PHASE:3-5/ロストゲーム
「さっさと話す事話して出ていけ!!あわよくば自宅爆発しろ!!」
「猫に噛まれろ!!」
「ゾウリムシに身体を内側から蝕まれてしまえ!!」
レオリルが話していてもブーイングの嵐は収まる所を知らず、最早嵐と言うよりも超災害と言った方がしっくり来るまでになっていた。老若男女関係なく空き缶やら火のついた可燃ゴミを放り投げ、レオリルを追い出そうとする光景は、ええじゃないか運動の考案者もきっと裸足で逃げ出す事だろう。
「試合方式は基本的に選ばれた幽霊一人ッ、武器霊一人……こちらは参加資格が無くても可能ッ!!と言う感じでタッグを組んで戦うデュアル・ゲームとなっておりますゥウゥ!!ちなみに武器を持たなくてもOKで……え?あっはい、でも予選は主直々にルール変更があるそうです、はいどーぞ」
何か連絡があったらしく、彼はあっさり引き下がる。恐ろしいほど荒れ狂っていたブーイングはぴたりと止み、辺りは嘘の様に静かになった。
「……『命令(コード):04』。忌むべき亡骸よ、失せろ」
観客席から投げ込まれたゴミが蒼い炎に包まれて消え、それと同時にシクロトが現れた。その格好はいつも見ていたフード付きのコートではなく、ふさふさの白いファーがついたマントを羽織り、頭には青い王冠を載せていた。正装みたいな奴か、なかなか似合ってる気がする。
「ふん、下らん事をしてくれおって……レオリル・タオレン、もといガルニア・ウェールテット。貴様はいつも勝手に口を挟んではみなを怒らせているな。……確か貴様の生前は原始地球を創造し、龍の帝国を造り上げた王龍であったと聞くが……今の貴様には威厳、知性が微塵も感じられない。……何が言いたいか、分かるな?」
「ンハアアァアァンッッ尊いッ!!ありがとうございますゥゥ!!」
レオリルは纏っていた黒い布を自分で引き千切った。
……そして露になったのは、全裸で身悶えする黒髪の龍人……の女であった。
「えっ、女とか聞いてないやんね」
「……嘘だろ、男だと思ってた……」
と言うか待てよ。……確かウェールテットって、あのババア……ポルカの下の名前じゃ。
……もしかして、こいつが先祖なのか!?
あまりにも酷いその姿に驚いていると、シクロトはレオリルにデコピンをかまして場外に吹き飛ばした。
「……昨日の赤い流星群を見た者は多いだろう。あの流星群には、触れた者を禍霊にする力があると分かった。……これをただの流星群で済ます訳にはいくまい。ボクはこれを「凶星雨(キョウセイウ)」と名付ける事にした」
あの光が、幽霊を禍霊にするのか。しかし……
「……それじゃあっしもなってるんじゃ」
「それはないと思うよ。禍霊はまともな自我がない……生前晴らせなかった思いを、歪んだ形で抱いてる。幽霊も平気で喰らうし」
周囲がざわつく中で、ロギは落ち着き払っていた。……大人の余裕って訳かよ。
「……さて、この凶星雨によって発生した禍霊を異空間に閉じ込めているのだが……ボク一人で始末するにはかなりの時間がかかるのだ。よって千戦の儀の予選は、制限時間内に禍霊を多く倒した順に10名が第2予選へと進出……という形になる。みなのためを考えた結果がこれだ、すまない。
……これより千戦の儀を執り行う!!選ばれし者は門を抜け、忌まわしきものどもを駆逐せよ……健闘を祈る!!」
シクロトが叫ぶと、あっしとロギ、そして何百人と言う幽霊達が門の前に立っていた。勿論、皆その手には鎖が巻きついている。
「……これからは敵同士。肩車なんて出来ないよ」
「分かってるっつーの」
ロギの肩から飛び降りたが、あっしはひとつ大事な事に気づいた。
「あっし武器なくね!?」
他の参加者達が武器を構えて門の外へ向かっている中、こちらは素手、両方のハンドがフリーな状態である。
……圧倒的不利とはまさにこの事!!
「ついてねえぇぇ!!」
あっしは嘆きながら、門へと押し込まれていった。




