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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第二章 一人ぼっちの冒険者
42/211

第41話 60秒の攻防。

 さっきまでとは逆で岩壁を背にして、後ろにマヤが、前に僕が立ち、そしてその前に立ちふさがるのがオークキングという位置関係になった。

 そして僕の身長だとどうしても見上げる形になるオークキング。


 見上げてるから言うんじゃないけどでかい。身長は僕の2倍以上あるんじゃないだろうか?

 大きいって事はそれだけで圧迫感がすごい。

 子供だったら間違いなく出会っただけで泣くと思う。というか僕が既に涙目になってる!


 離れていても怖いとは思っていたけど近づいたら威圧感が凄すぎる。

 こんな化け物とマヤはさっきまで戦ってたの!? いやモンスターだけどさ……マヤもモンスターって事かな……うん、それが一番納得出来る。


 そしてそのモンスターを守る為に僕はこのモンスターを相手しなきゃならない。

 やばい足が震える。


 こんな事ならゴブリンだけじゃなくてせめて普通のオークとも戦わせて貰っておくべきだった……。


 って後悔しても始まらない。今ある経験と手札でなんとか……


「グァウッ!!」


 策をめぐらせる僕をオークキングが待ってくれる訳もなく、無造作に振り上げた大剣が僕に振り下ろされた。


 反射的に躱そうとするも僕の震える足はまともに動いてくれなかった。

 それでもなんとか身体を捻って直撃を避ける。


 パリンとお馴染みの音が鳴って防護印(プロテクション)が割れ、その衝撃で僕は吹き飛ばされた。


「っ痛ったぁぁぁっっっ! ……治癒(ヒール)っ!」


 ゴロゴロと転がりながら自分に治癒(ヒール)をかける。

 オークキングの攻撃自体は無効化されても、その衝撃で吹き飛ばされたダメージと痛みは通ったらしい。

 しかし手応えが違ったのだろうか? オークキングは少し不思議そうな顔をしている。


「あ、あぶなかった……」


 すぐに自分に防護印(プロテクション)をかけ直して立ち上がり距離を取る。

 防護印(プロテクション)が効いてなかったらアレで終わりだった。


 いくらボスモンスターだからって恐怖で足が竦んで何もせずに死にましたとか情けなすぎる。

 ちらりとマヤを見る。まだ立ち上がれそうにない。


 マヤは僕を守ると言ってくれたんだ。なら今度は僕がマヤを守らなきゃ……その為には……


「あ、ああー! あーっ!」


 とりあえず恐怖を振り払う為に大きな声を出す。アンクルさんの教えだ。


 恐怖に打ち克ち、相手を呑み込む。


 声を出すだけでも結構違うらしい。

 でも突然奇声をあげた僕にオークキングは不思議そうな顔をして動きを止めた。

 モンスターに可哀想な子みたいに見られるのは何か凹むなぁ……。


 いやっ! ここからだっ!!


「ああー、あー……お、オークキングのあ、あほー! ばーかー! えっとあとは……ぶ、ぶたのかおー!」


 とりあえず思いつく罵声をオークキングに浴びせる。

 これもアンクルさんの教え。

 ヘイトコントロールというらしい。


「お、おまえのかーちゃん、でーべーそー!!」


 オークキングのお母さんごめんなさい、仕方ないんです。


「ギィグァァァァァッッ!!」

 と怒りに染まった?オークキングが大剣振り上げて僕に向かってきた。

 ヘイトコントロールも大成功だっ!


「今度はこっちから行くよっ!!」


 改めて自分の状態を確認する。さっきの発声とヘイトコントロールで僕の身体はちゃんと動くようになったみたいだ。ならいける!

 僕はアーツを唱えながらオークキングに突撃した。


 再び振り下ろされる大剣。でも僕はオークキングの左側に向かって走り抜けて回避する。

 オークキングの人の身長より大きい位のサイズの大剣、しかも今はマヤに左腕を切り落とされて片手持ち。

 当然その動きは制限されていて、じっくりよく見ればその振り方は振り下ろすか薙ぎ払うかの2種類しかない。

 さすがに怪力を誇るオークキングでも片腕で大剣を自由に扱うのは限界があるんだろう。


 しかも左腕がないから本来左側から来るはずの殴打もない。


 僕は大剣の動きを注視しながら、左側、左側に回るように回避する。


 更に僕の身長がオークキングの半分以下なのも、オークキングとしては戦いにくいのかもしれない。

 ゼロ距離で貼り付かれると大剣が使いにくそうだ。


 それでもチョコマカ動く僕を倒そうと向かってくるオークキング。


 でもそんな闇雲な攻撃、アンクルさんの教えを受けた僕に当たる訳がないのだよ、ふっふっふ。

 それに僕は例え失敗してもマヤが麻痺から立ち上がる時間を稼げればそれで勝ちだ。

 残りHPもそれなりに減ってるオークキングにもう一度立ち上がったマヤを相手する力はないはずだっ!


 あと30秒…………15秒…………


 残り時間をチェックしながら、意識を集中しオークキングの攻撃を躱し続ける。

 もう少し……と、思った瞬間オークキングの腕が激しく震えたかと感じた。


「グィアアアアアッッ!!」


 この攻撃はマズいっ!

 反射的に判断して僕はダッシュで左側からオークキングの後方まで走り抜ける。

 振り下ろされる大剣が地面に突き刺さるように叩き付けられ、周囲を衝撃が吹き荒れる。


 危なかっ……っ!?


