6(単純に不気味)
こういうのはハタから聞く分には面白いんだけどね、近いとちょっと生々しいっていうか、単純に不気味だから。友達の友達から聞いた怖い話なら、びっくりしたぁ、怖かったぁで済むのに。ほら、例のトンネルでクラクション鳴らすと出てくるとか、エレベーターのボタンを決まった順に押してみるだとか、そんな類い。結局はお話なんだよね。それが友達の話になるとね、まぁ他人事だけどさ。金縛りに合った時はさすがに慌てたけど、朝になったらなんか夢だったなーって。そうそう、去年のあれ。え? 一昨年だっけ? あーそうだそうだ。夏休みだったね。熱帯夜で海帰りだったし、全身日焼けでヒリヒリ。だからそんなこともあるさ。疲れてたろうし。まぁどっちでもいいや。ね? 面白可笑しく話してたでしょ? そこが決定的に違うんだな、いわゆる怖い話と、事件ってのは。
四ノ宮は事件なんだ。河童でも天狗でもない、中学の、クラスメイトの話。
その日、宿題忘れて居残りだったんよ。今もいるでしょ、数学の沢田。「こんな時の為に」っていっつも特別プリント、用意して。まったく迂闊だったわ。しかもその日に限ってひとりだけ。
で、放課後。せっせと……っていうか、だらだらやってたんだけどね、それでも終えたのが四時くらいかな、教室の中、赤くなってさ。運動部の声もまばらで、校舎もすっかり静まって。で、荷物まとめて、リュック背負って、プリント出しに職員室に行こうかって時だった、町村がひょいと姿を見せたのは。
もうね、心臓止まるかと思った。引き戸開けたら、そこに立ってるんだもん。通学鞄を斜め掛けにして、ゆらぁって感じで、長い黒髪の女。ほんとに驚くと人間って声が出ないのね。背中に氷を入れられたみたいで芯からゾッとした。膝と腰が身体を支え切れなくなって、その場でへたりこみそうになって、ちょっとチビッた。冗談だったらよかったね。は─は─は。
でだ。これ、って差し出されたのが白い無地の、半紙……和紙になるのかな? 習字で使うのよりしっかりしてた。今思えばなんで受け取っちゃったんだろうな? 有無をいわせずってか、雰囲気に呑まれたって感じ。
「何これ」って訊けば、「頼まれた」誰にって訊くより先に町村は「荒木さんに」って続けた。
病院送りになった人間の名前が出たことに驚いたけど、ふたりが知り合いだったのも驚いた。
なるほど、荒木は予見してたってことか。ふうん。いわれてみればなくはない話だね。それなら荒木の無謀も分からないでもないかな。でもやっぱバカだよ、バカ。




