会

夏樹の部屋に入った俺達は小さなテーブルにお菓子とジュースを広げ、皆でトランプをしていた。時間も17時と中途半端な時間なので暇潰しに楽しもう。と言う話だったんだが、想像以上に盛り上がっていた。

「うぅ……碧先輩凄いポーカーフェスだ。目すら動かさないからどっちがババか全然わかんない」

結衣が碧相手に最後の二択で数分悩んでいる。ババ抜き開始から一度も碧は負けていなかった。カードを引く時も引かれる時も無表情のままやっていた。楽しく無いのかと思いきや、勝った時はちゃんと大喜びなので多分本気でやっているだけなんだろう。

「こっちだ!……ちょっと碧先輩、力を抜いて下さいって。ねぇちょっと!トランプ裂けちゃいますよ!碧先輩ぃ〜」

どうやら結衣がババを回避した様だが、どうしても負けたくない碧がトランプを離さないらしい。大人気無っ!後ろからこっそり近付いた夏樹が碧の脇腹をくすぐる。

「ひっ……ちょっと夏樹ちゃん、やめっ、あははははは!ちょっと!苦しいっ!ははははははっ!」

トランプを放り投げて笑い転げる。トランプを離ししているのに夏樹はくすぐるのを止めない。それを見た結衣も輪に加わって皆が皆をくすぐっていた。皆制服のままそんな事をするので時折、隙間からお腹やら下着やらが見えていたので俺も止めようとするのを辞めて凝視。そのうちテーブルの足に結衣が足を引っ掛けて、蓋をしていないジュースが倒れて三人ともジュースまみれに。

「やりすぎたなぁ」

「うう、冷たいしベタベタする……」

夏樹は楽しそうに笑っていて、碧は服をタオルで拭いている。

「服も汚しちゃったしみんなでお風呂入りましょーよ!………突然目に光を宿すの止めてください凜先輩。皆って勿論私達だけです」

「風呂か。時間的にもそろそろだし丁度いいか。皆付いてきてくれ寝巻きは私のを用意しておこう」

がっくりとうなだれる俺を無視して皆は部屋を出ていく。

「お風呂覗きになんて来ないでくださいよ……」

扉から顔だけ覗かせて結衣が言う。

「わかってるよ……楽しんで来てね」

皆の足音が遠ざかるのを確認してから、見失わないうちにこっそり後を付けていった。男ならここで覗かないでどうする!読者サービスという物もあってもいいじゃないか!海堂 凜(17)頑張ります!

「じゃあ脱いだ服とかはここに入れて、バスタオルは上にあるから好きに使ってくれ。私は先に入っているぞ」

「はーい」

脱衣場の扉が締められ浴室の扉が開く音がして湯船に浸かる音がする。脱衣場では碧達が服を脱いでる音がして、直ぐに浴場の扉が空いて水をかける音がする。脱衣場は静かになって人の気配はしない。どうやら皆浴室にいる様だ。俺はそそくさと脱衣場の前に行き、音がならないようにゆっくりと脱衣場の扉を開ける。浴室の扉は曇ガラスになっていて肌色の影が水を掛け合ったりしているのが見える。静かに脱衣場に入り高まる鼓動を必死に抑える。

「…………やっぱり覗きに来たんですか……」

唐突に碧の声が聞こえて思考が止まって汗が出る。どうやら析殺を使っていた様だ。流石にベタベタする制服は我慢出来ないらしくバスタオル姿の碧が隣に立ってた。手には整髪料の入ったスプレー缶を握っていた。ちなみに缶の素材はスチール製。

「いや、あの僕も男ですし……って言うか碧、結構スタイル良い……」

バスタオル姿の碧を眺めていたら目にヘアスプレーをかけられて声にならない悲鳴を上げて後ろのカゴに突っ込む。衝撃で上に重ねてあった着替えやタオルの入ったカゴが降ってきて頭に直撃する。ガタガタと大きな音がしたので結衣や夏樹も脱衣場の様子を見に浴室の扉を開ける。

「お前って奴は…………」

「やっぱり覗きに来たんですかぁ……ほらほら、私達を見た感想は??」

夏樹は呆れていて結衣は楽しそうだった。残念な事に二人ともご丁寧にバスタオルを巻いていた。この後、夏樹が出した紐で縛られてお風呂から上がった碧に拘束された状態で30分間お説教をされた。その後紐を解いてもらうと俺も風呂に入る。

