3(掴み所の無い)
積極的に関わろうって人も、声を掛けようって人もいないワケじゃなかったけど、肝心の四ノ宮がアレだから、結局、置物みたいな扱いだったね。そりゃ行事だとかで担当の割り振りはあったし、四ノ宮も自分の割り当て分はちゃんとやってたよ。進んで他人の足を引っ張るようなマネはしなかったけれども、誰かを手伝うようなこともなかった。そもそも四ノ宮自身が人を寄せ付けないっていうか、変な空気をまとってた。パーソナルスペースってのとも違う。だからこっちもトコトンやってみよっかって。
ゲームが始まって暫くすると、本格的に居場所のなくなった四ノ宮は学校を休みがちになった。不登校じゃない。
なにがおかしいって、その頃が今まで放置してた四ノ宮にいっとう注意が向いてたってこと。観察日記じゃあるまいにね。
不登校じゃないってのは、何人かが制服姿の四ノ宮を見たんだ、放課後、帰りがけに。
駅で見た、街で見た、公園で見た、学校で見た。色んな話があった。誰かと一緒にいたって話もあった。でも相手が誰だかハッキリしない。そりゃそうだ、制服姿の中学生と一緒だったら補導じゃ済まない。だからそんなワケないって否定されたな。他にも風邪で休んだ子がお昼頃にカーテン開けたら、道路から四ノ宮が見てたってのもあったけど、やっぱりそりゃないわって。熱の所為だよって。
と、まぁ、そんな掴み所の無い話がまことしやかに飛び交ってた。なにしろ突き合わせをしてみたら変なんだもん。町のあっちとこっちで、移動時間を考えたらありえなかった。だから全部ひっくるめて勘違いってことで納得した。表向きはね。本心じゃ誰もそんなこと信じてなかったけれども、そういう取り決めをしたんだ。そうやって気持ちの帳尻を合わせたんだ。
それでも四ノ宮が放課後までどこかでぶらぶらしていたのは勘違いじゃなくてね。四ノ宮の家に近い何人かが見てる。朝、家を出る姿と、夕方に帰宅するのを。だからたぶん、四ノ宮の家の人は気付いていなかったと思う。
わたしたちは、そのことを先生にも四ノ宮の家の人にいわなかった。これもゲームなんだって。今度は四ノ宮からのゲーム。
学校に来たり来なかったりだったから、四ノ宮カレンダーなんてのがあった。長続きしなかったけどね。来た日はマル、いない日はバツ。法則が見つかるかもって。ね? 観察日記でしょ。けど、デタラメすぎて分かんなかった。その日の気分じゃんって結論でポイッよ。
ところが早計だっだんだな。法則は見つからなくても、続けていたらバツとマルが逆転してたのに直ぐに気付いたはずだった。
四ノ宮はだんだん変わって行った。いや、突然変わったことに気が付いたって感じだな。たぶん少しずつ変わって行ったんだと思うけど、単純に表面化しなかったから気付かなかっただけなのかもね。なんていうか、まつわりつく空気? ピリピリした感じで、なんとなしにみんな今まで以上に避けるようになった。近づくと危ないって感じた。目で見て分かるとかそういうもんじゃなくて、ほら、分かるでしょ、そういうの。そういう雰囲気。




