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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第四章 転職祭
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第68話 最後尾はあちらです。

「思ったより早く終わったし、これならお昼時に間に合うかな? どこかでソニアさんとタニアちゃんにお昼買って行った方が良いかなぁ……?」


 1人呟きつつ僕は露店に帰る道を急いでいた。

 食べ物はホットドッグが売るほどあるけど、でもずっと見てた料理をお昼も食べるって嫌かもしれないし何処か良いお店はないかな?


 そう思いながら辺りを見回すと、行きには気付かなかった行列らしきものが目に付いた。

 しかも凄く長くて先頭が見えない。


「えっと、すみません、これって何の行列でしょう?」

 とりあえず最後尾の人に聞いてみる。

「おん? あぁ、なんでも『料理コンテスト』で現時点最高点叩き出した料理人の露店らしいぜ? すげー美味いらしい」

「そうなんですかぁ……ありがとうございます」


 最高点ってすごいなぁ……僕も食べてみたいし、ソニアさんやタニアちゃんへのお土産にも良いかもしれないけど……この行列に並んでたら凄く時間かかって本末転倒かな?

 残念だけど次の機会にしよう。


 そう思って行列には並ばず帰る事にする。他の露店で何か買おうと思っていたのだけど、行列が通りの真ん中に伸びている為、反対側の露店が見えずコレといった物が見あたらない。

 自分の露店が見えてきた時、行列もそこで途切れているのが見えた。


「……あれ?」

「あ、ユウさん! おかえりなさいっ! 早くっ! 手伝って下さいっ!」

「えっ? わっ! は、はひっ!?」


 僕の姿を確認したタニアちゃんが慌てて僕を呼び戻す。

 反射的に返事をして僕は露店内に走り込んだ。


「あ、えっと、これは? 僕が居ない間に何かあったんですか?」

 ソニアさんと調理を代わりながら質問する。

「何かって……ユウちゃんが何かしたんでしょ?」

「僕は何もしてないけど……あ」


 そういえばさっき最後尾に居た人が「料理コンテストで最高点」って言ってたっけ?

 あれ? 僕の料理最高点だったの? 審査員3人とも怖い顔してたし、ただ合格貰っただけの筈なのに……?


「……思い当たる節があるようね。ついさっきから突然お客が増えだして、こんな風になっちゃったの」

「ごめんなさい……」


 まさか料理コンテストに出ただけでこんな大事になるなんて……ただでさえソニアさんとタニアちゃんには折角のお祭りで手伝って貰ってるのに……。

「あ、ダメって訳じゃないのよっ? お客が多いのは良い事だし、一緒にぱぱっと売り切っちゃいましょうっ!」

「う、うん。 そうだよね、うん、がんばりますっ!」


 そうだよ。折角お客さんが来てくれてるんだから、いっぱい買って貰って、早く売り切れればソニアさん達も午後は自由になるじゃないかっ! よしっ! それでいこうっ!


 そう思った瞬間、受付側から大きな音とタニアちゃんの悲鳴が聞こえた。




「だぁからぁ! 金は払うっつってんだろぉ? んで今ある在庫全部売ってくれって、ただそれだけの事を頼んでんだよ」

「そ、そんな、他にも並んでるお客様居ますから……」

「関係ねーじゃん? 俺等が先に並んでたんだから、俺等が先に買う。それで売り切れるのは後ろの奴等が遅かっただけ、って事だろぉ?」


 スパイクの付いた金属鎧にモヒカンの男達3人組がタニアちゃんに絡んでいた。

 ……あんな格好の人って本当に居るんだ……プレイヤー……なんだろうなぁ……。


 そのあまりに出来すぎた外見に一瞬目を奪われてしまったけど、タニアちゃんのピンチに我に返る。

 こういう時こそ、たった1人の男手である僕が前に出なきゃっ!


