ACT:3-1/クロスハント
「……おろ?」
あっしはいつの間にか、車の助手席に座っていた。合体後の転送は特撮お約束の展開ではあるけど、車に乗る事になるなんて聞いてないぞ。
……若干の不満を覚えていると、急に後ろから殺気を感じた。あっしはすぐさま振り返り、真剣白羽取りの構えをする。キィン、と音を立てて小さな火花が飛び散った。
驚く事に、真剣白羽取りであっしが受け止めたのは……文房具屋に80円ぐらいで売ってそうな、しょぼいノック式の青ペンだった。
そんな恐ろしいペンを持ってる奴は誰だと思って目を向けると、いかにも我こそが魔法使いですよ、と全身で主張しているくすんだ金髪の女の子だった。分かりやすい。
「何するんよ!!」
「おいっ、おまいさん!!それは俺氏の台詞だぜぃ!!ホント何してくれやがるんだよコンチキショウ、隣見ろよ隣をぉ!!」
うるさい声から逃げようと隣を見て、目玉が飛び出そうになった。
「……あ、頭がぁ……」
ハンドルにもたれ掛かり、ぐったりとしている千絋ちゃんがいたのだ。おまけに龍の尻尾までついていた。彼女は俗に言うモンスター娘って奴になってしまったらしい。
「……これ、どうなってるやんね」
「無駄にモードチェンジとかすっからこの子の想像力少なめカタブツ脳にすんごい負荷が掛かってんの!!OKー!?分かったらほら動かしてっ!!」
こんな状況でバカにされるとは、なんと可哀想な事だ。よしよし仕方ない、あっしが代わりにこのファルシオンとか言う格好良いロボットを動かしてビシッと……
「おい、これどうやって動かすん?」
「……イメージ……ぐぅ」
後部座席からもぐったりした声が聞こえた。身を乗り出し、そこにあった光景をじっと見る。
「……なんじゃこの幼女トリオは」
魔法使いの横に、どうも見覚えがある様でない様な、三人の幼女がいた。
「……そういう言い方は、フジュンだと思うよ……」
「そうアル、しかもこっちまで幼女扱いは失礼ネ!オレは男アル!!」
「ぐー……」
……淋ちゃんとトラン、あとデクノボーの時紅で間違いないらしい。
「つーか、なんで皆ここにおるんよ……ネムちゃんは?澪の姉御は?」
「そ、それは後で話すから……とにかく、今は敵を……!!」
「お、おう!」
フロントガラスに向き直り、千絋ちゃんを運転席から退かせて代わりに座る。そして、頭の中で格好良く動き回って敵を殲滅していくファルシオンを思い浮かべた。
「……ふーん、動きはいいんじゃねぇの。見直したぞ」
モニターに目を向けると、あれほど恐ろしく見えていたスライムが、まるでこんにゃくゼリーみたいにスパスパ切れては霧散していた。
しかし……こっちはイメージするだけで楽勝に敵を葬れるが、それに負けないぐらいに敵の数も多い。捌ききれるかどうか心配になる。
「……うぅ」
数分ほどして、千絋ちゃんが目を覚ました。失明していたハズの彼女の右目は、青く淡い光を放っている。
……何だありゃ?
「おっ、ようやく起きたな。今はボンスケに操縦変わってもらってるから安心してもいいぜぃ……」
魔法使いの言葉をぼんやりと聞いていた千絋ちゃんは、モニターを見てすぐにはっと目を見開いた。
「……咲!!攻撃をやめろ!!」
「んぇっ!?なんでや!!あいつ倒さなきゃ……」
「あれはネクだ!!」
「ネクぅ!?なんじゃそりゃ、食いもんか!?」
「違う!!……後で話す、だからやめるんだ!!」
腕をぐいっと引っ張られる。そういう事なら仕方ない、と動きを止めた途端……
『……『命令:00』、魔よ朽ちろ!!』
天地を衝く様な轟音と、まばゆい光が空間に満ちた。
世の中にはクロスハンターなるクソゲーがあるみたいですね……




