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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第一章 始まりの王国
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第6話 王都テランの高級ホテル。

 森を抜け、平野の街道を暫く歩くと見えてきた城塞、ここがテラ王国の王都テランだそうだ。

 通常プレイヤーがログインして最初に降り立つゲーム開始地点、他にもいくつかの国があるそうだけど現状公開されているのはテラ王国だけだから殆どのプレイヤーはこの王都に集まっているらしい。

 中世ヨーロッパ風の頑丈そうな石造りの外壁がどんどん近づいてくる様は不思議な感動がある。


 初めて見た感想としては「でかい」だろうか。これだけでかければ恐竜が襲ってきても大丈夫に見える。セカンドアースに恐竜が居るかは知らないけど。多分ドラゴンは居るに違いない。というか居て欲しい。戦いたくないけど。


 城塞前の普通の平野にモンスターが居たり、それと戦うプレイヤー?が居たりするのはMMOって感じがしてワクワクする。

 時々負けたプレイヤーが倒れ、当たり前のように光となって消えたりしてるのを見ると「あぁやっぱり僕以外の人は痛みも大してないし、死んでも大丈夫なんだろうな」と実感もした。

 それでも他のプレイヤーや人工物がいっぱいというだけで、森の中に1人だった時より心強い。


 うん! ここから僕の冒険は始まるんだ!!


 と意気込んでる横でモンスターが光となって消えた。

 僕達に向かってきたモンスターはマヤが一振りで倒してしまった。

 本当にマヤは強いなぁ……僕もファイターになってたらあんな風にできたのかなぁ……。


 そんな風に考えている間に城門をくぐる事が出来た。と同時に何か空気が変わるのを感じる。

 まず人が多い、大通りなんだろうけど露店と人で溢れている。これは全員プレイヤーなんだろうか? 老若男女問わず、種族も人間、エルフ、ドワーフ、あれはホビット? 更には獣耳を付けてる人もいる。


 すごい! すごいぞセカンドアース! 僕はこういう所に来たかったんだっ!!


「ユウ? そんな所に立ち止まっていると通行の邪魔だし迷子になるよ?」

「こ、子供じゃないんだから、迷子になんてならないよ!?」


 これぞファンタジーの街並み! という光景に目を奪われて少しトリップしてらしく、前を行くマヤと少し距離が空いてしまっていた。気恥ずかしくて小走りで隣まで進む。

 今の僕はマヤに比べても少し小さいし初心者ローブも少し大きいからどうしても、てってってっ、という感じの歩き方になってしまう。


 と、ふと何か視線を感じて立ち止まった。

 辺りを見回しても特に何もない。気のせいかな?


 てってってって…ぞくりっ


 きょろきょろ


 ???


「ねぇマヤ……なんか……誰かに見られてない?」

「そんな訳ないでしょ。ユウは確かに今、特殊なログイン状態で過敏になってるかもしれないけど、そんな事を知ってる人は私以外居ないんだし、自意識過剰」

「そっか、そう……だよね」


 リアルでも誰かに見られてるような気がした事はよくあったけどいつも気のせいだったし、これも気のせいなんだろう、うん。

 でも不安だからついついマヤのマントの裾を掴んで歩く。


 なんだろう、視線の数が増えたように感じる……。

 やっぱり自意識過剰なんだろうか?


「もしくは私みたいな美人が歩いてるから皆の注目を浴びてるのかも?」

「それはないな」

 マヤは可愛いとは思うけど美人ではないし。

 今度は気のせいではなく間違いなくジト目のマヤの視線が僕に向けられている。

 これはこれで怖い。話題を変えないと命に関わる。


「そ、それでこれからどうする?」 

「どうするって…まずはホームを設定しないと」

「ホーム?」

「そ、今のままじゃ最悪何かのタイミングで森の中に出現とかかもしれないんでしょ? ちゃんと宿屋に設定しなおさないと危ないじゃない」

「そ、そっか。どうやればいいの?」

「宿屋にチェックインするだけで大丈夫。そうすれば部屋を借りてる間はその部屋がホーム設定になるの」

 なるほど、そうやってセーブポイントを設定するのか。そこまでは説明書に書いてなかった……のかな? 全然覚えてないや。


「あ、でも僕お金持ってないけどどうしよう……」

 システムウィンドウの所持金の欄は『0E』の文字が輝いている。多分『E』が通貨単位なんじゃないかと思う。拾ったアイテムとかも無い。

「馬小屋とか軒下とか貸して貰えるないのかな……それでなんとか……いやでも宿屋の人にそんな迷惑かけられないし、いっそどこかのベンチで……んにゃっ!?」

 所持金0Eでの宿泊方法を模索していると頭頂部に激痛が走る。

 涙目で見上げるとマヤが呆れた顔で僕の頭から手をどけた。人が考え事をしてる時にチョップだなんて酷い。HPは減ってないけど即治癒(ヒール)だ。


「ユウみたいな可愛い子が野宿なんてしたら3分で野獣に食べられちゃうわ。最初の宿屋代位貸してあげるから、変な事考えないの」

「可愛い言うな!! 王都に野獣ってそんな治安の悪い街なの!? そしてありがとう!!」

 本当はお金の貸し借りとかよくないけど、今の僕はそんな事言ってられない。宿代にしてもそんな無茶な金額設定じゃないだろうし、がんばって返そう、うん。


 しばらく中央通りを歩き、通行人の雰囲気も少し変わってきたように感じた辺りで通りに面した、テレビでしか見た事のないような物凄く豪華な作りの建物に入っていくマヤ。

 真っ赤な絨毯敷いてあるんだけど歩いていいの? あ、壁に星が五つ書いてある。アレってすごいホテルって意味じゃなかったっけ……?

