最後の日記
12月31日 中性雨のち黒晴
ココロを鍛え続けたボクのふたつ目の目標、もとい課題。それは「1年間ジギーと一緒に過ごして、彼の全てを知る事」だった。
これをあえて酷く言い変えるなら、「1年間眠り続ける事」。多分、課題が終わったらボクは酷い頭痛と共に目を覚ますんだろう。
痛いのが嫌い。苦しいのも嫌い。それを抱えて前に進むのは、大嫌い。そんなボクから少しずつ遠ざかって、自分の中にいるもう一人のココロを知っていく。
これがトトを猫の姿へ変えた張本人を捕まえる事に繋がるらしい。それを聞いた時、「ボクの右目は心眼か何かか」と突っ込んだ。トトはそれに対して「世界の危機に繋がる存在を見極める防衛機関だ」と答える。それから長い話が続いたけど、ボクは「物理的、化学的防御」と言い換えて、卵焼きの最後の一口と共にあっさり飲み込んだ。そして自分の部屋に入り、気合いを入れてこの日記を書き始めた。だけど……
死者をヒトの理を外れた存在へと造り変える改造実験。吸血鬼。並行世界を渡り続けた親友。まともじゃない龍人。喋る猫なのに本当はエルフ耳、なおかつボクそっくりな魔界の王様……
ボクはあれだけ非現実的な現実を目にしているのに、「世界の危機」、という言葉はどうにも飲み込めない。
ファンタジー小説の読み過ぎだろうか?それとも、RPGのやり過ぎだろうか?……ああ、これどうでもいい疑問だ。
とにかく、今は「世界の危機」をよく噛む。それで、一年後には飲み込める様にしておく。これをボク個人の課題にしておきたい。
千絋や淋、トランは今何をしてるんだろう。もしかしたら、魔界でネクとかいう王様と何かしてるのかも。咲は相変わらず女の子をたぶらかして、ロギに怒られていそうだ。
……千絋。ボクはキミのいる世界の事も、全ての世界に何が起こってるのかもさっぱり分からないよ。でも、まずはなんとか自分の世界を知ろうとして、前を向こうとしてるんだ。
今は世界のためよりも、いつか目を覚ますキミのために強くなりたい。そう思うから。




