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9(ゴミ箱)

 まぁ、そんな話よ。お後がよろしいようで、って違うか。けど、もう終ったんだ、今夜が大トリ。そして彼女はいなくなった。お終い。

 塩、落ちたかな。制服って便利なんだか不便なんだか。毎日着るのに喪服になるし。明日もこれで学校行くんだよ。お清めしたからそれでいいって、分からないでもないけど、なんかね、心情的にね。気にし過ぎ? いや分かるよ。分かってます。ただなんかもやっとするってだけ。……あれ? こんなん、どこで紛れたんかな。あの切り紙とそっくりだわ、ほんとこんな感じ。色はもっと真っ白だったけど、これは褪せたってよりも──焦げた? みたいな色だなぁ。

 わたしが作らされたのは何人もが手を繋いで輪になってたんだよ。うーん、両手の先、千切ったようにも見えなくないかな……。おっと、首が千切れそう──あッ。

 あーあ、切れちゃったよ。いいよ、もう。気持ち悪いし。丸めてほーい、ナイッシュー、スリーポイント。さてと。どこまで話したっけ? うん? ……何の話?


   *


 教室の後ろにあるロッカーの交換があった。

 クラスに仲村なかむら学人がくとという男子がいる。名前とは裏腹に子供っぽくてお調子者で、いわゆるクラスのムードメーカー。同時にしばしばトラブルメーカー。ありがちだけど、加減がおかしい。教室で他の男子とふざけて暴れて、ロッカーをベコベコに凹ませ怒られ、本人たちもだいぶ凹んでいた。

 どちらにしても長年使われていたロッカー。塗装も剥げて、錆も浮いて、扉も歪んで、文化祭の名残か、ガムテープの痕も汚く、この機会に交換という次第。

 大掃除に併せて中を空にし、男子が数人がかりで移動させた。わたしは自在ぼうきを持ってそれを見ていた。隣で町村まちむら博史ひろしが同じ物を持って、ぼんやりと立っていた。

 裏から紙人形がいっぱい出てきた。不意に込み上げるものを感じて吐き気と闘っていると、普段は物静かな町村がさっと動き、手品みたいに散らかっていた紙人形を片手の中に収め、ゴミ箱に捨てた。

「終ったことだよ」

 わたしに聞かせるようでもあり、独り言のようでもあった。前者であれば実に数ヶ月ぶりにクラスメイトから声をかけてもらえたことになる。吐き気はいつしか消えていた。

 放課後、ひとりきりになると、教室の隅に置かれたゴミ箱をのぞき見た。紙人形が一枚、引っ掛かっていた。わたしはそれを抜き取ると、スカートのポケットに隠し入れた。

 通学鞄を抱え、逃げるように教室を後にした。駆け降りた階段の途中で町村とすれ違った。真っ直ぐ視線を向けられ、知られていると確信したが何もいわれなかった。お目こぼしをしてもらったのかもしれない。

 葬儀から帰宅した翌日、姉が消えた。通学途中だった。

 両親は警察へ行った。暫くして事情を知ったクラスの幾人から同情と心配の言葉を貰った。親切心に上手く応えられなくてもどかしく思った。

 姉は変わりなく帰って来るだろうか。帰って来れるだろうか。父も母も、いなくなって十日くらいは期待はあったろうが既にひと月が経ち、諦めているのが分かる。そしてわたしも、期待していない。


  ─了─

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