1(ちょっとしたゲーム)
ヒトミギリ
「始めはちょっとしたゲームだった」
姉は高校の制服、脱いだブレザーの肩を叩きながらいった。
「何の話?」
「中学になってまで集団下校してるかってこと」
こちらに顔も向けずにそれを寄越した。
「だって危ないじゃん?」
渡されたブレザーをハンガーに通してラックに引っかけてやると、姉はスカートのホックを外していた。「わたしの頃はなかったよ」
*
四ノ宮亜希子が見つかったのは、秋も終わりの終わりだったと思う。刈り入れの済んだ空っぽの田んぼに全裸でいたって話。わたしが中二だから、あんたは小四? 小三? 最初はほんと、ちょっとしたゲームだったんだ。安曇も柳も乗り気だったし。
それにしても今日は懐かしかったね。一年ぶりか。まるで同窓会みたいで。二年? そう? まぁいいや。三学期なんてイベント少ないし、春からは受験生だし、今のうちで良かったって。不謹慎? そうでもないかもよ。四ノ宮の家族もホッとしてんじゃないかな。だって二年だよ? 下に弟と妹がいたみたい。だったら余計じゃん? こういっちゃナンだけど、実際そうじゃん。違う?
四ノ宮ってのは、なんかこう、ひとをうんざりさせるところがあった。陰鬱? 根暗かな? まぁ、もともとぼっち気質だよな、大人しいし、つまらないし。いるだけで周りのテンション、下がる下がる。
確かに今さらいうことでもないね。でもさ、実際そうだったんだ。あんたのクラスにもいない? そういう子。ふぅん? 学年にひとりくらいはいるでしょ、そんな感じの浮いてる子。でもね、四ノ宮の場合はちょっち違う。
誰がいい出したか忘れたけど、四ノ宮は沈んでるんだって。浮いてるってのとは違う。それ聞いたとき、なんかミョーにしっくりきたね。上手いこというなぁって。ヒドイってあんたね、実際、四ノ宮のこと知ってたら納得するって。マジ、沈んでる。浮いてくるなー。沈んでろー。
そもそもイジメってのはね、相手が反応してナンボなんよ。これまたヒドイいい草なのは分かってる。でもそうでしょ。暖簾に腕押し糠に釘。そんなの相手にしても面白くないじゃん。物を隠したり、ワザとぶつかったり、小突いたり。いっときはけっこう頻繁にね。聞えるようにいじって笑いものにしたりさ、体育でボールの的にもしたなぁ。
でもそれだけ。問題にもならないんだな。堪えてるってワケでもないし、我慢でもない。やり返す気概もなくて、無気力でぼーっとしてて。なんだろうね、あれ。ぶっちゃけ気色悪い。泣くかヘラヘラ笑うとかであればいいのに、終始、薄ぼんやりしてるんじゃ誰だってバカらしく思うって。




