裏と表
小説1
どうしてこうなった。どうして守れなかった。様々な後悔が渦巻く中廃墟と化した街を学校から力なく眺めていた。すると後ろから女性の声がする。
「……どうだ? 今、お前は何を思う? 何を考える? 無駄な事だ。別に雪菜が死んだのはお前のせいでは無い。そう深く考えるな、今更何をしようともこうなってしまった物は変えられ用が無い。」
凛とした声。ゆっくりと振り返るとそこには夏樹の姿があった。制服はボロボロになり顔は煤で汚れている。手には拳銃を持って銃口を俺に向けている。俺は夏樹とは目を合わせられずすぐ下を向いた。
「悪かった」
俺は一言だけポツリとこぼす。謝ったって何にもならない。ただこうなった原因は間違いなく俺にある。
「もう疲れただろう。ゆっくり休むといい」
俺はゆっくり顔を上げ目を見る。その目は真っ直ぐに俺を見ている。怒りも悲しみもそういった感情は一切受け取れない。俺は目を瞑る。
「悪く思わないでくれ凜。お前を殺したところで何か変わる訳でも無いがこうしないと私の気が晴れない」
静かにカチリ、とトリガーを引く。直後、銃声が響く。俺はその場に倒れるが痛みは全く無い。ただ身体の力がゆっくりと無くなっていく。腹部からは血が流れ小さな水溜りのように。
「そう……か。死ぬのか…………最後に一つだけ頼みがある。この後のことは任せるぞ」
返事は無い。その代わりに夏樹の目からは涙が零れる。それと同時に俺の意識は無くなった。
「っはぁ! なんだ今の夢」
俺は飛び起きる。まるで大雨の中傘もささずに外にいたかのように全身汗で濡れている。長時間息を止めていたかのような激しい息苦しさ。時間は朝5時半。窓からは徐々に明るくなっていく街が見える。当然街はボロボロなんかではなく車も走り僅かだが人の往来もある。俺はベッドから出てとりあえず体を拭いて制服に着替え始める。学校へ行くにはまだまだ時間があるがすっかり目が冴えてしまったので特にやることも無いから、と言う事で。下の洗面所まで行って歯を磨いたりとひとしきり学校へ行く準備を済ませかなり早いが学校へ行く事にした。
自転車で最寄りの駅まで行く途中少し夢について思い出してみる。
「ボロボロになってた街は間違いなくこの街だよなぁ……一体何があったんだ? なんで俺が夏樹に殺されなきゃならないんだ?」
ぼんやり考えてる内に駅に着く。鞄から定期券を出し改札を通り電車に乗る。
あぁそうだ、俺の名前は海堂 凜だ。ごく普通の男子高校生。別に特に頭がいい訳でもなく、もてる訳でもない何処にでもいるようなやつだ。うん。なんか悲しくなってきた。唯一得意な事と言えば、今はもういないばあちゃんに半ば強制的に教えて貰った剣道くらいだ。だが部活は帰宅部。まぁこれくらいかな? そうこうしていると学校付近の駅に電車が着く。電車から降りて時間を見ると7時10分。通学路には朝練に向かううちの生徒達の姿が見える。
「あ、凜おっはよーー!」
唐突に声がして後ろから抱きつかれる。振り返ると女の子が背中に頭をグリグリしている。こいつは神城 雪菜小学校からの幼馴染みだ。
「おはよう、雪菜。朝からこうゆう事はやめてくれよ……他の人もいるんだし」
頭を掴んで剥がそうとするが凄まじい力で張り付いてくる。こいつなんて力してるんだ……。取り敢えず離れないので雪菜をくっつけたまま歩くことにした。周りの刺すような目線が痛い。やめろそんな目で見ないでくれ。
「そういや雪菜はいつもこの時間なのか?なんか部活入ってたっけ?」
「あぁ、その事なんだけどさひょっとして雪菜今朝変な夢見てないか?」
やっとくっつくのをやめて隣を歩く。でも雪菜は首を傾げる。
「夢?見てないかなぁ。ちなみにどんな夢なの?」
「あー、見てないのか。それならいいや」
話すと長くなるし面倒くさいし何より雪菜は何故か死んでいる様なわけのわからない夢だ。でも、夢にしてはかなりリアルだし鮮明に覚えてるんだよなぁ……。そんな俺の思考は激しい悪寒で絶たれた。周りを見てみるが楽しそうに歩いている学生の姿しか見られない。夜中にあれだけ汗かいたし風邪でもひいたか?するとぎょっとした顔で雪菜が話しかける。
