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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第四章 転職祭
82/211

第79話 『銀の翼』VS『白薔薇騎士団』。

 二回戦第一試合『悠久』VS『まおまお』は『悠久』にしては時間をかけた戦いとなった。

 というのもクロノさんがあの黒いオーラを出していなかったのだ。


 普通の状態のクロノさんとシャーリーさんが突撃し、『まおまお』の前衛2人とぶつかる。

 あ、『まおまお』の前衛の人は一回戦で黒コゲになってたけどしっかりHPは回復してるみたい。やっぱり本戦ともなると優秀な回復手段が大会側で確保されてるのかな?


 一回戦と同じように『まおまお』の後衛の人は呪文詠唱に入り、前衛がその時間を稼ぐって作戦は変わらないみたいに見える。同様にグラスさんも後衛で呪文を詠唱しているっぽい。

 ……普段のクロノさんならその前衛を吹き飛ばして勝利出来そうなのに、どうして今回は相手の作戦に合わせる戦い方をしてるんだろう?

 グラスさんの魔法スキルに自信があるのかな?


 と見守っているとどうやら『まおまお』の詠唱が終了したらしく、一回戦と変わらぬ大火球が出現する。

 同時にバックステップで下がるクロノさんとシャーリーさん。お陰で『まおまお』の前衛の人達も一回戦みたいに魔法に巻き込まれないように下がる事が出来ている。


 ……んだけど、これって『まおまお』にとって楽な展開なんじゃ……。


「行けえっ!! 大爆火きゅファイア・エクスプ……

電撃球(スタンボール)。」


 大爆火球ファイア・エクスプロージョンが射出される瞬間、グラスさんが小さな電撃を打ち出し、それが『まおまお』の魔法師(マジシャン)に直撃。

 制御を離れたのかそのまま地面に落ちる大火球。


 一回戦と変わらぬ爆炎の固まりは『まおまお』の3人を飲み込み、『悠久』がノーダメージで決勝へと進んだ。


 殆ど『まおまお』の自爆状態で、正直観客の反応は微妙な感じだ。

 横にいるシルフィードさんも爆笑している。


「いやでも、今のは『悠久』の魔法師(マジシャン)君が凄いよ」

「そうなんですか?」

 僕も微妙な顔をしていたのか、ひとしきり笑ったシルフィードさんが解説をしてくれる。

「『電撃球(スタンボール)』が少しでも早ければ火球が落ちる事は無かったし、遅ければ射出された後になっていた。絶妙のタイミングでのカウンターだったんだよ。……戦い方を見るにはじめからソレを狙ってたっぽいしね」

「なるほどー」


 やはりグラスさんの魔法スキルを信頼しての戦い方だったようだ。

 あんな物凄い大魔法に対して小さなボール一個で迎撃とかは見た目には少しショボかったけど。




 そして二回戦第二試合、『銀の翼』VS『白薔薇騎士団』。

「って、この2チームがぶつかったら賭けって僕が不利じゃない!?」

「それは……最初からわかってた事だろう?」


 声を上げた僕に何を今更という感じで苦笑するシルフィードさん。

 確かにそうだけど……それに一回戦で負ける可能性もあったんだから、2チーム選んでた僕に全くメリットがなかった訳でもないけど……なんだろう、この納得の行かなさ。


「ほらほら、ユウ。第二試合始まるよ、どっちを応援するんだい?」

「え?! わっ、あ!」


 確かにもう既にマヤ達もアンクルさん達もリングに登場し、今まさに試合が開始されようとしていた。

 さっきの試合がアレだっただけに観客も今度こそはと期待と歓声が高まっている。


 けど……僕はどっちを応援したらいいんだろう?

 マヤ達はいつも一緒に居る仲間だし、アンクルさん達もいつもお世話になってるし……ど、どうしよう?


