ACT:3-6/悪魔と幽霊はひとつにあらず
結論を言うと、騙された。
あの後あっしはロリコン疑惑を材料に脅され嫌と言うほど奢らされてしまい、有り金は全て食べ物となってトランの胃袋に消えていった。淋ちゃんだけは丁寧に断り続けていたけど、それでは可哀想だろう、と思って「コキューブ」なる異様な冷気を放つアイスを一本奢ってあげた。
幽界のお金は一日一回、ロギから送られる事になっている。金額は日頃の行いによって増減するらしい。悪い事をしまくると逆に奪われるし、いい事をしまくればがっぽがっぽ稼げると言う訳だ。今日の分のお金はシクロトの所に泊まっていたから、まだもらえていない。
「ふぃー、やっぱり持つべき友はロリコンとして見られてもおかしくない様な成人だネ」
「さ、流石にその言い方はダメだよぉ……」
その通り、ダメである。あとあっしは女子高生の方が好きだ。断じて言おう、ロリコンではない……
「よぅ!風に聞いてみたがぁ、おまいさんロリコンらしいなぁ?」
「断じて否っ!!」
あの魔法使いが、いつの間にか目の前にいた。あっしはその帽子を引っぺがそうと手を伸ばしたが、次の瞬間にそいつはあっしの背後に立っていた。
「まぁまぁ、ジョークだっての。笑えよ!スマイリン!」
「笑えへんわ!!」
周りの幽霊達からの視線が痛い。おまけにひそひそと話し声まで聞こえる始末だ。やめてくれ。
「リ、リーズ……どうしたアル!?捕まってなかったネ!?」
「へへーん、俺氏カミサマだから捕まったりしないもんねー」
得意気にしながら、彼女はあっしの周りをぐるぐる飛び回っていた。
「カミサマぁ?これが?何のお笑いやんね」
「これが言うなし!俺氏もだなぁ、やる気になればなぁ!ビッグバンまで時間を巻き戻したりー、ありとあらゆる惑星を氷河期にしたりー、味噌汁が5秒で美味しくなったりー、シロアリをヒアリに変えられたりするんだぜぃ!!」
前の二つはスケールが大き過ぎるし後の二つも地味過ぎる、すごく胡散臭い。このリーズとか言う奴、胡散臭さにおいてはカミサマレベルです、とでも名乗ってる方がよっぽどカミサマらしく見えるんじゃなかろうか。
逃げたいと思っていると、何だか怪しい人影を二つ、人混みの中に見つけた。
一人はクロトにそっくりだけど、四肢が色々な動物の部位を繋ぎ合わせた様になっている。真っ先に思い浮かべたのは、混沌獣(キメラ)だった。目は虚ろで、ふよふよと浮いている。
もう一人もクロトにそっくりだったけど、髪の色が全然違う。機関の施設で見た……クウちゃんだっけ、どちらかと言うとその子に似ていた。でも純真無垢で愛らしい雰囲気はなく、見ていて怖くなる様なオーラを放っている。
……どっちがネクだろうか?
「すまんリーズ、お子様二人は頼んだ」
……なんか、如何にも怪しい事がありますよ、って感じだ。あっしの悪事に対する勘は鋭い方だし、多分これは当たる。
よし、ここらでいっちょ始めてみるか。
……尾行。




