悪役令嬢追い詰めたら学園崩壊ENDになったんですけどッ!?
様式美っていいよね、って思ってかいた話です。
「お前との婚約を破棄する、ソニア・バークエン公爵令嬢」
絶対的な響きを持ってその声はその場に響いた。
その言葉を向けられた公爵令嬢ソニアは目を驚愕に見開いた。
ここはエストワール王国の中心たる王都にある学園。ここは貴族の子息、もしくは魔力を持つものが集う学び舎。
王国の中心となるものが必ず一度は入学し学ぶ場所であり伝統ある場所である。
その学園の広大な中庭にてそれは行われていた。
テンプレの悪役令嬢断罪シーンである。
そう、この世界は乙女ゲームを基にした世界。
ちなみに俺自身はそのテンプレシーンのヒロイン側の攻略対象の一人、第一王子の従者としてここにいた。
攻略対象ではないんだ、ごめん俺モブ顔だから。すまぬ・・・
ちなみにこのヒロインは攻略対象の好感度を平等に上げつつじゃないとルートに入れないこの国の第一王子ルートに入った模様。現在その王子の婚約者たる令嬢にいろんな嫌がらせを受け、それが王子他攻略対象(皆この国の有力者☆)に露見。公爵令嬢吊るし上げ、げふんげふん・・・もとい断罪および婚約破棄宣言をその王子から受けてます。修羅場である。
ちなみに俺はご主人である攻略対象のそばに立ってそれを眺めるだけの簡単なお仕事なう☆である。
「何故です、何故ですのフェルディナンド様・・・長年婚約者としてそばにあったわたくしではなく何故その平民の娘ばかりに!!」
悪役令嬢の悲痛な叫びが響く。だがそれは王子であるフェルディナンド殿下の心にはもう届かない。
そして悪役令嬢に無情な断罪を王子は降す。
「ソニア・バークエン、お前は公爵令嬢という身分を振り翳しすぎた。今回の件、その身分を盾に今まで許されていたことの許容できる範囲では収まらぬ。よってそなたにはその身を修道院へと寄せてもらう事になるだろう」
その言葉にソニア嬢は俯き、その美貌を掌で覆う。
修道院へとソニアを送ることそれは殿下なりの最後の婚約者への配慮であり、優しさでもあった。
このような醜態をさらしたのであればもはや実家である公爵家ですら肩身の狭い思いを送るであろう彼女に対する。
殿下が俺に対し合図を送り、俺は令嬢ソニアをそのまま退場させるべく彼女に近寄った。
俯きその掌で己を守る様に顔を覆う彼女は嗚咽を漏らして・・・・・・いなかった。
「ふ、ふふふ、うふふふ・・・」
ソニア嬢は笑っていた。顔を覆っていたから表情は見えなかったが、多分見えていなくて良かったのだと思う。口元が三日月のようにに吊り上って弧を描いていた。
怖い、このご令嬢。
俺は思わず後ずさった。と同時だった。
ぼこぼこぼこっという音と共に舗装された中庭の石畳が盛り上がった。
それはまるでソニアを守るように。
ガシャンっゴシャンッジャッキーンン!!
太陽を反射し冷ややかな光を放つそれはどう見ても・・・・・・砲台だった。
しかも大砲とかのではなくもっと近代的な、具体的に言うとミサイルとかガトリングとかいわれるものの。
ってまてまてまてぇえええええ!!ここは剣と魔法のファンタジー世界ですよぉ!?
「なんだあれは・・・?」
あ、ちょっ殿下だめぇ!珍しいからって近寄っちゃあばばばb
「発射」
ドガッガガガガガガガガガガガガッ
令嬢の合図と共に手前にあった砲台が火を噴いた。俺はとっさに王子を持って避難した。
「うわあああ!皆様逃げてくださーい!!」
その俺の声を合図に蜘蛛の子を散らすように悪役令嬢断罪シーンにご参加の面子および野次馬連中が逃げ出す。
良かった、ミサイルとか爆発系が最初じゃなくて良かった!!多分手前にあった機関銃とかガトリングとかだとおもうけどって待って!そもそもなんで近代兵器があるんですかねぇっ!?(白目)
後ろからチュドーンズドーンという爆発音が聞こえてきた。殺意モリモリですね!
「・・・はっ、もしやあれが噂にきいていたバークエン公爵領で密かに開発されていたという魔道兵器か!すさまじい火力だな、素晴らしい」
「なにしたり顔で納得してるんですか殿下ぁああ!!!感心してる場合じゃないですよ明らかにあれターゲットロックオンされてますよそもそもあれ魔道要素ねぇえええええ!!!!」
『逃がしませんわ、フェルディナンド様・・・』
あきらかに生身の音ではない音声が結構逃げたこの距離で聞こえる。拡声器じゃないですかやだぁあああ!!どうみても科学です!!!本当にありがとうございましたぁっ!!
