PHASE:1-FIN/死が少女を見つめる時
「……」
今、自分はひどい顔をしているだろう。鏡を見なくても分かる。……この部屋に鏡なんてないけど。
カーテンは閉じ切っている。机の上は散乱している。床にも本が散らかっている。いつもの事だ。
ただ、そこに咲がいない。それだけで全てが闇に閉ざされた様になる。
身体もあまり動かないし、寝ているか、彼女との思い出をなぞるだけの毎日だ。食事もろくに食べていない。一定の間隔で無理矢理テトに引っ張られて、病院に連れて行かれる事ならある。一定の間隔と表したのは、曜日や日付なんて、今となってはもう必要ないモノだからだ。
咲がいなくなってからおれの時間は止まったし、どんなモノも意味を成さなくなった。
「……なんで咲が死ぬ必要があった」
久しぶりに声を出した。ずいぶんと涸れていたので、自分のモノとは思えず驚く。
久しぶりに感情が動いたが、それはほんの些細な動きだったらしい。
「必要だったとしても、なんでおれは」
……死ねなかったんだ。
今のおれにとって唯一意味を成す存在は咲だけだ。その咲がいないなら、全て終わってしまってもいいじゃないか。
それなのに、どうして終わらない。
「……いっそ、後を追った方がいいか」
首に爪を立て、ゆっくり押し込んでいく。まだ自分には力が残っているらしい。果たしてその力で死ねるだろうか、ど考えたその時。
『……待てよ!』
もう二度と聞かないと思っていた声が聞こえた。
「緋煉……?」
辺りを見回しても姿は見えない。一体どこにいると言うのだろう。もしかすると、幻聴なのかもしれない。
『ああそうだ、オレだ。嘘じゃない。今あの世から声を掛けてる。……なんか様子がおかしいと思ったら、とんだ事になってんじゃねぇか。どうした?』
「……咲が、死んだ」
『……やっぱそうだろうな。昨日見掛けた。だからって死ぬんじゃねぇよ。……何なら、会わせてやろうか?』
「出来るのか?」
『ああ。ただ、ちょっとそっちの用事が出来た。身体が必要なんだ。ちょっと見た目は変わっちまうかもしんねぇな。その代わり、終わるまではあいつに会わせてやる。……悪い話じゃないと思うんだが』
「構わない」
言い終えるかどうかのタイミングで、勝手に口が動いた。
『はは、速ぇな……でも、ありがとな』
「……くっ……!!」
緋煉が感謝の言葉を口にすると同時に、目に強烈な痛みを感じた。
『……すまん、痛いか』
「大……丈夫……それより、今のおれは……どんな姿をしてる……?目が……見えないんだ」
『ああ、綺麗だ。あいつが見たら、きっと褒めてくれるだろうさ。……だから、安心して眠ってくれ』
その声と同時に、あれだけ寝ていたと言うのに眠気が襲ってくる。眠っていれば、痛みも消えるハズだ。
『はは……おやすみ、檜』
しかし何故だろう。意識を失う前に聞いたその言葉は、どうにも悪意が込められている様にしか聞こえなかったのだが。
……どうでもいいか。