「り、凜どうしたのその汗!?どこか具合でも悪いの??」
突然近づいて来て俺の周りをくるくる回りながら背中やらお腹やらをベタベタ触ってくる。何も無さそうなのを確認するとゴシゴシとハンカチで汗で濡れた顔を拭いてくる。
「大丈夫だよ。問題ないってば。それより俺の周りを回るのやめてくれ。周りの目が痛い。」
「あぁ、ごめんごめん。」
小さく舌を出してテへ。とするとまた俺の隣に来る。全くほんとに反省してるのかよ。そんなやり取りをしていたらいつの間にか学校の前までついていた。
「じゃあ私少し職員室に用事あるから先に教室行っててよ。じゃあね」
小さく手を振ると職員室の方へと行ってしまった。まだ1日は始まったばかりだがいろいろありすぎて疲れたな……。小さくため息をついて教室へ向かう。ふと、窓の外を見ると夢で見た街の景色。毎日見ている景色だがこの日は何故か違和感を覚えた。しばらくそれが何なのか街を見るけど特に何も気付けなかった。しばらく眺めていたら街の中心辺りに黄色い光が二つ現れた。
「なんだあれ?」
不思議に思って窓に手を触れるが突如窓が割れる。驚いてその場にしゃがみ込むがそれ以上は何も起きなかった。立ち上がって外を見て見るが光はもう無かった。光の事は気にもなったが今はそれよりも……
「この割れた窓どうするか?少し触っただけですぐに割るなんてどんだけ脆かったんだよ……」
破片を目の前にして立ち尽くしていた。幸い朝早かったおかげか、先生や生徒の姿はまだない。仕方ないのでロッカーから箒とちりとりを出して手早く片付ける。割れてしまったものは仕方ないので窓だけは放置する事にした。掃除したら手がホコリっぽくなったのでトイレへ手を洗いに行く。手を洗おうと蛇口を捻り何気なく鏡を見ると、鏡に写った自分の目は黄色く光を放っていた。見間違いや光の反射か何かだろうと思って頭を動かすが光はそれについて来る。動揺した俺はトイレを慌てて出て教室に行くと丁度雪菜が教科書を仕舞ったりと朝の準備をしていた。
「雪菜っ!」
突然の大声に少し肩をビクッとさせてこっちを向く。俺だと気付いたら少し安心したように見えた。
「突然どうしたの凜?」
「俺の目なんか変じゃ無いか?」
雪菜が目の前まで来て物凄く近い位置で目を見てくる。鼻と鼻が触れ合いそうなまで顔を近付けてくる。いや、そんなに近付いたらドキドキするというか、って言うか近くで見ると結構可愛いんだよなこいつ。
「とっ突然ななな何を言い出すの!?もう!特に何も無いじゃん。変なとこ無かったよ。」
顔を真っ赤にした雪菜に突き飛ばされて背中を強く打つ。声に出てたか。気を付けなければ。しかし、何も無い?やっぱり見間違いか?でもあれは間違いなく俺の目からだと思うんだけど。ほら、と雪菜が手鏡を貸してくれる。もう1度目を見てみるが黄色くもなんともない普通の黒目だった。
「やっぱり気のせいかな?」
きっと疲れてるのよ。見たいな可哀想な子を見る目で雪菜が見つめて来るのでこれ以上は何もしない事にした。お互い席に着いて読書をしたり、その日の課題をやったりとしていたが不意に雪菜が急にソワソワし始めた。
「なんだーー?トイレなら早く行っとけよ。我慢は体に悪いぞ?」
なんて話しかけるがいつもの軽い返事は返ってこない。不思議に思って振り向くと時計を見ながら困った顔をしていた。
「ねぇ。流石にこの時間になって誰も来ないって言うの変じゃ無い?先生とかは忙しくて来れないにしたってクラスに私達2人だけって言うのは流石にね」
そんなに気にもしなかったが時計は9時半を指していた。色々していて時計なんか見ていなかったがこの時間になって俺ら以外誰も来ないって言うのは確かに違和感あるよなぁ。それに……
「誰も来ないって言うより俺ら以外の人の気配しなく無いか?」