浴室は広くてバスタブなんかは大人が4人程入れそうなくらい大きい。肩までゆっくり浸かって髪を洗ってシャワーで流した後、手早く身体を拭いてパジャマに着替える。部屋に戻ると皆は美肌パックをしていた。三人とも寝転がって土偶の様な顔をしているのはなかなかの迫力で、大笑いした。

「これはっ!夏樹ちゃんに勧められてやってただけで別に普段からこんな事しませんよっ?」

碧は何故か必死に言い訳する。

「ん?女子なんだしお風呂上りは化粧水やらで綺麗にするのは当たり前じゃ無いのか?」

「まぁ、その通りなんですけど……別にもういいです。って言うか凜さん髪の毛びしょびしょじゃないですか。風邪ひきますよ。待ってて下さい」

そう言ってさっきまで使っていたらしいドライヤーとタオルを片手に俺の後ろに回る。ドライヤーの温風と共に碧が頭を拭いてくれる。風で流れてくる碧のシャンプーの匂いと、優しい手つきがとても心地よくて、うとうとして後頭部を碧の胸にぶつけてしまう。

「うわわっ!ごめん!今のはわざとじゃなくて、眠くなってだな」

「べっ別に気にしてないですしいいですよ」

頭に当たった感覚的に碧は下着を着けていなかった。碧は顔を赤くして腕で胸を隠すようにする。まだ頭に感覚が残っていてついつい胸を見てしまう。

「いつまで見てるんですかっ!」

ドライヤーで頬を殴られる。口の中に鉄の味がする。絶対頬の内側切れただろ。まぁ悪いのは俺だからこれくらいで済んで良かったと思おう。

「あっ、ごめんなさいついうっかり……」

「関科さん凜は良いんだが、ドライヤーを壊されちゃうと少し困ります」

「俺は壊れても良いのかよ……ってか人が壊れるってどんなんだよ」

「まぁでも凜先輩の場合は既に頭と心が壊れてますもんね。全く少しでも見てないと二人ともすぐイチャイチャするんですから……」

夏樹と結衣もパックを外して混ざってくる。二人とも顔はツヤツヤしていた。碧は別にイチャイチャして無いです!と弁解していたが二人が余りにも話を聞かないんでベッドに潜ってふて寝してしまった。それを見て結衣も

「ふあぁ〜っ。私はそろそろ寝ますけど夏樹とか凜先輩はどうしますか?」

あくびと伸びを同時にしながら目を擦る。

「まだ眠くないしその辺を散歩でもしてくるよ」

「じゃあ私も退屈だし付き合おう」

「じゃあ二人とも遅くならないようにね〜」

布団に潜り込みながら結衣が言う。部屋を出てサンダルを借りて外に出る。夏希もサンダルで隣を歩く。

「夏樹の家がかなり大きくてびっくりしたよ。個人の部屋も広いし」

「そうか?私としては普通の3LDKくらいに住みたかったけどなぁ、移動とか楽だし」

「なんかその理由夏樹らしいよな」

無言と言うのも気まずいので他愛ない話をする。

「そう言えば生徒会室に行った時の、もう碧と仲良くなったのか?って聞いてきたけどあれってどう言う意味なんだ?人見知りする様なタイプじゃ無くないか?」

「………………」

夏樹は少し暗い顔をして一言

「彼女の能力は願いによって現れたんだ。…………関科さんは1年生の頃、クラスで人気のあった男子生徒に告白されてな、関科さんは断ったのだが、その日から今まで仲の良かった女子生徒達の態度が変わってイジメの標的にされたんだ」

「…………それで?」

内容を少し聞いただけでイラついてくる様な話だったが生徒会委員として仲間としてやって行くのだから、なんとなく聞いておきたくなった。

「イジメが2週間くらい続いてな、関科さんは『死んだりすると家族に迷惑がかかったりするし、自殺する勇気も無いからいっそこの世界から消えてしまいたい』って思ったんだってさ。でも、当然何も起きなくて、次の日の放課後にイジメのメンバー6人に教室から……3階の窓から飛び降りろって言われたんだって。無理矢理窓側まで引っ張ってこられて、飛べって催促されたんだ。心身共に弱ってたせいか、不思議な程落ち着いていて深呼吸を何回かしたんだって。そしたら析殺の発動さ」

