PHASE:3-10/幽魔合体
暴走したファルシオンは、そのまま動き出し格納庫を飛び出した。その際、マークが城の上で旗を振っているのが一瞬だけ見えた。ファルシオンは遥か上空へと登り続け、とうとう空を『壊した』のだ。
そして現在……
「ぎぃやああぁぁあああGが掛かるうぅぅう!!カミサマ死んじゃうぅぅううぅ!!」
「ふえぇ、どうなってるの……!?」
「おあー、すげー」
「こここここれはっ!!どうしたら止まるんだああぁ!?」
ファルシオンは悲鳴や困惑、感嘆(?)などの声で満たされていた。コクピットがどう見ても大型ワゴン車の車内にしか見えないせいで、何かの交通事故の真っ最中なんじゃないかと思ってしまう。……交通事故なんて生温いモノではないが。
フロントガラスに相当する部分はモニターになっており、そこを見たわたしは思わずぎょっとした。
「咲!?」
黒い霧の中に、咲がいたのだ。……燃える様な赤髪になっていたり、左腕が真っ赤に輝いていたりと生前とは明らかに違う姿だったが、独特なもみあげの形ですぐに彼女だと分かった。
こちらの声が聞こえているのか、咲は叫ぶ。
「オールライトやんね!!ささ、どんと来い!!そんでもって助けてくれ!!」
「助けるとは!?」
「黒いのがぶわーって来てんの!!すげー危ないっちゅー事ね!!攻撃も効かないらしい……のわっと!!」
咲の周りに黒い霧が集まったかと思うと、それはスライムの様になって彼女に襲い掛かった。
「……チヒロ、あいつがあぶない……ちゃくりくするぞ。これはねんじてそーさするやつだからな、わすれるなよ」
何故それをもっと早く言ってくれなかったのか……
操作方法が分かった所で、わたしは着陸姿勢を取る様に念じた。
ファルシオンの揺れは収まり、すぐに着陸する。
「……あれま、こりゃ厄介なもんだな、ファルシオンだけじゃ倒せそうにもねぇってもんだ。カミサマ新機能追加しちゃうぜぃ」
さっきまでぎゃいぎゃい騒いでいたレリーユーズはすっかり落ち着きを取り戻した様で、どこからか青いペンを取り出した。
「……それは?」
「俺氏のペンだぜぃ」
……そこを聞きたかった訳ではないのだが。
彼女はペンの芯を出さず、シートベルトに何かを書き始めた。インクがないなら当然何も書かれない、と思っていたが、綴られる文字は光の軌跡となってその場に残った。
「ほい終わりっと」
レリーユーズはペンを二回カチカチとノックして、自分で書いた短い文……お世辞にも綺麗とは言えない字で「特撮ロボのお約束」、とある……にふっと息を吹きかける。文は一瞬強く光り輝いて、すっと消えていった。
何がなんだかよく分からない。これで新機能、とやらが使える様になったのだろうか……
「……時紅兄、見事に寝てるアル……」
トランの言葉を聞いて、助手席(?)に座る時紅の方を見てみると……
「すやー」
彼女は規則正しく寝息を立てていた。仕方ない、後部座席にいるレリーユーズに助けを求めよう。
「なぁレリー……」
「リーズでいいぜぃ、大抵の奴は変態って呼ぶがな……動かすのはちと待て。下手に動かしたらバグっちまう。……うぉーい、そこのボンスケー!お主武器だと何が好きだー!?」
わたしを制して、リーズはモニターに映る咲に叫んだ。
『ボンスケじゃない!!あっしこう見えて女やんねっ!!太刀と大剣とハンマー好きー!!あとバトルアックスとロケランとミサイルとチャクラムとー!!』
「多いんじゃい、ひとつに絞れやい!!んで強く念じろい!!お前の望む最強の武器ってのをなー!!」
リーズの問いにバカらしい答えを返して怒られた咲は、何やら小言でぶつぶつと呟き始めた。すると、彼女の身体を覆う様に巨大な光の柱が生まれる。
「チヒロ!!ボンスケ!!これから言うのを続けろ!!「ソウルドッキング!!ファルシオン・ウェポンチェンジ!!」リピートアフターミー、オーケィ!?」
リーズは目をキラキラさせながら言った。……なんだか怪しい。
「……ソウルドッキング!!」
『ファルシオンッ!!』
「「ウェポンチェンジッ!!」」
よく分からないまま叫ぶと、全体的に青かった室内灯が紫色に変わり、モニターに大きく「FALCION・MODE X」の文字が表示された。
「おいボンスケ!!俺氏武器っつったろぉ!!こんなんモードチェンジじゃねぇかああぁぁっ!!」
……本当に大丈夫なのだろうか。