「う、うちの店員に何か御用ですかっ!?」

 カウンターを飛び出してモヒカン達とタニアちゃんの間に割って入り、啖呵を切って睨み付ける。

「あぁん? なんだ手前ぇは?」

「ぼ、僕はこの店の店主ですっ!」


 外に出て相対するとモヒカン達の圧力が物凄かった。身長2メートル以上あるんじゃないだろうか? 殆どオークだ。僕との身長差で真上を見上げてるような状態になってしまった。

 でも此処で僕が踏ん張らないとタニアちゃんやソニアさんに危険が及び兼ねない。


「店主なら話が早ぇや。今残ってる在庫を全部売ってくれ。金ならあるからよ」

「お、お断りします」

「あぁ?」


 物凄い怖い顔で睨んでくるモヒカン。この距離であの太い腕を振り下ろされたらぺしゃんこになってしまうかもしれない。

 それでも此処で引く訳にはいかない。


「い、いっぱい並んでくれてるお客さんが居るし、ひっ、1人の人に全部売るなんて、できませんっ!」

「うるせぇなぁ! ごちゃごちゃ言わずに売れば良いんだよっ!!」

 そう言ってモヒカンは振り上げた腕を僕に向かって勢いよく振り下ろした。


「ユウさんっ!!」

 タニアちゃんの悲鳴が聞こえる。

 僕に向かってくる腕も僕には見えていた。けど、加速(アジリティアップ)をかけていない僕の身体じゃ回避が間に合わない。

 慌てて防護印(プロテクション)を唱えながら衝撃に備えて目を瞑った。

 そしてぶつかる豪腕。


 が、防護印(プロテクション)が割れる音は聞こえてこなかった。


「天下の往来で幼気な少女に乱暴を振るうようなプレイヤーがまだ居ると驚きだ」


 聞き覚えのない声に恐る恐る目を開けると、目の前で真っ黒な全身鎧を着た男性がモヒカンの腕を掴んでいた。フルフェイスの兜で顔も見えないから、モヒカンとは違った意味で悪役っぽい。


「なっ、なんだ手前ぇ?!」

「ただの通りすがりだよ。そして見過ごせなかったから介入しただけだ。」

「うっ、うるせぇ部外者は黙ってろっ!!」


 モヒカンは叫びながら掴まれた手を振り解こうとするが、掴まれたまま動く事が出来ないようだった。


「部外者、そうだねぇ……でも、君達も『PVP(プレイヤーバトル)トーナメント』の参加者でしょ? なら、勝負を挑まれたら断れないよね?」

 いつの間に居たのか、全身黒鎧の男性の影からメガネをかけた軽装の男性が笑顔でモヒカン達に告げる。

「……俺はそんなつもりでは」

「いーのいーの。こういう手合いはしっかり力を見せつけた方が後腐れないんだから」

 抗議の声を挙げる黒鎧さんの肩をぽんぽんと叩きながら女性が答える。

 この人も黒鎧さんの仲間なんだろうか? 軽装……というかビキニみたいな鎧で綺麗な身体を隠してない所かむしろ強調してる格好で、背中に巨大な両手剣を持っている。……コテツさんと同じようなタイプなのかな?


