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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第二章 一人ぼっちの冒険者
39/211

第38話 合わせ鏡のように。

 そこは岩肌の中腹っぽかった。

 直径30メートル程の開けた岩の地面、目の前には5、6メートル程の壁。その上も又、木々に覆われているように見える。

 反対側を見ると切り立った崖が何十メートルも続いており、その下に真っ黒な大森林が広がって居る。……という事は、ここも『東の森』なんだろうか?

 遠くの方には小さな光が見える。あれが王都なのかもしれない。


 そして何より目に付くのは巨大な岩壁の中央にぽっかりと大きな洞窟が空いて、奥へと誘っている事だろう。

 つまりコレって……


「ダンジョンの入り口?」


 勿論答えてくれる人はいない。

 僕はまだ『セカンドアース』に来てから『ダンジョン』に来た事が無いからわからないけど、他もこんな感じなのかな?


 多分僕がうっかり転送装置か何かを作動させちゃって、飛ばされちゃったんだと思うけど……。


「って事は……マヤもこの先に居るのかな?」


 転送装置の所にマヤの持っていたのと似たリボンが落ちてて、転送先に『ダンジョン』があり、クランチャットはダンジョン内までは届かない。

 此処まで揃ってるなら、この先にマヤが居るはずだけど……。


「その前に皆に連絡しないとだよね」


 食事会の前に習った『伝言メッセージ』を開いて、コテツさん宛に伝言を出す。


「えっと……なんて書けばいいんだろ?……僕は無事です。森を見下ろせる何処か岩肌の中腹?に居ます。……でいいのかな? 送信、っと」


 ぴこんと送信完了のメッセージが表示され、即座に返信が帰ってくる。

「はやっ!?」


 受信欄を開くとコテツさん、アンクルさん、ルルイエさん、ノワールさん、それぞれからの心配する伝言が入っていた。

 早かったんじゃなくてただの行き違いだったらしい。


 そしてそれを確認してる間にもう一通のメッセージがコテツさんから届いた。

「森全体を見ろ?」


 首をかしげながら指示通り森を見渡す。


 と、森の中からまるで花火みたいに一条の光が登り消える。

 誰かが何かを打ち上げたんだろうか?


 そして今度はノワールさんからメッセージが届く。

『見えたら、返信。聖光(ホーリーライト)で。位置特定』


 そうかっ!

 ノワールさん達の意図を理解して、見えやすいように光量を増やして、2度、3度と点滅するように聖光(ホーリーライト)を照射する。


 と、又森の中から光が登り、「位置確認」とメッセージが届いた。


 同時にアンクルさんからもメッセージが届く。


『どうやら転送装置は時限式で一定時間経過しないと再使用不可能な状態のようです。位置は確認しました。すぐに救助に向かいますので、無理せず結界(バリアフィールド)を張ってお待ちください』


 とあった。

 でももしこの先にマヤが居るのだとしたら、ここで留まっていて良いんだろうか?

 いや、でもマヤが1人で帰ってこれてないダンジョンに僕1人で中に入っていって彼女を救助するとか現実的ではないかな?

 やっぱりここは皆を待った方が……でも、その時間のロスで何か大変な事になったら……。


「もう、眩しいわねっ! ダンジョン入るならさっさと入りなさいよっ!!」


 だからそれを悩んでるんじゃないかっ!!

 って誰かいるっ!?


「誰っ!?」

 声のした岩陰から出来るだけ離れて声をかける。

 こんな夜中にこんな人気の無い所に居る人が真っ当な訳が……。


「貴女と同じプレイヤーよ。転送装置で飛ばされたけど、1人でダンジョンなんて入れないし、崖を降りるのも、登るのも無理そうだったから、此処に泊まって朝まで待ってみて、時間経過で転送でき……な……いかと……」


 欠伸をしながら面倒臭そうに説明していた金属鎧(プレートメイル)の女戦士は目が覚めてきたのかどんどん目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。


「ゆ、ユウ?」

「マヤっ!!」


 そこに居たのはマヤその人だった。




「つまりユウは私を探して、こんな夜更けに東の森にやってきた、と?」

「うん! 無事でよかったよ。皆も心配してたんぎゃっっ!?」


 突如僕の頭に握りしめられたマヤの拳骨が落ちて目から火が出る。


「ななな、何するんだよっ! 痛いだろっ!? 馬鹿になったらどうするんだっ!! ひっ治癒(ヒール)!!」

 両手で自分の頭を撫でながら治癒(ヒール)で痛みを和らげる。

 なんだか治癒(ヒール)ってモンスターからじゃなくて日常でばかり使ってるような気がしてくる。


「もう馬鹿でしょっ!? なんでユウが助けにくるのよっ! ここはユウが最初に降り立って死にそうになった『東の森』で、しかも今は夜だよ? 危ないのはユウの方じゃないっ!!」

「ば、馬鹿ってなんだよ!? そりゃ僕だけじゃ危なかったかもしれないけど、アンクルさんもコテツさん達も手伝ってくれたし大丈夫だよっ!? そもそも夜になっても帰ってこないマヤのが危ないだろっ!!」

 何故か怒り出したマヤに慌てて反論する。誰が馬鹿だ、誰がっ!!

