PHASE:3-7/サディストは虚空に
残念ながらこの回は少量のリョナ要素とたくさんのいやらしい要素で構成されているので、実家住みの方は背後に気を配りながらお読みください。
非常にごめんなさいです。
紳士淑女諸君、あなた方は変態だろうか。
ちなみにボクは変態ではない。
まとめブログを漁っていた時期にうっかりいやらしいサイトにアクセスしてしまった事はある(しかもネムにその現場を見られ一時期ムッツリと呼ばれていた)が、好んでそういう情報に触れようとは思わない人種である。
……なので、同じ浴槽の中で密着してきたこの吸血鬼に対して劣情を催す事なんて、たとえ地動説が天動説に逆転してしまっても……面倒な例を出してしまったけど、要するに決してない訳だ……
とまぁ、平静時のボクならそう言うんだろう。しかし今のボクは、そんな事をのんきに言っていられるほどの心の余裕がなかったのである。
「この世界は狂ってる……いや、狂わされてる。なんでだと思う?」
「知らない……」
枯葉はボクの耳元で囁きながら、腰辺りをひたすら撫でていた。
……ヤバい。これ、なんか変だ。
今までにないぐらいに誰かの体温を感じて、普段絶対に触られない所なんかも触られてる状況で……
なんとなく頭がふわふわしてきた。
「全部クロトに向けられてる愛の仕業さ。誰かが魔王様を猫にしたり、何の関係もないヒトを操ったりして……世界をめちゃくちゃにしながら、ユーをひとりじめしようとしてるんだ……」
枯葉が何か喋る度に、身体が電流でも流されたかの様に小さく跳ねてしまう。そして今まで感じた事がない……まるで何かに溺れていく様な、奇妙な感覚に囚われつつあった。
「ちょっと、枯葉……やめて……んっ」
「やめたくない。あんな奴にミーのクロトを取られるのは、絶対にやだ。先にミーがカラダもココロもひとりじめする。奪わせたりしない。だからさ……」
……そこから先の言葉はよく覚えていない。
ただ、気がつくとベッドで寝かされていた。カーテンの隙間からは細い光が漏れて、暗い部屋を照らしている。
ボクの隣では、枯葉が微笑みながらこちらを覗き込んでいた。
二人とも、服は着ていない。
「グッモーニン、クロト。気分はどう?」
「最悪だ」
彼女はその答えを聞いて、何故か満足そうに頷く。
ボクの中で、何かが音を立てて崩れた。崩れた瞬間、ボクは枯葉の肩を掴んでマットレスに叩きつけていた。
「……今日はずいぶん、アングリーなご様子だね?」
「黙れ」
そして自分がされた事を、かなり乱雑にしてやり返した。
無理矢理キスをした。首に噛みついた。胸に歯形をいくつもつけた。腹を殴った。
他にも口にするのもはばかられる様な行為をたくさんしたけど、それでもボクの喪失感は満たされなかった。
ボロボロになった枯葉の上で、息を切らしながら泣く。そんなボクを見て、枯葉は笑った。
「……そうそう。ミーはそのフェイスが見たかったんだよ。綺麗だね、いい子だ」
……ボクは汚された。「わるい子」になってしまったと言うのに、何が「いい子」だ。
再び憤りでココロが満たされ、頭に気味の悪い声が響く。
『こいつが憎いなら、ぶっ殺しちまえ。オウム返しなんかじゃ足りないだろ?』
ボクはその言葉に従って、右手を振るう事にした。