 胸をなで下ろした瞬間、僕の腹部に強烈な衝撃を受けてパリンと防護印(プロテクション)が割れ、マヤの方へと吹き飛ばされた。

 後ろ蹴りを食らったらしい。

 蹴り自体のダメージは無効化されたのに衝撃で頭がゆわんわゆんする。


 思わず集中がとぎれそうになった。

 でも……




「僕の…………勝ちだっ!」


 0秒。


 マヤを守るように一歩踏み出し、アイテムウィンドウから取り出したアイテムをオークの前に置き、僕はアーツを完成させた。


結界(バリアフィールド)っ!!!」


 詠唱が終わり触媒も設置したアーツは瞬時に魔法陣が発生し、効果を発動する。


 すなわち『モンスター進入不可フィールドの形成』


 『セカンドアース』のボスモンスターも通常モンスターと変わりない。『結界(バリアフィールド)』にモンスターが進入する事は出来ない。

 そして壁を背にして結界(バリアフィールド)を発現させれば、中に入れないモンスターは押し出される(・・・・・・)




 そう、崖下へと。


 一瞬オークキングと目があった。

 彼は自分が何をされたのか理解していただろうか?


 次の瞬間にはオークキングは転落し、暫くした後、何かが潰れる音がした。



・『ユウ』はオークキングを討伐完了。

・『ユウ』レアアイテム『オーキシュソード』を獲得。『オークの牙』を2個獲得。

・『ユウ』はレベルアップした。Lv8になった。


・『ユウ』はイベント『オークゴブリン混成軍の東の森侵攻』クリア。経験点1万5千点獲得。

・『ユウ』はレベルアップした。Lv10になった。



 物凄い勢いでメッセージが流れていく。

 なんだかレアアイテムとか書かれてるし、イベントに関連したモンスターだったっぽいし、やっぱりオークキングって『ボスモンスター』だったんだなぁ。


 って、いきなりレベル10!?


 あわててステータスを開く。


――――――――――――――――――――――――――――――

  ユウ 人族/男 16歳 侍祭(アコライト)Lv10

  HP106/AP182

  筋力:1(0)

  体力:1(0)

  速力:1(0)

  器用:1(0)

  知力:5(+5)↑

  魔力:10(+10)↑



  <通常スキル>

  ・神聖魔法(初級) ・調理(中級)↑ ・歌唱(中級)

  <固有スキル>

  ・美女神の祝福(びめがみのしゅくふく) ・愛天使の微笑(あいてんしのほほえみ) ・妖精女王の囁きようせいじょおうのささやき ・精霊后の芳香せいれいごうのほうこう

  ・聖獣姫の柔肌せいじゅうきのやわはだ ・魔皇女の雫(まこうじょのしずく)


  <装備>

  ・Lv17治癒の杖(スタッフオブヒール)

  ・Lv5純白のローブ

  ・猫耳フード

――――――――――――――――――――――――――――――


 うん、そんな気がしてた。3レベル分も上がってもどうせ僕のアバターは知力と魔力しか上がらないんだ……。

 でもそれはいい、それはまだ我慢出来る……。

 それでもアンクルさんのお陰でなんとか戦えたし……。

 

 むしろ問題はスキルだ!

 あれだけ特訓して、あれだけ動き回って、何で待機スキルが発生せずに『調理』スキルがレベルアップしてるんだよっ!?

 おかしいよ!? こんな事ばっかりだと僕泣くよ!?

 僕だって強撃(バッシュ)とか攻撃アーツ使いたいよっ!

 オークですら使ってるのにっ! ずるいっ!


 うぅ……無い物ねだりをしても仕方ない……がんばれユウ、きっといつか戦闘スキルも待機状態になるさ……うん、まだ10レベル、これから! これからっ!!


 気を取り直して振り向くとマヤが立ち上がろうとしていた。

 『麻痺』がとけたっぽい。


「マヤ、大丈夫だった? 怪我ない? 治癒(ヒール)しよっか?」

 慌てて駆け寄って声をかける。


 そんな僕をマヤは無言で見つめ返してくる。


「?」


 何か変かな? と自分の姿を見返す。

 何度か吹き飛ばされたからローブが少し砂埃で汚れてしまったけど特に変わった所は……。


「!」

 あ、そうか。あれだな、マヤがピンチな所を颯爽と現れた王子様、つまり僕。

 そしてボスモンスターを華麗に倒し、数日前とは違う成長した僕に見惚れてしまったという訳か。


 確かに男子三日会わざれば刮目して見よ、って言うしね!


 僕だってこの数日、レベルは全然上がらなかったけど、成長していたって事なのだ!

 久し振りに逢った幼馴染みに急に男らしさを感じてキュンとしちゃうなんてシチュエーションは少女漫画の定番だと聞くし、マヤがそうなっても仕方ない。


 そうか、ついにマヤも僕の男の魅力にきぎゅっっ!!


 突然頭頂部から響く痛みに悶絶する。


「……痛っ……たぁぁぁっっっ!! ひっ、治癒(ヒール)っ!!」


 慌てて治癒(ヒール)を唱える。APが残ってて良かった。


「な、何するんだよっ!頑張って助けたのにっ! オークキングの攻撃より痛かったよっ!?」

 叩かれた頭を抑えながらマヤを見上げて抗議する。

 暴力反対!


「知らないわよっ!! いつもいつもいつもいつも逃げろって言っても戦っちゃうし、ユウこそ何なのよっ!! 心配するこっちの身にもなりなさいよっ!!」

「ご、ごめん……?」

「ゴメンで済んだら葬儀屋は要らないのっ!! 大体ユウは昔っから――――」


 涙目で無茶苦茶怒られた。

 正座させられた。 


 あ、あれぇ……?




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