「その護衛が居ない所に1人で来ちゃって何言ってるのよっ!! 私は別に死んだってデスペナルティがあるだけでホームに帰ってくるじゃないっ! ユウは自分の置かれた状況ちゃんとわかってるの?! ユウは死んだらそれまでかもしれないんだよっ?!

 前から思ってたけどユウは危機感なさすぎっ! もっと街で大人しくしてればいいのよっ!!」


 更に怒りにまかせてもう一度拳骨をふるうマヤ。

 しかし僕を舐めるなっ! そんなのは防護印(プロテクション)だっ!!


「転送は事故だったから仕方ないだろっ?! それに僕が本当に死んだら終わりなのかなんて誰にもわかんないじゃないかっ! それに、それに……僕が『そう』なら、マヤ達だっていつ『そう』なってもおかしくないっ!

 なら僕は街で大人しくなってしてられないっ! マヤが嫌だって言ったって助けに来るよっ!?」

「私は1人で大丈夫よっ!!」

 マヤのわからずやっ!なんでわからないんだよっ!!

 くそう、拳骨の痛みはもう無いのに涙出てきた。


「1人で出来る事なんてたかが知れてるだろっ!? なんで1人で飛び出すんだよっ!!」


 …………あれ……?


「私はユウを守れるようにならなきゃダメなんだからっ! その為には頑張らなきゃダメなのっ!」

「それで1人で飛び出して、1人で無茶して、そんなの相手が喜ぶと思うのっ!?」


 これは僕は誰の事を言ってるんだろう……?


「もっと仲間を頼ろうよっ! 皆、力を貸してくれるよっ! 僕1人じゃダメかもしれないけど、一緒に力を合わせる事が出来るんだっ!!」


 1人で飛び出したのに、結局アンクルさんに指導して貰って、コテツさん達に探索も手伝って貰って、騎士団員さん達もがんばってくれて……


「だって……だって……」


 マヤも泣いている。

 だから僕はマヤの手を繋いだ。


「だから……一緒に強くなろ? 1人が無茶をしなくて良いように一緒にがんばるのがパーティだと思う」

「いいの……? 私、ユウと一緒に居て良い?」

「僕の方こそ、勝手にパーティ解散しておいて何だけど……改めてマヤと一緒に居たい」


 そう言った瞬間、マヤは僕に抱きついて、大声を出して泣き始めた。


「…………ぅえぇぇぇん……ユウぅぅ…………」



 泣き続けるマヤをあやすように頭を撫で続ける。

 こんなに泣いてるマヤを見るのは何時以来だろう……?

 高校に入る頃からは何だかんだで隣にいる事はあっても、ここまでしっかり腹を割って話した事すら無かったかもしれない。

 涙と鼻水でひどい顔になってるマヤが僕を力一杯抱きしめて僕のローブを濡らしている。


 しかし……泣いてる女の子を抱き留めるのは男の甲斐性だとは思うけど……。


 金属鎧(プレートメイル)の身体を力一杯押し付けられるのは男として楽しくないのは勿論なんだけど、むしろただただ痛い。

 身体中がミシミシ言ってるっ!?

 今のマヤの筋力は僕の30倍からあるんだからその辺気を遣って貰いたいっ!

 男の甲斐性で死ぬ訳にはいかないっ!!


「あの……ま、マヤさん? せめてもう少し力を緩めて貰えると……」

「やだ」


 むしろがっしりと力強く抱きつくマヤ。


「いや、本当に許してっ!? 僕のHP無くなっちゃうよっ!!」

「ユウ分補充」


 マヤがノワールさんみたいなしゃべり方になってる!? コレは一体っ!?

 いや、痛いからっ! せめて鎧を脱いでから……いや、突然脱ぎ出されたら僕の方が困るっ! さっきのは無しでっ!!


「えへへ……ユウがいっぱいだぁ~」


 さっきまで泣いてたマヤが幸せいっぱいな表情で僕のローブに顔を埋めて呟いた。

 その顔と言葉を聞けたんだから、まぁいいか……



「……なんて思うかぁぁぁ! マヤ、離してぇぇぇっっ! 僕は生き抜くんだぁぁっ!!」

「うんっ! 一緒に生きようっ!!」

「マヤに殺されるぅっっ!?」


 僕の悲鳴が夜の森に響いていた。





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