「それではぁ! 二回戦、第二試合ぃぃ! 『銀の翼』VS『白薔薇騎士団』んっ! 試合開始ぃぃ!!」


 空気を読んでくれないマイクマンが試合開始を告げた。


「どっ、どっちもがんばれーっ!!」

 慌てて僕も応援の声を上げたが、それは開始のゴングと歓声にかき消されてしまったようだった。

 隣で聞いていたシルフィードさんだけが苦笑をしているのが横目で見えたけど、今は試合に集中だ。


 ちなみに今回はマヤは落ち着いて長剣を構え、アンクルさんの出方を伺っている。

 さっきメッセージを送ったお陰でマヤも落ち着いたのかな?


「うぉぉぉぉぉっっ!!」

 対峙していたのは一瞬、真っ先に飛び出して行ったのはやはりコテツさんだった。

 いつもの大斧を振り回して嵐のように突撃していく。


窒息水球(ゼリーボール)

 それを見たダムさんが一回戦で見せたような水球を今度は複数作りだし、コテツさんに向かって飛ばした。

 が、その全てをノワールさんの矢が打ち落としていく。

「コテツの邪魔、させない」

 更にダムさんに向かって矢を打ち続けるノワールさん。矢を防ぐのに手一杯のダムさんは動きを封じられてしまった。

 その間に間合いを詰めたコテツさんがその勢いのままに大斧をアンクルさんに振り下ろす。


反強撃(カウンターバッシュ)っ!」

 しかしアンクルさんはコテツさんの攻撃に合わせてフランベルジュを煌めかせ、コテツさんを吹き飛ばした。


 ダメージを受けたコテツさんはしかしニヤリを笑ってアンクルさんを見つめる。

「さすがにやるねぇ。やっぱPVP(プレイヤーバトル)はこうじゃなきゃいけないよっ!」

「驚いたのは私の方ですよ。まさかあのタイミングの反強撃(カウンターバッシュ)をバックステップで

躱すなんて……」

鉄壁突撃(シールドチャージ)ぃっ!!」


 コテツさんとアンクルさんが強者同士の会話っぽい事をしてる所に盾を構えたマヤが突っ込んで来た。

 当然アンクルさんはソレを躱すが、表情を顰めている。

「会話中に攻撃とはやはり猪武者はマナーがなってませんな」

「戦闘中に悠長に会話してる方が悪いの、よっ!!」


 さらに長剣での連撃を繰り出すマヤ。がそれでもアンクルさんには届かない。


「なら私が参加してもいいわよねっ!!」

 マヤの練撃が途切れる瞬間、マヤに向かってグレートソードを振り下ろしながら突っ込んできたのはリリンさんだった。

 それを下がりながら盾で受け止めるマヤ。

「リリン君。騎士が不意打ちというのはあまり褒められた事ではないよ」

「既に試合が始まっている以上これは不意打ちではありません! そして騎士団長を守るのも我等の努めですっ!」

「ふむ、そう言われればそうかもしれない……か?」

「こっちは別に2対2でも構わないぜ?」


 推移を見守っていたコテツさんが楽しそうに大斧を担ぎ直す。

「先方もそう言っている事だし、お言葉に甘えさせて頂こうか」

 そう言ってフランベルジュを構え直すアンクルさん。

 何故かやたらと敵意剥き出しで睨み合っているマヤとリリンさん。


「いやっ! そっちだけで盛り上がってないで、俺の方にもヘルプお願いしたいんだけどっ!?」


 ノワールさんが作る弓矢の雨あられを必死で避け続けながら悲鳴のような声をダムさんが上げた。

 が、それは皆が無視して、2対2の戦闘が再開した。


 アンクルさんの戦い方はやはり従来通りのスピードを活かした連撃とカウンターが主体だ。そしてカウンターの際にどうしても出来てしまう隙をリリンさんが見事にフォローしている。

 又リリンさんだと防ぎきれない攻撃をアンクルさんの連撃で抑えてフォローしているように見える。


 一方マヤとコテツさんは……お互いが好き勝手攻撃してるように見える。うん。

 まぁ元々大斧を振り回すコテツさんと、盾を持って突っ込んだり、相手の大技を防ぐ事がメインなマヤはコンビを組む相性は良くないとはいえ……華麗な連携をしてるアンクルさんとリリンさんと見比べると哀しくなってくる。

 それでも互角な戦いなのはアンクルさんの決定力不足と、リリンさんが1人レベルが少し低めっぽいからだろうか?