近代兵器に眼を輝かせて見入る殿下を抱えなおし従者は走るよどこまでも。
『ふふふ、こんなこともあろうかとお父様に言ってこれを開発しておいて良かった。させませんわ、断罪なんて。バッドエンドなんてクソ食らえですもの。ふふ、うふふふふふふ』
ん、んんー!?あるぇっ、ひょっとしてソニア嬢が転生者!?しかもゲーム知ってる!
え、ちょっと待って努力の方向間違ってません?普通バッドエンド回避って言ったらもっとこうヒロイン苛めたりなんかしないわ、とか婚約者にならなければいいんだわ、とかそういう方向に行くもんじゃないんですかね!?なんでバッドエンドを武力で強制終了とかそういう方向に努力してんのこの人!!?ばかなの?あほなの?頭脳筋なの?
『うふふふお待ちくださいなフェルディナンド様~』
ガッショガッショという音が爆音と銃撃の合間に聞こえる。
チラッと後ろを振り返れば移動する兵器と凶器の山と凄まじく麗しい笑顔のソニア嬢が見えた。
見なければよかった。
己の中の何か大切なものがガリガリガリッと高速で削れる音を聞きながら王子を抱え走る速度をさらに上げる。
ふと横を見れば爆煙の合間にヒロインがチラチラと見える。一緒に彼女を励まして走っているのは同じクラスの目立たないだが堅実なタイプの攻略対象ではない男だ。爵位はたしか男爵だったはず。ヒロインはそんな彼に手を引かれながら彼の背中を見つめている。その瞳には今まではなかった熱が宿っていて・・・
見なければよかった。(2回目)
また己の中で何かが削れる音を聞きながら俺なんで走ってるんだろうな気分になった。
『ああ、何故貴方はいつもわたくしを見てくださらないの。何故何故っ』
まずい。後ろのソニア嬢がセルフヒートアップしだした。
どしゅーんどしゅーんだった発射音がどしゅどしゅどしゅーんと間を置かなくなってきた。
『あ、』
後ろから間の抜けた声が聞こえた。つられて振り返れば。
そこには一斉に放たれたミサイルが。ミサイルの先には、学園の校舎があった。
「あ」
ちゅどおおおおおおおおおんっ
***
その日、エストワール王国の中心たる王都にある学園が消えた。
それは天災によるものであったのか、なんらかの実験の事故によるものであったのか記録には残されていない。
ただ平和だったある日、突然にそれは起こり、憩いの学び舎であった学舎は崩壊しそこには瓦礫の山が残った。幸い、生徒に死傷者はおらず、だがその詳細を語るものはいなかった。
ただ関係あるかは分からないが、記録にはその後魔力を持った平民の少女がある男爵の青年と結婚したことと、当時の第一王子とその婚約者の令嬢が新しい魔道兵器の開発に着手し、成功したこと。その後二人は婚姻を結び国を長く治めたことが残っている。
その記録の著者はかつて第一王子の従者であったものであることが分かっている。
何ゆえこのような記録を残したのか、未だ解明されていない。
その記録には最後にこのような走り書きが残されている。
「ちょっとっ、あの二人ロボ作りやがったんですけどっ」
書いてるときずっと頭の中でド○フの音楽流しながら書いてたせいかこんな感じになりました。爆発オチって様式美の可能性を突き詰めてみたいと思い書いて見ました。すみませんうそです、単にやってみたくなっただけです。
補足みたいなの
ソニア嬢→各方面に怒られる&謝罪行脚。修道院行きが王子との共同開発の話でうやむやに
王子→ソニア嬢の近代兵器にかっけーってなる。ソニア嬢と兵器共同開発してロボを完成させてしまう。かくして王国にロボットファイトの時代が幕を開ける。俺たちの戦いはこれからだ!
ヒロイン→王子とはお友達だった模様。逃げたときに一緒だった男爵家子息とゴールイン☆
従者(主人公)→たぶんずっとつっこみいれてた。
爆発させて終わらすだけのつもりだったのに何でか3000文字超えてました。深夜のテンション怖い
あと兵器の名前とか間違ってる可能性あるのでそこは生暖かい眼でスルーしてください。いいんです武器なんて爆発できればなんでも。そういうことにしといてください。(諦め)
10/12 ご指摘あった箇所の修正を行いました。