事後報告
何でもない事だけど、コートを買い替える事にした。
せっかく作ったモノを人殺しになったボクが着ているなんて聞いたら、お母さんも悲しむだろうと思ったからだ。
今まで着ていたコートはクリーニングに出していて、帰ってきたらクローゼットにしまうか、クウにでも着せるか、どうしようかと考えている。
今着ているのは、黒地に赤いラインの入ったコートだ。フードは3WAYの着脱式らしく、今は外してネックウォーマーにしている。
そして、ボクは巨大な木箱を担いで創作者達(クリエイターズ)の拠点の前にいた。インターフォンを鳴らすと、すぐに檜が飛んでくる。
「咲!?……じゃなかったにゃ……」
顔を輝かせたが、すぐにしょんぼりとして項垂れた。
咲が死んだ事は、世間には知られていないのだ。
「それ、何だに?」
檜は木箱を指さして不思議そうな顔をする。
今も咲が生きていると信じている彼女に、どうやって本当の事を言うべきか一瞬悩んだ。いっそ言わなければ、とも思った。
……いや。言わなければ、どこまで探しに行って命を落とすか分からない。
玄関に木の箱を置いた。
「……「あっしが死んでも、誰かを傷つける様な人にならないでくれ」、だそうだ」
「え……?」
「死んだから、渡しにきた。……それだけ」
ドアを閉め、足早にその場を去った。
……咲がボクを憎む気持ちが、少し分かった気がする。
こんな言い方をされて死体を見せられたら、殺したくもなるだろう。
それでもボクは、この言い方以外でどうやって伝えればいいかなんて分からなかった。
……最初は短いもんだっておじいちゃんが言ってたし……ほら……




