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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第五章 クランの争乱
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第95話 裏庭のお茶会。

 一角獣(ユニコーン)荷熊(キャリーベア)をホームの室内で飼う事は流石に難しい、という事になり白羽の矢が立ったのは今まで使っていなかったホーム裏手にある小さな庭の部分だった。


 小さな、と言ってもそれは厩舎を造るには十分な広さがあり、今は2体だけだけど、今居るクランメンバー全員が大型モンスターを捕獲(テイム)したとしても問題ない位だ。


 なのでクランメンバー全員の賛成の元に取りあえず後日この裏庭に厩舎を建築する事が決まり、それに先だって僕は折角綺麗な庭があるのだからと、そこでお茶会をする事を企画する事にした。


 まぁ『お茶会』と言ってもそんな大層なモノじゃなくて、『転職祭』でお世話になったソニアさんとタニアちゃん、あとアンクルさん達とシェンカさんを誘ってのんびりお茶でも飲んで貰えれば、と思ったのだ。

 結局南の海にも幻獣の森にも一緒に行けなかったし、街中なら少し位時間を作れないかなぁ……と思ったのだ。

 ホームの裏庭なら滅多に人も来ないし、テーブルを並べればちょっとしたカフェテラスのようになるからどうかなとお願いして、サラサラさんにお許しを貰えた。


 ただ少し気になる事がある為、ソニアさんには少し早めの時間にお願いし、シェンカさんには「アンクルさんと一緒に来てください」と追記しておいた。


 ふっふっふ、恋のキューピッド作戦は継続中なのだ。


 結果アンクルさんは忙しそうだったけど時間を作ってくれるとの事で、ソニアさん達も快諾してくれて、明日は裏庭を解放してのお茶会をする事となった。




 翌日、用事があってログイン出来ないというサラサラさんとルルイエさんとホノカちゃん。……ホノカちゃんは夏休みの宿題がそろそろヤバイらしい。マヤは大丈夫なんだろうか?

 僕は……そもそも宿題を受け取ってすら居ないし……うぅ、とりあえず考えない事にしよう。今はお茶会、うん。お茶会だ。


 コテツさんも今日は『転職祭』で忙しくて開けてなかった自分の露店を開くという事で外出し、残っているのはマヤとノワールさんだけになっている。


 僕はテーブルで待つ2人と一頭が見守る中、せっせとお茶会の準備を続けていた。 


「今日はお招き頂き、ありがとうございます」

「ありがとうございますー!」

「あ、いらっしゃいっ! どうぞ、入ってください」


 不意にかけられた声に僕は振り向いて笑顔で応えた。

 前もってメッセージで伝えておいた通り、直接裏庭に回ってきてくれたソニアさんとタニアちゃん。駆け寄って庭木戸を開けた僕に、もう一度頭を下げて中に入ってくる。


「ユウちゃんのお茶会だとお茶菓子もどうかと思ったから、これを持ってきたのだけど……使ってくれたら嬉しいな」

 と、ソニアさんが包みを手渡してくれた。

 中にはハチ蜜、あとミルクが入っているのが見える。


「ありがとうございますっ! 早速使わせて貰いますねっ」


 さすがソニアさんだ。僕主催のお茶会だからってお茶菓子を持ってきてくれても嬉しかったけど、こうした物も同じ位嬉しい。

 ふっふっふ、コレがあれば更に色々……夢が広がるねっ!


「それにしても、綺麗な庭ね。王都の中……それも貴族街でもないのにこんな場所があるなんて知らなかったわ」

 辺りを見回して呟くソニアさん。

「ありがとうございます。サラサラさんが『ホームを造るなら庭付き一戸建て!』って譲らなかったそうです」

「さすがにクランを立ち上げる人は剛毅なのね~」

 そう言って微笑むソニアさん。


 実際此処の裏庭は王都の中とは思えない作りだった。

 上手く緑を配しているからか、外界から隔離されていて、それでいて圧迫感がない。


 普段は洗濯物を干したり、マヤが素振りをしたりする位にしか使ってない場所だけど、厩舎を造ればそれがどうしても今の状態は無くなってしまうからその前にお茶会がしてみたかったのだ。




「それで……私に尋ねたい事って、言ってたけど、何の事かしら?」

 席まで案内して一息ついた所で、ソニアさんが小首をかしげて尋ねて来た。

 そうだった。その為に少し早めにソニアさんに来て貰ったんだった。


 僕は少し気持ちを整えてから、切り出した。

「あ、うん。えっと……冒険者ギルド職員のソニアさんに、ペットモンスターについて聞きたいんだけど……」

「あら、残念。ただの私の事を聞いてくれる訳じゃないんだ」

 悪戯ぽく笑うソニアさん。


「あ、いやっ! ソニアさんに興味が無いとかじゃないけどっ、そのっ、今はその話じゃにゃくてっ!?」

「冗談よ~」

 にこにこ笑うソニアさんと、釣られてにこにこしてるタニアちゃん。

 冗談だとわかっていても心臓に悪い。落ち着け僕、今日は大事な話なんだ。


「……って、見て貰った方が早いかな?……ヴァイス、出ておいでっ」


 僕が呼ぶと、ソニアさん達が来てから木陰に隠れていたヴァイスが姿を現した。

 釣られてヴァイスの方を見たソニアさんの目が丸くなり、タニアちゃんの目が輝く。


「えっと……ユウちゃん、もしかしてアレって……」

「ユニコーンさん?」

「はい、その……先日友達になって、付いて来ちゃって……」

「すごいっ! きれいですっ!」


 タニアちゃんに褒められて自慢げに一声嘶いたヴァイスは、僕の側までやってきてそのまま僕にすり寄った。


「はいそこっ! ヴァイスっ! 近寄りすぎよっ! ちゃんと馬と人の節度を守りなさいっ!」

「ヒヒーン」

「嫉妬じゃないって何度言えばわかるのよっ!」

「ブルルゥッ」


 途端に漫才を始めるマヤとヴァイス。

 ……本当にこの2人が一番仲が良いんじゃないだろうか?