「少し膠着してますね」

「ああ。これはこれで見応えがある試合ではあるが……」

 僕の呟きにシルフィードさんが答える。

 確かに一進一退の攻防は手に汗握るものがある。観客のボルテージも上がっている。


「しかし、この膠着はそれほど続かないだろう」

「? そうなんですか?」


 シルフィードさんの予想を聞いて改めて僕はリングを見る。皆体力にも余裕がありそうだし、決定打を見いだせずにいるように見えるけど……。


「あちらの弓手(アーチャー)と騎士の戦い、騎士が潰されるか矢が切れて勝敗が決すれば自ずとバランスが崩れるだろうからな」


 言われて見てみると確かにノワールさんとダムさんが横で戦っていた。

 ノワールさんは最初の雨のような連射は辞め、狙い澄ました一撃を打ち込んでいる。

 といっても騎士鎧のダムさんに遠距離からの弓矢の攻撃で致命傷(クリティカル)を与えるのは難しそうだ。

 逆にダムさんもそれ以上動けずにいる。

 けど……たしかにこちらの膠着の方が早く勝負がつきそうに見える。

 というか致命傷(クリティカル)とはいかないまでも、ダムさんのHPがある程度削られているのだ。


 ノワールさんの矢が尽きる所は見た事ないし、多分このままだとダムさんが最初に落ちるかもしれない。


「ええいっ! 埒があかないっ!! 団長っ! あとは任せましたっ!!」


 あ、先にリリンさんが切れた。

 マヤに向かって走り出すリリンさん。仕方なくアンクルさんはリリンさんの邪魔をさせないようにコテツさんに向かって連撃を打ち込んで進路を確保する。


「必殺っっ!! 超強撃(パワーバッシュ)っ!!」

「受けて立つわっ!! 盾強撃(シールドバッシュ)っ!!」


 リリンさんのグレードソードとマヤの盾が物凄い速度でぶつり、衝撃と閃光が交錯する。


「マヤっ!!」

 その衝撃の激しさに思わず僕は声を上げていた。


 と、僕の声が聞こえたのか、衝突の最中なのにマヤがこちらを見て目が合う。

 そして僕を見て驚愕の表情を浮かべるマヤ。


 いや、僕を見てない? 僕から視線が外れて横の方……シルフィードさんを見てる?


 と、よそ見をしているマヤはそのままリリンさんに吹き飛ばされてリングアウトして行った。


「…………あれ?」

 予想以上の手応えの無さに吹き飛ばした張本人のリリンさんが驚きの声をあげる。


 コテツさんとアンクルさんも何が起こったのかと不思議そうな顔をしている。

 まさかお互いの必殺技を打ち合った瞬間にマヤがよそ見をして吹き飛ばされました。とか予想できまい。


「……あー……コテツ殿、これで3対2になるが、続けますかな?」

「あ、ああ。なんかマヤのアレで気が抜けちまったし、このままあっちの兄ちゃんの魔法を絡められたらさすがにアタシでもきつい。アンタとはいつでもやれるから今回はもういい……かな?」


 そう言いつつコテツさんが構えを解き、それを見てノワールさんが弓を収めた。

 こうして白薔薇騎士団が決勝へと駒を進めた。



「えーと……ユウ? さっき彼女、こっちを見てなかったかい?」

「た、多分……見てた……ような?」

「やはり気のせいじゃなかったのか……」

 シルフィードさんも自分が見た物が信じられないようだ。僕も未だに信じられない。

 マヤは一体何を見てあんな動揺してたんだろう?


 こうして良くわからない幕切れだったけど、決勝は『悠久』VS『白薔薇騎士団』となった。







  

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