「やり返したのか?」

首を振る。

「まぁ、続きを話す前に、だ。当然、凜は1年前に崩壊が起きた事は知らないよな?」

夏樹は突然話を変える。1年前の崩壊……?1年前と言えば特に変わらない普通の日々を送っていたが…………

「そう言えば、1年前くらいの二学期って結構な人数人が減ったよな。深夜に誰かが侵入したらしく教室やらが滅茶苦茶にされたとか。学校も校舎修理やらマスコミの対応やらで休校で連休が続いたから覚えてるな」

まぁ、その後の授業は遅れた分を取り戻そうと、詰め込み授業で大変だったけど。

「それだよ。何年かに一度、裏と表が1部一時的に繋がるんだ。それが崩壊。そして析殺が発動したタイミングで崩壊が突然起こった。運悪く転移した先には影がいて関科さんをいじめていたメンバーは影によって殺された。関科さんは析殺によって無傷だったが、その場から動けなかった。何時間か経った真夜中に崩壊が収まり元の世界に関科さんは戻された。影が暴れた学校は酷く損傷していて、校門には警察や野次馬が沢山いた。関科さんは警察や先生に事情を聞かれて正直にあった事を話すが、警察は真面目にしろと怒るし、先生は殺されたメンバーの名前を知らない。あまりの出来事に記憶が混乱していると思われたのか家に帰されたらしい。実際はそうじゃ無いんだけどな」

「影もそうゆう特殊な力を持っているのか?」

「違うんだ。裏で死ぬと、その人が死ぬ瞬間を見た者にしかその人の記憶が残らないんだ。だから関科さんのみにしかそのメンバーの記憶が残らなかった。実際、生徒会のメンバーも5人以上いたが、感覚がするだけで誰がいたのか思い出せない」

「裏で1人で死ぬと誰にも覚えていて貰えないのか。それに人が死ぬ瞬間に立ち会っていないとその人の事を覚えていられない」

変な世界だ。そんな理不尽に対する怒りが湧いてくる。拳を握り締め腕を震わせる。

「変な仕組みだよな。でも、そんな死に方をさせないために生徒会があるのさ。………………そろそろ時間も遅くて補導も始まる時間だ。帰ろう」

帰り道、会話をする雰囲気でも無くお互い無言だった。碧についても裏についても現実味が無さ過ぎて変な気分だ。

「なぁ、碧の力が願いによって現れたって言ったけど、どうゆう意味?」

「そう言えば言ってなかったな。通常、自然と素質と言うか、そうゆう物を持っている者にだけ稀に現れるんだ。でも、願いによって現れるのは違ってな。尋常じゃ無いほどの強い想いに反応する。それほどまでに碧は辛かったんだろうな」

また無言が続く。その後も一言も話さず夏樹の家に着く。部屋の扉を開けると出迎えてくれたのは部屋の明かりと激しい銃撃戦のけたたましい音だった。

「ちょっと結衣ちゃん!操作まだ慣れてないからボクばっかり狙わないでよ〜」

「さっきのトランプ大負けしたんで、せめて得意なゲームでお返しですっ!」

2人ともコントローラーを握り締めてFPSをやっていた。碧は初めてプレイするらしくボタンを押し間違えたりとわたわたしているが、対する結衣は相当やり込んでいるらしくコントローラーを操作する指の動きがキモイ。2人とも必死なので戻って来た俺達には気付かない。しばらくして結衣の圧勝で決着が着くと碧はぶつぶついいながらコントローラーを置く。結衣はドヤ顔で勝ち誇った顔をしていた。

「おい、2人とも寝たんじゃ無かったのか?」

突然聞こえた夏樹の声に2人とも小さく飛び上がる。

「全然寝れなくって部屋眺めてたらテレビゲーム発見してさぁ、だから遊んでたけど1人じゃつまらないから碧先輩起こして一緒に遊んでました」

碧は正座しながら寝ている。器用だな。夏樹はテレビの電源を落とす。結衣は何か言いたげだったが黙っていた。

「2人共早く寝るぞ。明日は少し出かけるんだからな」

部屋の明かりを暗くすると夏樹は布団に入る。結衣も大人しく布団に戻る。

「……おい、碧起きろ。それだと足が痺れるだろ。それに風邪もひくぞ」

「ん…………んん……」

碧は目を閉じながら立ち上がるとそのまま布団に潜って寝てしまった。部屋の明かりを消して布団に入って目を閉じる。全然眠くは無かったが案外あっさりと睡魔が襲ってくる。

「碧がいじめにあっていた……かぁ。正直、碧って話しやすいし結構意外だったな」

ぼそぼそ呟くとそのまま寝てしまった。

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