 そんな2人の漫才を見て思考が追いついてきたのかソニアさんが大きく息を吐いた。

「ユウちゃんがどんなペットモンスターを連れてくるのかは楽しみにしてたけど、まさか神獣の一角獣(ユニコーン)だなんて、さすがねぇ」


「あ、ごめんなさい……その、ペットモンスターじゃないんです」

「え?」

「その……友達に首輪は付けられなくて……」


 申し訳なさそうに言う僕。当然っ、という顔をするヴァイス。

 そのヴァイスの首の辺りをソニアさんが見つめる。


「確かに『隷属の首輪』をしてないようね。……それを『冒険者ギルド職員』に聞きたかったのね」

「うん。このままヴァイスは街の中に居ても大丈夫……かな?」


 僕の質問に対し、腕を組み、顎に手を当てて暫し考え込むソニアさん。


 もしダメなら色々考えなきゃいけない事になる。……そもそも神獣とはいえ、制御されていないモンスターが街中に居るという事は不安を与えてもおかしくない。

 かといってこのまま隠し続けるというのも難しそうだし、ずっと厩舎の中で暮らすというのも可哀想だ。


 だからと言って正直今更ヴァイスと別れるというのも……その、嫌だ。でもヴァイスが危険な事になる位ならと思う気持ちもある。

 何か良い方法があれば良いんだけど……。


「いいんじゃない?」

「いいのっ!?」


 ソニアさんがあまりにあっさりOKを出したので驚いて聞き返してしまう。


「『神獣』ですもの。神様の御使いを厭う人は居ないわよ。逆に『神獣』をペット扱いしたり、無理強いをしたりする様を見られる方が問題かも?」

「そ、そんな事しないよっ!?」

「うん、なら問題ないわ。ユウちゃんがそんな事する訳ないしね」

 えらいえらいと頭を撫でるソニアさん。

 嬉しいけど……子供扱いはやはりちょっと気になる。


「でも、一応冒険者ギルドと神殿には『神獣』を保護している旨を出しときましょっか。厭う人は居なくても、御利益にあやかりたい人は居るかもしれないし、その方がトラブルは起こらないでしょうし」

「はい、お願いしますっ」


「ヴァイスさん……でしたっけ。貴女もそれで良い?」

「ブルゥッ」

 鷹揚に頷くヴァイス。あ、ちょっと神獣っぽい。


「良かったね、ヴァイス。一緒に居られるって」

 笑顔でヴァイスの首を撫でる僕に、ヴァイスも又嬉しそうに頭を僕に預けてくれた。

「ユウももう少し節度を持った方が良いわ。近すぎよ」

「いや、だから馬相手にマヤは何言ってるの!?」


 マヤに引っ張られてヴァイスとの抱擁は中断させられてしまった。

 そういえばマヤは昔も犬や猫を可愛がる僕に怒っていたっけ。ウチがペットを飼ってなかったのってマヤのせいなのかもしれない。




 でも、とりあえず心配事が解決して、僕の足取りは一気に軽くなった。

 手伝うというソニアさんとタニアちゃんを席に着かせて、紅茶を振る舞う。


 そして用意してあったパンケーキを生クリームと、ソニアさんが持ってきてくれたハチ蜜を添えてテーブルに並べて行った。


「わぁっ!」

 それを見たタニアちゃんの瞳が一気に輝く。

「いっぱいあるから沢山食べてね」

「うんっ! いただきますっ!」


 溢れる程の笑顔で頷くタニアちゃんがパンケーキを一口大に切り分けて口に運ぶ。

 その瞬間笑顔だったタニアちゃんの表情が蕩けて落ちた。

「おいしいっ!」


 すぐに二口目に手を伸ばし始めている。

 そんなに嬉しそうに食べて貰えると、見ているこっちも嬉しくなる。


「本当、美味しい。やっぱりユウちゃんの料理は最高ね~」

 自分の頬に手を当てて、タニアちゃん程ではないが表情を綻ばせるソニアさん。

「ソニアさんが持ってきてくれたハチミツとミルクのお陰です」

「そう言って貰えると嬉しいな」


 実際、二つともかなり良質な物だった。かなりお高かったんじゃないだろうか?


「冒険者ギルド職員にはそういう『コネ』もあるのよ~」

『内緒よ?』と言うように人差し指を口元にあててから、紅茶を口に運ぶソニアさん。

 その仕草が色っぽくて、ぐっとくる。


「生クリームも甘味を抑えているのね、美味しいわ」

「ユウ、おかわり」


 マヤとノワールさんは……うん、いつも通りだった。

 まぁ2人は今までにも朝食やおやつに僕のパンケーキ食べてるし、目新しさはないよね。


「ヒヒンッ」

「って、ヴァイスまで食べてるのっ!?」


 馬ってパンケーキ食べるんだ。知らなかった……。

「ヒヒン……?」

 寂しそうな顔をするヴァイス。

「あ、うん……別にダメって訳じゃないから、ね? いっぱい食べて良いよ?」

「ヒヒーン!」


 僕の許可を聞いて、嬉しそうにぺろりと又一枚食べた。まぁ、喜んで貰えてるなら何よりだけど……。

 馬がそんなに生クリーム食べて大丈夫なのかな……? 神獣だから大丈夫なんだろうか?






神獣だから大丈夫なんです。

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