 おっかなびっくりついていくと内装もすごかった。シャンデリアって初めて見た。アレが落ちてきたら痛そう。

 でも此処ってすごく高いんじゃ……。


 挙動不審になりながらマヤの所まで行くと一週間分の手続きと支払いを済ませてくれているようだった。

「それではシングルで一泊お一人様5万アース、一週間で35万アースになります。」


 通貨単位は『アース』なのかな? 『E』はアースの略か。高いのか安いのか全然わからないけど。


「はい、ではカードで。宿泊はパーティメンバーの『ユウ』が。ユウ、了承を」

「あ、うん!」

 目の間にに表れたホーム設定ウィンドウの『YES』を選択する。

 支払いの方もウィンドウで操作しているのか実際の現金のやりとりなく処理が完了したっぽい。でも……。


「おひとりさま?」

「私は自分のクランにホームがあるから泊まる必要ないわ。……それともユウは私と一夜を共にしたかった?」

「いや、幼馴染みで此処がゲームとはいえ流石に高校生になってそういうのはダメでしょ」

「そう言うと思った」

 親しき仲にも礼儀あり、なのだ。


 それもだけどもう一つの懸案……。

「1人で泊まるのは良いんだけど……ここって高いんじゃないの?さっき一泊5万アースとか言ってたけどそれくらいが相場なの?」

「もっと格安の宿もあるけどね。そういう所は初心者が占拠しちゃってるから後発のユウが長期泊まれる場所は殆ど残ってないの」


 そうなのか…なければ仕方ないのかな?

 さっき大通りに溢れていた人が皆宿に帰ってくるんだとしたら納得かなぁ……でもやっぱり高い宿だったんだ。これはがんばって借金返済しないと。


「じゃ、次は武器ね。初期費用は全部貸したげるから気にしないように! で、侍祭(アコライト)だと鈍器が良いかな?」

「あ、うん、ありがと。多分それが……」


 ぐるるるるるるるる~


「「…………」」


 こほん

「それが良いと思う。杖でも良いかもだけど……」


 ぐるんっぐるんっぐるんっ


「「…………………」」


 ええい、うるさい、だまれ僕のストマック。高校生にもなって恥ずかしいっ!!

 あ、そういえばセカンドアースに来てから何も食べてないからお腹が減って当然……なのか? でもお金ないし此処は我慢だ。侍祭(アコライト)は食わねど高楊枝!!


「とりあえず食事にしよっか。セカンドアースは『空腹値』も設定されてるから、我慢しても良い事ないし、最悪倒れるよ?」


 ありがとうございます。 衣食足りて礼節を知る、と言うしね!!

 でも折衷として飲食店ではなく露店で装備を見ながら食事もする事になった。




 再び大通りの露店街に戻ってくる。やはり活気があって良いなぁ…五月蠅く感じる人も居るかもしれないけど、こうして人がいっぱい居る方がMMOって感じがする。


 ざわざわ……


 (おい、またあの美少女が歩いてるぞ)

 (しかしこのゲーム小学生がプレイなんて出来たか?)

 (さすがに違うだろ、確かに小学生にしか見えないが)

 (サイズの合ってない初心者ローブなのが又良いな)


 はて? 又何処からか視線を感じる気がするけど……開始一週間も過ぎてると初心者は珍しいのかな?


 いやいやマヤの言う通り気のせいだろう、初心者なんて何処にでも居るはず。僕なんかが注目される理由がない。自意識過剰なんて恥ずかしすぎる……。

 でも自意識過剰だと思われても見られてるような感じがするのは恥ずかしくて、つい赤面してしまう。

 又、前を行くマヤのマントの裾を掴ませて貰おう。何かを掴んでると何故か安心するよね。


 (おいおい、あの子真っ赤になってるぞ)

 (更に前を行く女戦士のマントを掴んでもじもじしてる!?)

 (わざとやってるなら大したもんだ…)

 (違うだろ、耳まで赤くなってるし。これはSSを撮りまくらねば)

 (美少女収集スレが盛り上がる事間違いないな)


 ……ざわざわざわ……


 なんだか視線が増えたような気がする……。きのせいきのせい…まわりはカボチャ、まわりはキャベツ、まわりは――


「んぶっ!!」


 自意識過剰とわかっていてもついつい俯きながら歩いていて気付かず、立ち止まったマヤにぶつかってしまった。

「何をしてるのユウ?」

「な、なんでもないでしゅよ?」


 噛んだ。恥ずかしい。誤魔化すように僕はローブを数回はたいて埃を払う振りをした。

勿論自意識過剰ではなく見られてます。

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