9時と言えばHRがあって授業中の筈なんだが先生の授業をする声所か生徒の声すらしない。とりあえず、校舎でも見て回ろうかな?朝は確かに生徒の姿は見たんだし
「あ!ねぇ、ちょっとどこいくのよ!1人にしないでってばぁ!」
教室を出ようとしたら泣きそうな声で呼び止められた。
「あーごめんごめん。ちょっと学校見てみようと思っただけだよ。ちなみに今日って何曜日だ?」
今日は月曜日だけど?と言う声を聞きながら教室を出る。まさかとは思ったけど休日に登校なんて事はしないよな。慌てて雪菜が後を追いかけてくる。校舎の中を歩いているが人の姿は見られず。
「あ。」
俺は足を止める。後ろをキョロキョロしながら歩いていた雪菜が顔を背中にぶつけて鼻を押さえながら何か文句を言うが耳に入らない。俺が朝割った筈の窓が何事も無かったかのように戻っている。破片を捨てたゴミ箱を確認するが破片など入っていなかった。恐る恐る窓を触ってみたけど当然割れない。まぁ、誰かが気付いて治したんだろう。そう思う事にする。
「ほんとに誰もいないね。みんなどうしちゃったんだろう?でも朝は部活に向かう子とかいたから校庭とか体育館になら誰かいるんじゃ…………」
雪菜が話すのを手を上げて止めさせる。向こうの角に誰かが、いや何かがいる。こう言う状況だから何となくだけど、人じゃない何かがいると思ってしまう。足音が聞こえて影が伸びてくる。影は次第に大きくなっていき、体が自然と身構える。影が伸びてきて姿を見せたそれは女の子だった。綺麗な水色の髪を靡かせてこちらを見るなり歩いてくる。やっと見れた俺ら以外の人の姿に心底安堵するがそれもつかの間。
「ねぇ君あのさ」
話し掛けようとした所を急に走り込んできて素早く俺の後ろに回り込み、首筋にどこから出したのかナイフが当てられていた。首を動かさないように目だけを動かしてみると同じ様に雪菜にももう片方の手でナイフを向けていた。何なんだよこの状況。
「あなた達は誰ですか?どうしてここに?」
恐ろしいほど冷たい声で聞かれる。
「俺は凜。そっちは友達の雪菜だよ。ここの学校に通う生徒だ。ちなみに2年生。気付いたらここにいた。これでいいか?」
聞かれたことに答え、震え出しそうな体を無理やり抑え必死に冷静を保つ。ふむ。と頷いて俺と雪菜の首からナイフを離すと袖の中にしまう。特に汚れてもいないスカートを軽く払うとぺこり、と頭を下げる。
「突然失礼しました。お怪我ありませんか?ボクもこの学校に通う2年の関科 碧です。約半年前くらいから表と裏の場所を移動してます。」
んん?ごめんちょっと理解が追い付かない。雪菜に至ってはまだ震えている。
「怪我なら心配しないでくれ。特に何も無いぞ。それよりなんで急にナイフを?半年前からって?」
「ごめんなさい。えっと、お二人は力か干渉能力があるからこちらの方に来たのでは?」
苦笑いで返してくる。
「もしかして、新人さんですか?じゃ、じゃあ軽く説明を……」
丁寧に説明してくれたが全然軽くなかったのでさっとまとめると。どうやらここは俺達が元いた場所を表とすると裏の様な世界で、裏の世界で起きた事は表の世界に影響するということらしい。碧が言う限りでは俺達には無自覚の他の人には無い力があるからここに来れたんだとか。裏の世界に人が全く居ないのは力が無いから。という事らしい。正直よくわからん。
「で、ここからが大事なのですけど。裏の世界にはどう言う訳かわからないのですが『影』が存在するんですよ」
「影?」
「えぇ、影です。影と言っても真っ黒じゃ無くてですね、表の世界と全く同じ人がこちらに存在するんです。更にその影はボク達以上の力を持っていておまけに干渉能力も持っているんです。そして、干渉能力を持っているので表と裏を行き来出来てしまいます。だけど裏に生まれたばかりの影は干渉能力は有りますが裏と表をまだ行き来ません。行き来出来る様になるまでの間、影はこちらで何故か暴れるんですよ」
話し疲れたのか一旦言葉を切る。良く分かった様な、分からない様な感じかなぁ?
