ACT:3-5/保護者、不審者へ
シクロトが墓地のスライムを全滅させた後、千絋ちゃんとちびっこ三人はどこかに連行されてしまった。それと同時に、今いる参加者で後日トーナメントを行うので今日は休め、とレオリルに言われ解散。ちなみに、あのレオリルがシクロトの前でこんな業務連絡が出来る訳がない。正しくはレオリル語の通訳者によるモノだ。本人は何か口走りながら地面を転げ回っていた。
そして残ったあっしは、20分ほどで解放された淋ちゃんやトランと一緒に屋台を回る事にした。
千絋ちゃんと時紅の二人は重要参考人だから色々と時間が掛かるらしく、ロギからは「何もしていなければ2時間ぐらいで牢獄に戻ってくるハズ」と聞かされていたからである。
「結局何やったん、あれ」
亡者焼き鳥なる青色の焼き鳥を食べながら、あっしは二人に聞いてみた。
「ええっと……まだ詳しく『視えない』からよく分からないけど、あれはネク様の拒絶反応、みたいなモノだと思う」
「……ネクって誰よ?」
「魔界の王様アル。双子の片割れネ」
へぇ、双子ねぇ。あの世の王様であるシクロトがクロトにそっくりなら、魔界の王様……ネクってのも、その片割れも、またまたそっくりさんだったりするんだろうか。クロトに会わせたら、四人同時に泡でも吹いてぶっ倒れそうだ。
「そういや、ここの王様もボスにそっくりだったネ。オレ達は話せなかったけど、咲姉は何か知ってるアル?」
「一言で言うとカタブツンデレってとこやな。反抗期の娘みたいで可愛い。あとパンも美味しいやんね」
あっしが正直に答えると、あろうことかトランはゴミでも見る様な目でこっちを見てきた。
「誰もそんな趣味の話は聞いてないネ、ロリコンアル?通報するアル?」
「ちょっとタンマ、あっし幼女に手出さんから!!健全!!健全!!」
聞いてないって言われても、他にあの子についてあっしが知ってる事なんて、どんな相手も従わせる変な『命令(コード)』とやらを使うとか、魔術を使ったら禍が貯まってしまう……とか、それぐらいだ。
……ん?もしやこれを言えば良かったんじゃ?
「私が『視た』限りでは……幽界のありとあらゆる事象を起こしたり操作する『権限(マスターコード)』っていう魔術を使える、あと……何か大きい問題を抱え込まされてる、としか分かってないんだけど、他に何か知ってる……?」
心無しか、淋ちゃんの見る目が不審者に対するそれになっている気がする。しかも……
「し、知らないやんね……」
この子はあっしより多くの情報を持っていたのである。変な命令が魔術だったなんて、知らなかった。
「全く使えないアル。通報して刑務所送りにするネ!」
「もう入ってるわ!!」
「ふぇ……咲姉、まさか既に前科が……?」
「あらへん、あらへんから!!堪忍してくれ!!」
……しばらくそんなやりとりを続けていたが、ちびっこ二人はあっしへの疑いを濃厚にしていくばかりだった。
頼む、誰か泣かせてくれ。