「おおぅ? やるってんならやってやるよっ! 後悔すんなよぉっ!?」

 馬鹿にされたと思ったモヒカン達が挑戦を受けてPVP(プレイヤーバトル)フィールドが発生した。




「大丈夫だったか?」

「あ、ひゃいっ?! あ、たた助けて頂いてて、 あ、ありがとうごいざましゅたっ!」


 真っ黒フルフェイス全身鎧という外見からは想像出来ない位優しい声で語りかけてくる男性に慌てて僕は頭を下げた。


 PVP(プレイヤーバトル)フィールドは一瞬で解除されていた。

 始まった瞬間、黒い全身鎧から真っ黒いオーラが吹き出たかと思ったら突進する男性に切り倒されて吹き飛ばされてモヒカン達のHPは0になっていた。

 激しいながらも正確な動きはまるでアンクルさんとコテツさんを足したような凄さだった。


「助けになったなら何よりだ。諫めるつもりが俺達が騒がしてしまって申し訳ない」

「い、いえ! 本当に助かりましたから、ありがとうございますっ!!」

 見た目と違って誠実な人なんだろう、その姿は微笑ましくて、さっきまでの喧噪を忘れてつい口元が綻んでしまう。

 素顔を隠して困っている人を助ける黒い戦士。うん、そういうのも格好いいな! 僕もこういう前衛職になれたら良かったのになぁ。


「おや? クロノ君はまたナンパしてるのかい?」

「ちっ違っ」

 メガネさんがニヤニヤ笑いながら黒鎧……クロノさん? に声をかけた。

「シャイで兜も外せないクロノ君にナンパなんて無理よね~。初めましてー、私はシャーリー。此処で逢ったのも何かの縁だし、よろしくね、ユウちゃん」

 そう言って女性戦士……シャーリーさんが僕に抱きついて来た。

 たゆんとした感触に包まれて気持ちいいけど、これは……覚えがある! 危険な感触だっ!

 助けて貰った直後にこの感触に身を任せるのは危険すぎるっ!?

 それに……


「わっ! と、ちょっ、離してっ! それにっ、な、何で僕の名前をっ!?」

「ん~予想通り良い抱き心地~! ……ん? 名前? そっちの犬娘ちゃんがさっき叫んでたじゃない」


 見ると展開について行けてないタニアちゃんがあわあわしていた。

 そういえば殴られそうになった時名前を叫んでたっけ。

 そして離してくれないシャーリーさん。


「それだけではないですけどね。私の名前はグラス。さっきから言ってますが黒騎士は私達のリーダーでクロノと言います。」


 シャーリーさんの行動をスルーしてメガネさん……グラスさんが自己紹介をし、クロノさんもそれに倣うように頭を下げてくれた。

 んだけど、とりあえずシャーリーさんから助けてください。

 じたばたしながらヘルプの視線を2人に送る。


「種明かしをすると、私達も『料理コンテスト』のランキングを見て、一位のユウさんの料理を食べに来たんですよ」

 僕の視線もスルーしてにこやかに説明してくれるグラスさん。

 いつもの事なのか助けてくれる気は全くないらしい。

 クロノさんは何かモゴモゴ言ってるけど、シャーリーさんは全く取り合ってないし。


「あ、そうだったんですか。えっと……でも、普通のホットドッグだけど……」

 いやもう普通じゃないのかな?

 ギルドマスターさん達が『幻の調味料』とか叫んでいたし……あんまり認めたくないけど、そういう事なんだろうし……。


「料理店の謙遜はよくないですよ? ……ちなみに今回の騒動の発端ですが、販売個数制限等はありますかね?」


 グラスさんの質問にソニアさんの方を見る。

 ソニアさんは目線とジェスチャーで『ユウちゃんの好きなように』と言っていた。


 確かに個数制限とかは相談してなかったけど……どうしよう?

 確か料理コンテストに行く前には1000個以上あったし、並んでる人は100人は居ないだろうし……。


「…………ひ、ひとり……10個まで?」


 さすがに1人でそんなに食べる人は居ないとは思うけど、少し多めに設定してみる。

 アイテムウィンドウに入れておけば劣化もしないから、多めに買う人も居るかもしれないし、沢山買ってくれるのも嬉しい。

 それにもし全員が10個づつ買っても今並んでる人の分は確保出来るはずだしね、うん。


「じゃあ私達の分も、1人10個づつよろしくお願いします」

「ユウちゃんの料理楽しみ~」

「……宜しく頼む」


 ……クロノさん達は本当に全員10個づつの注文だった。

 『銀の翼』でも思った事だけど……プレイヤーって大食らいな人が多いんだろうか……?





見返してみて交戦時のユウが噛んでるのがやりすぎたと思ったのでこっそり修正

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