PHASE:3-9/メカニカルサバイバル
まず、やせた大地があった。
そこに並べられた墓碑は無惨に破壊され、淀んだ雲に覆われた空にはカラッカラに枯れた花弁が舞い、なんとなくイヤな空気が流れている。異空間の中は、「荒れ果てた墓地」という言葉がしっくりくる姿をしていた。
ここで禍霊とやらを探してぶっ倒す必要があるらしいが、一体何匹倒さなきゃいけないんだろうか。
手首の鎖を見てみると、「66」と数字が浮かんでいた。
「……多過ぎやせぇへんか、これ」
もしかしたらクリーチャーでいう所のマルマルダックとかオードブルドッグ並みに弱かったりするかもしれないが、なんせ実際に見たり戦ったりした事がないものだから敵の実力はよく分からないし、姿も分からない。自分の武器がない事も手伝って、あっしの中ではおっかない禍霊の像がどんどん完成しつつあった。
……ダメだダメだ。そんなんじゃシクロトに辿り着けやしない。
ただのイメージなんかに負けてたまるか、と拳を作って辺りを見回す事にした。
そして1分が経過。
「……潜伏してるタイプか?」
参加者もきょろきょろしたりうろうろしたりしているので、とりあえず一緒にうろついてみた。
更に5分経過。
「どういう事やの……」
特に変化は起こらず、困惑の波が徐々に広がっていく。
「……おかしいな、なんでいないんだろう……ドジ?」
参加者がぎゃいぎゃい不満を言って暴れる中、ロギは銀に光る拳銃を構えながら、ぽつんと立っていた。その様子があまりに犬っぽかったからこっそり頭をぽんぽん叩いて逃げようとすると、すぐにバレてフードを掴まれた。
「めっ」
「あざといやんね」
「あざと……?」
……どうやらあざといの意味も知らずにやったらしい。やれやれ、困ったちゃんな元父だ。男のままだったらぶん殴ってたかも。
「う……うわああぁああぁぁっ!!」
……なんて思っていると、すぐ近くで痛々しい叫び声が聞こえた。
見ると、崩れた墓石の山を漁っていたおっさんが黒いスライムみたいな何かに下半身を喰われている。
「大丈夫かとっつぁーん!!」
ニット帽を目深に被ったガキが駆け出し、黒いスライムに斧を振りかざしたが……
斧はずぶり、と沈み、そこから吸い込まれる様にして彼も喰われた。
「なんだあいつ、本当に禍霊か!?」
「どう見ても違うだろ、禍霊はあんなデロデロになったりしないし攻撃も効くぞ!?」
黒いスライムは二人を完全に飲み込み、やがて斧を持った戦士の様な形になった。
そしてこれを合図にするかの様に、墓地に黒い霧が満ちていく。
「ロギ、これどうなってるん!?」
「分からない……でも、あいつに近づいちゃいけないのは確かだ。この事は僕が主に連絡してみるから……うっ、嘘だろ!?」
ロギの言葉を遮るかの様に、次々に悲鳴があがる。目を凝らして見ると、あちこちに黒いスライムがいて、幽霊達を喰らっていた。
「くそっ……マジやっべーな……!!」
赤いマフラーを巻いた女の子が、金髪を振り乱しながらこちらに逃げてきた。
「ロギのおっちゃん!あいつらマジこえーな、足めちゃくちゃ速いしこっちの攻撃全然効かねーぞ!」
女の子はどうやらロギを知っているらしく、ぴょんぴょん跳ねて必死に現状を伝えていた。
「……二人共、上っ!!」
ハプニングは重なるモノらしく、ガラスをかち割る音が墓地に響き渡る。ロギに倣って上を見ると空に穴が開いていて、そこからは……
『どうなっているんだあぁぁああぁっ!?』
聞き覚えのある声と、黒い騎士の様なロボットが両手を振った間抜けな姿勢で落ちてきていた。
「千絋ちゃん!?」
あっしはその声を聞いた途端叫び、ロボットに向かって走った。
黒いスライムが獲物を喰らおうとその身体を伸ばしてくる。転がり、あるいは飛ぶ事で回避して、ただロボットの元へと走り続けた。
「……よっし、どんと来いやぁ!!」
美少女が乗ったロボット、つまり美少女!!これは受け止めてあわよくば黒いのも一掃してもらうしかない!!
あっしは両手を掲げ、ロボットを待ち構える。左手は夕日の如く眩しい、赤い輝きを放っていた。




