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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第三章 楽しいクランの入り方
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第48話 加入条件。

 結局僕達は1Fのリビングフロアに移動する事になった。

 通常一般的にはクランリーダーの執務室でこういうった話は行われるのが普通なのだそうだけど、あの惨状ではまともに話が出来ない、という事だった。

 確かに少し触れれば色んな物が倒れてきそうなあの部屋に入るのは少し怖かった。


「改めて自己紹介するわね~。私の名前はサラサラ。一応このクラン『銀の翼』のリーダーをさせて貰ってるの~」


 ぺこりと頭を下げて名乗るサラサラさん。慌てて僕も頭を下げる。

 そんな僕を見て、サラサラさんはくすりと笑った。

「そんな畏まらなくて良いわよ~? リーダーなんて言っても、ただ最初にクランを作っただけで、偉くもなんともないしね~?」

「そうそう、こいつ程働かないリーダーは居ないしな」

 横に座っていたコテツさんがニヤニヤ笑いながら続く。

「あ~、コテツちゃんひどい~。私だって、やる時はやる女よ~?」

 頬を膨らませてサラサラさんは抗議するがコテツさんは気にしてないようだ。


「で、それは何時なんだよ?」

「いつやるかって……それは~……いつかよ?」


 こてんと首をかしげるサラサラさん。

 おっとりした大人の女性って雰囲気のサラサラさんなのに、子供っぽい仕草が似合っていて可愛い。なんだこれ?


「リーダー。ユウが呆れてますよ」

 いや、呆れていた訳ではないんだけど……でも促してくれたマヤの言葉でサラサラさんが僕の方に視線を戻してくれた。

「そうだったわね。ごめんね~? あ、でもマヤちゃん、私の事はサラサラって呼んでって言ってるでしょ~?」

「一応リーダーはリーダーですから」

「マヤちゃんのいけずぅ……と、今はユウ君だったわね~? 今まで支援職は私しか居なくて大変だったから助かるわぁ……ほら、コテツちゃんもマヤちゃんも猪突猛進! って感じでしょ~?」


 にこにこと何気に酷い事を言うサラサラさん。いや、間違ってないとは思うけど……でも前衛職なんだから猪突猛進でも仕方ないんじゃないかなぁ……あ、でもと言う事は


「という事はサラサラさんは侍祭(アコライト)なんですか?」

 そういえば確かにサラサラさんの服装って修道服で見るからにシスターって感じだ。僕なんかよりよっぽど侍祭(アコライト)っぽいかもしれない。

「んーん。残念ながら違うわ~」


 違ったららしい。僕以外の侍祭(アコライト)って初めて見たからちょっと期待しすぎちゃったみたいだ。残念……。

 でもという事はこの修道服はファッションで着てるのかな?

 実際よく似合ってるから何の問題もないけど。


「ふふふ~、そんながっかりしなくても良いのよ? 私の職業は侍祭(アコライト)じゃなくて僧兵(モンク)なの。戦士(ファイター)侍祭(アコライト)の中間みたいな職業ね」

「ももも、僧兵(モンク)なんですかっ!? って事は近接戦闘も支援魔法も出来るるんれすよね!!」

「ええ、といってもどちらも専門職には当然劣るけどね~」

 にこやかに答えてくれるサラサラさん。


 侍祭(アコライト)に会えなかったのは残念だったけど、ずっと憧れていた『守って戦える戦闘神官』である僧兵(モンク)がついに目の前に居るなんてっ!

 そうか、僕が目指すべき職業の名前は僧兵(モンク)だったんだ!!


「そのっ、えっとっ、やっぱり武器は鈍器なんですか?」

「ふふ、そうね~。私はコテツちゃんが造ってくれた戦棍(メイス)と盾を持ったオーソドックスなスタイルね~。……ユウ君は僧兵(モンク)の戦い方に興味があるのかな~?」

「は、はひっ!」

 しまった。どうやら僕が僧兵(モンク)に興味津々な事がバレてしまっていたようだ。

 よく見るとコテツさんとルルイエさんが生暖かい目で、マヤが冷たい目で僕を見ている。

 ノワールさんはいつも通りの無表情だった。

 

 いけない、落ち着こう。女性に対してがっついた印象を持たれるのはよくないって何かで読んだ気がする。

 うん、大丈夫。くーるだうん、くーるだうん。




「とりあえず……侍祭(アコライト)僧兵(モンク)については後日という事で、今日はユウのクラン加入について話したいんですが……リーダー宜しいですか?」

「ええ~、いいわよ~?」

 僕が自分を落ち着かせてる間にマヤが話を戻してくれた。ありがとうマヤ。


「ただ……その前に聞いて欲しい事があります」


 そう言って僕に視線を送るマヤ。

 それは『僕の事』を話すという意思表示だった。これからお世話になるかもしれない相手、しかも何かしらに巻き込んじゃうかもしれないのだから、ちゃんと言った方が良い。

 アンクルさん達にもいつかちゃんと言いたいけど……言う事で相手に迷惑になったりもしそうだし、難しいのかな……。


 僕は小さく咳払いをして、呼吸を落ち着かせた。

「その……信じて貰えるかわからないんだけど……今、僕ってログアウト不能……っていうかそもそもログアウトやGMコールって言ったシステムの表示すら出ない状態になってて、ずっとゲームの中に閉じこめられている……んです」