「じゃあつまり、力を持つ俺達がその影が暴れるのを止めるって言うことか?裏で暴れると表にも影響が出るから」
「はい。まさにその通りです。裏の世界に異変が起きてもすぐにその元凶である影を倒せば表の世界には影響が出ません。言わばボク達は抑止力という事ですね」
指を立てて少し自慢げに抑止力を強調して話す。大体はわかったんだけどなぁ……
「それで俺達の力って言うのは?」
「さぁ?そればっかりはボクにもわからないですよ。ちなみに僕の力は『析殺』(せきさつ)ですよ。気配を完全に絶てるんです。あ、ちなみに名前は自分で付けたものでしてかっこいいでしょ」
胸を張りながら言う。いや正直そのネーミングセンスはどうなんだよ。析殺ってどうしてそうなった。俺の内心を察したのか、むっとした顔で碧が睨んでくる。
「今馬鹿にした顔してましたね。まぁ最初はみんなそうなんですよね。いいですよ。特別にみせてあげますよ!」
目を閉じて静かに2回深呼吸すると突然なんとも言えない違和感に襲われる。碧は実際にいるのだが存在が感じられないというか、目の前には居るのに触ろうと思ったら手が通り抜けそうな感じ?かな。
「なんとも表現しづらい感覚だな」
「そうでしょう。そうでしょう!何せこの力最強ですから!敵に気付かれなければ怪我も何も………………ちょ、ちょっと何してるんですか!」
自慢げに話しているが存在が感じられないのがあまりにも気持ち悪くて碧の頭を撫でていた。
「わっ、ごめんごめん。や、なんか違和感強くてな。当然だけどちゃんと触れるのな」
どさくさに紛れてまだ撫でているが頬を膨らませているだけで嫌がる様子も無いんでついつい調子に乗って撫で続けてしまう。
「うっ、痛っ!何すんだよ雪菜」
機嫌悪そうに背中を結構本気で殴ってくる。そう言えば雪菜のことすっかり忘れてたわ。碧の撫でる手を止めて雪菜も撫でてやるとそれだけで機嫌を戻してくれる。……こいつちょろいな。
「いちゃいちゃするのやめてよね。早く元の学校に戻りたいんだけど」
前言撤回。声は全然怒ってた。
「学校に戻りたいのは俺もだな。どうやれば戻れるんだ?」
はぁ。と碧がため息を吐くとあの違和感が無った。力を切ったみたいだ。だけど碧は申し訳無さそうにしている。
「影が近くにいると戻れないんですよ。戻ろうって意識するといつの間にか戻っているのですが戻れないと言う事は影が近くにいるようですね」
とすると、最悪俺達の誰かが影な訳か。そんな事は無いだろうけど。俺達は今いる廊下から近い教室を順番に調べるが特に何も変わった事は無く。しらみつぶしに校舎中を調べ回ったが、ただ無駄な時間が過ぎて行くだけだった。一回りして碧と会った廊下まで戻って来たが影は見つからなかった。
「なぁ、影は居なかったんだし戻れるんじゃ無いのかよ?」
碧が首を横に振る。って事は俺達の誰かが影って事になるのか?横目に碧を見るが深刻そうな顔をしている。突然、袖からナイフを出すと自分の人差し指を浅く切る。その傷口からは血が出てきている。俺は慌ててポケットからハンカチを出すと碧の傷口を優しく拭く。
「突然どうしたんだよ!いきなり指切って危ないだろ」
「大して痛くないのでそんなに心配しないでください。これが1番早い確認方法なんですよ。影からは血が出て来ないんです。と言う事ですので、痛くしないのでお二人も手を出してください」
