8(暗黙の了解)
なんとまぁハッキリした理由だこと。面倒に引っ掛かったのはわたしなのにさ。どうせそれ以上訊いても、答えないのは分かってたから、もういいやって、切り絵をつまんでた指を離して、ストンってロッカーの裏に落とした。
これでいい? って振り返ったら誰もいなかった。いつの間にか町村、消えてた。代わりに、明けっ放しの引き戸から沢田が入ってきて「終ったか」遅いから見に来た、って。
沢田、わたしを見て「狐につままれたみたいな顔してるぞ」だなんて、まぁ遠からずだ。
プリント渡すと、ざっと見て、気をつけて帰るよういわれて、居残りさせたのあんたじゃんって一瞬思ったけど、黙ってそそくさ帰宅した。なんかぼーっとした気分だったな。
そして四ノ宮が消えた。山狩りあったの憶えてる?
見つかるまでの二週間、ほんと息苦しかったな。四ノ宮は田んぼの中で見つかった。そして入院した。どっか、地方の……そういう人専用の病院ってウワサ。
PTAでは集まりがあった。全校集会はなかった。みんな分かってたけど、あえていわないことを先生たちは選んだんだよね。担任からそれとなーく注意ってカタチはあったけど、触れたくないってのをヒシヒシ感じた。
それから暫くして気付いたんだ。教室の席の数がぴったりだったことに。四ノ宮の席がなくなってたんだ。いつ、誰が、だなんて聞けやしなかった。みんな同じこと、思ったんじゃないかな。担任も何もいわなかったし。クラスの不文律、暗黙の了解ってヤツ。
切り絵の件もあって、町村に会おうと思ったけど、改めて考えたらなんかこう……憚れたな。結局聞かずじまい。
三年のクラス替えで四ノ宮の名前は無かった。どっかの院内学級? にでも転校したって考えるの理にかなってるんじゃないかな。でも、わたしは町村が手引きしたんじゃないかって思ってる。いや、疑っている、かな。