「あらまぁ……」

「何だそりゃ、そんな話聞いた事ないぜ?」

 口に手をあてて驚くサラサラさんと、訝しげな表情のコテツさん。

「私も聞いた事ないし、ユウから聞いた後、自分でも調べてみたけどそんな話は見あたらなかったわ」

 コテツさんの問いに答えるマヤ。それに対してルルイエさんが更に口を開く。


「ログアウト不能って、リアルの方はどうなってるん? ゲームしたまま何日も目覚めへんかったら、まわりが騒ぐやろ?」

「リアルのユウはゲーム開始の一週間前から『行方不明』よ。当時ご両親は不在だったから、何が起こったかも不明なの」

「勿論僕自身何があったのかわからなくて、気付いたら『セカンドアース』に居たんです」

「まるで都市伝説やね」


 昼間1人でMMOを遊んでいた少年が忽然と姿を消して、ゲーム世界を彷徨っている。たしかに出来の悪い怪談話か都市伝説の類にしか聞こえない。


「だ、大丈夫なのかよ?」

「その……すみません、自分でもわからないです」

 心配してくれるコテツさんには申し訳ないけど、自分でもわからないからそうとしか言えなかった。


「他に何かわかった事はあるの~?」

 顎に手をあてて首を傾げながら呟くサラサラさん。

「あ、えっと……あとは……このアバターの外見はリアルの僕と大差ないけど、ステータスは自分で設定したものじゃない、とか……あとは……何故か普通に『痛み』とかも感じるみたいで……もしかしたらゲームの中で死んだら本当に死んじゃうのかも……とか?」


「って、大丈夫じゃねーじゃねーかっ!!」

 怖い顔になったコテツさんが僕を掴み抱き寄せる。


「ユウ、お前結構無茶してたよなっ! アレでお前死んでたかも知れないってマジかっ!? わかってて巨大熊(ジャイアントベア)やオークキングの前に飛び出してってたのかよっ?!」

 強い力で僕を揺さぶりながら問いかけるコテツさん。答えたいんだけど、その力が強くて、頭が揺れるぅ。 

「こ、コテツさんっ……痛いっ、はなっ……って」


 ふと我に返り、手を離すコテツさん。

「す、すまん」


「けほっ……だ、大丈夫です。HPも減ってない……です。それに、心配して貰えるって、嬉しいし。ありがとう、コテツさん」

「ありがとう、じゃねーよ」

 小声でそっぽ向くコテツさん。


 でも僕は実際嬉しかった。

 信じて貰えるかもわからない話なのに、本気で心配してくれてるのがわかったから。


「なるほど~『痛み』って話も本当みたいね~。……という事はユウ君は、リアルで行方不明になって、気付いたらゲームにログインし続けてる状態で~、痛覚が有効になっていて~、死の可能性がある、と……ふむふむ~……」

 いつの間にか鹿撃帽をかぶり、パイプをくわえたサララサさんが楽しそうに呟く。


「そんな状態のユウ君が『銀の翼』に入るって事は~、『銀の翼』としてはユウ君がたった一度も死なないようにフォローする必要がある、って事ね~?」

「はい、そうお願いしたくて、クラン加入前にお話しました。私1人では守りきれないと思ったので」

 サラサラさんの問いにマヤが答える。

 僕としては自分の問題だしそこまででなくても良いと思うけど……でも目の前で人に死なれたらと思うと、そういう事なのかもしれないのかな?


「そもそもユウは外に出ない方が良いんじゃねーか?その方が安全だろ?」

「そうとも限らないわ~。『なんでも出来る』のが売りの『セカンドアース』で生き残るのにはレベル上げは不可欠だと思うし~。 まぁ聞いたような無茶な戦いをするのは関心しないけど~?」

 コテツさんの問いにサラサラさんが答える。

 それは昔マヤが言っていた話と一致する内容だった。確かに無茶をしたのも事実だけど、レベル上げをがんばってなければ僕はとっくに何度も死んでたと思う。


「まぁでも、そんな事は大した事じゃないわ~。『銀の翼』の加入条件はたった一つですもの」

 人差し指を立てて自分の口元に寄せ、そう言葉を続けるサラサラさん。


「『現メンバー全員の賛成を持って加入許可とする』よ。と言っても……まだ全メンバー揃ってないし、議決は又揃った時にしましょうか。ごめんね、ユウ君」

 その人差し指を僕の唇にあてて、サラサラさんはそう言った。

「あ、いえ、僕の方こそ突然おしかけて、ごめんなさい」

「ふふ、礼儀正しいな子は好きよ~?」


「じゃあこの後どうするんだ?」

「そうね~、ホノカちゃんもうすぐログインするでしょうし、それまでお茶でもしましょう~」


 ぽんと手を叩いてティーセットを取り出すサラサラさんを見てやっと僕は思い出した。

 慌ててクッキー詰め合わせを取り出し、サラサラさんに渡す。


 それを見て一番嬉しそうな顔をしていたのはノワールさんだった。




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