ハンカチをポケットに入れて言われた通りに手を出すが、雪菜だけは違った。手を下げたまま冷たい瞳でどこかを見て小さく息をつく。
「あーあ。後もう少しで向こうの世界へ行けたのになぁ。そこのチビのせいで行けず終いかぁ」
碧を一瞬睨む。刹那、恐ろしい速さで碧を突き飛ばす。碧の小さな身体は吹き飛び、壁に鈍い音を立てて倒れる。強く身体を打ち付けたせいで声も出せず動けないでいる。あまりの出来事に呆然と立ち尽くしていると、雪菜が正面から俺の首を掴んで壁に叩きつけるとそのまま片手で宙へ持ち上げる。
「うぐっ……はな……離せ……」
必死にもがくが壁に背中を強く打ったせいで全身に力が入らない。やばい。視界が霞んで来た……死ぬかもしれない。頼みの綱の碧を見るが気を失ってしまっている。あれだけのダメージを受けたんだ。無理もない。すると突然首を締めていた手を離す。激しく咳込みながらその場に倒れ込むが雪菜は俺を見ていなかった。雪菜の視線を追うその先には誰も居なかったが雪菜が逃げようとしてその場に崩れる。直後、雪菜が舌打ちしたと思ったら消えた。壁に背中を擦りながら何とか立ち上がる。雪菜が消えた所には碧が立っていた。ただ、さっきの衝撃からかまだ少しふらふらしていた。
「っ……大丈夫ですか?凜さん」
「俺より碧の方が大丈夫なのかよ? あれじゃ骨折れたりしてるんだろ」
「これくらいなら全然平気です…………よっ!?」
話ながら歩いてくるが自分の足に引っかかって倒れそうになるのを慌てて受け止める。腕が胸に当たってしまい、どきりとした。
「あ、ありがとうございます。危うく転んじゃうところでした」
声こそは気丈にしているが身体は震えていた。そのまま抱き締めると
「無理しなくていいんだぞ?」
小さく呟く。碧はしばらく固まっていた。
「別にこんな事良くありますよ。 いつもは析殺使って倒しているけど今回は油断しただけです」
俺を押しのける。ただ、もうその身体は震えていなくて安心した。恥ずかしそうに後ろを向いて小さく伸びをすると
「さぁ、元の場所に戻りましょう!」
振り返って右手を出してくる。一段落終わった握手かと思って手を握り返した瞬間、人の声がする騒がしいいつもの学校の廊下に立っていた。窓の外から反対側の校舎が見える。どうやら今は授業中の様だ。ちゃんと先生が黒板前に立っていてノートを取っている生徒も居れば、居眠りしている生徒も見える。正真正銘いつもの学校だった。
「やったぜ! ちゃんと戻ってきた!!」
たまらず碧の手を握ったまま左手を上へ伸ばして叫ぶ。
「ちょ、ちょっと! 嬉しいのは分かりますがここ職員室前廊下ですよっ!それにだいたい今何時だと思って…………あ」
碧が怒る前に俺の声を聞いた先生が職員室から出てきた。
「二人とも学校に連絡無しで授業サボって仲良く遊んでたのかぁ?そうかそうか青春だなぁ。うんうん。」
ニコニコしているがその額には青筋が浮いていた。碧はちっちゃくなって震えていた。
「まぁ、海堂はともかく関科が無断サボりとは珍しいな。言い訳くらい聞こうか」
俺は必死に今あった事を話すが無論、信じて貰えず。嘘つくならもっとマシな嘘を付け。と言われ、二人仲良く説教されて教室へ戻って授業を受けてこの日は終わった。