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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第二章 一人ぼっちの冒険者
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第33話 楽しい食事会。

 僕が酒場に入ると驚いた事にもう皆テーブルに着いていた。

 アンクルさん、ソニアさん、タニアちゃん、右側コテツさん、あ、ノワールさんとルルイエさんも居る。

 マヤだけはまだ来てないのかな……?

 もしかして伝言の送信ミスとかしただろうか……? 初めてのシステムって少し怖いよね。


 でも……それはそれとして……


 なんだろう? 何か凄く重苦しい空気なような……。

 ピリピリしてるというか……初対面の人も居るだろうし緊張してるのかな?

 特にアンクルさんはぼっちだった訳だし、こういう場に慣れてないのも仕方ない。

 そうだ、そういうフォローを僕がしてあげないとっ!


「遅れてごめんなさいっ!ちょっと準備してて」

 エプロンと三角巾を外して、テーブルにかけよる。

 と、僕に気付いたタニアちゃんが最初に飛びついてきた。

「私達も今来た所だよっ!」

「それに、約束の時間までまだ少しありますから、むしろ早く来てしまってすみません」


 と苦笑しながらソニアさんが続いた。

 それを聞きながら嬉しそうに僕の手を取って自分の隣に座らせるタニアちゃん。

「いえ、楽しみにしてくたなら僕も嬉しいです」

 タニアちゃんの頭を撫でながら答えた。さっきはピリピリしてた気がしたけど、タニアちゃんのお陰で和んだ気がする。

 やっぱりタニアちゃんは可愛いなぁ……こんな妹が欲しかった。


「ユウ様、今日はお招きありがとうございます。これは感謝の印に」

 ソニアさんに続いて、満面の笑みになったアンクルさんが手元から真っ白な薔薇の大きな花束を差し出してきた。


「あ、ありがと……」


 男から花を貰う趣味なんか僕にはないけど、だからといって招待客の贈り物を突き返すのも感じが悪いだろうし仕方なく受け取る。

 勿論花の事は勿論、薔薇の事もよくわからないけど、綺麗な薔薇の花束だ。


 貰う事も贈る事もした事なかったけど、こうしてみると花束も結構良い物だなぁ……ん?


「あれ?これって……造花?」

 匂いもないしよく見ると一個一個紙で折られていた。

「はい、我が忠誠は永遠。永遠に枯れぬ薔薇こそ、ユウ様への贈り物としてふさわしいかと思いました」


 気付いて貰えた事が嬉しいのか更に笑みを深めてアンクルさんが答えてくれた。

 そういえばアンクルさんって何故か造花製造なんてスキル持ってたっけ……この為に取得してたんだろうか?

 スキルがあるとはいえ、今日の食事会は突然だったのにこんな沢山の花を作ってくれた事が素直に嬉しいなぁ。


「男が造花作りとか、どうなんだろうねぇ」


 トゲのある声が聞こえてピシリと音が聞こえたように空気が凍る。

 声の主は……コテツさんだった。

 な、なんで!?


「貴公は何か私に言いたい事でも?」

「べーつにー?」


 剣呑な視線を交わすコテツさんとアンクルさん。が、一転コテツさんは僕に向き直って笑顔になり、

「あたし等も誘ってくれてありがとな! ノワールとルルイエも来たいって言うから連れてきちまったけど、大丈夫だったか?」

「勿論です。ノワールさんとルルイエさんはマヤの大事なクランメンバーだし、他の方も良かったら、って誘ったのは僕ですから」

 ちょっと申し訳なさそうなコテツさんに笑顔で応える。


「ゴメンな? ウチ等結局ユウ君とはあの時少し話しただけになってもうたし、マヤっちやコテっちからユウ君の話自体は良く聞いてたから、ちゃんと会って話したかったんよ」

「ん……ユウ、いいこ。……大丈夫だった?」


 少し大げさに頭を下げるルルイエさんと、言葉は少ないけど僕を気遣ってくれてるのがわかるノワールさん。

 言い方は違うけどどちらも僕がマヤとパーティ解散した事を気にしてくれてたみたいだ。

 何だか逆に申し訳なくなってくる。


「大丈夫です。僕もコテツさん以外のマヤのクランメンバーの人とお話してみたかったですし、大歓迎です!」

 それにノワールさんもルルイエさんも2人とも美人だし、美人とお話出来るなんて高校生男子としては願ったり叶ったりだ!


「そっか、そう言って貰えると助かるよ。……あぁ、マヤにはあたしの方からもクランチャットでも伝えてみたんだけどさ、アイツどうやらまだ狩りの最中っぽくて返事が無くてさ」

「マヤって昔から一度決めちゃうと脇目も振らずに突っ走るタイプだから、気付いてないのかも?」

「あー、確かにそんな感じだな」

 コテツさんがニヤっと笑う。どうやらマヤはクランの中でも現実と同じ感じらしい。


「まったく、人の話も聞かない猪武者達という訳ですな」


 更にトゲのある声色に空気が一瞬固まる。

 今度の声の主はアンクルさんだった。


「なんだい、兄ちゃん。アタシのダチに文句もであるのかい?」


「いいえ、何も?」


 な、なにこれ? どうなってるの!?

 コテツさんとアンクルさんって仲悪かったの?!

 僕が来た時の変な空気ももしかして2人が原因っ!?


「ね、ねぇ、ソニアさん、コテツさんとアンクルさんって、何かあったの?」

 慌てて隣に居るソニアさんに小声で問いかける。

「ええその……実はさっき……」


 一触即発な空気の中、僕だけに聞こえるようにソニアさんが教えてくれた。

 それはつい数分前、僕が厨房に居る時――




「ああ、話は聞いてるよ、ユウの夕食に招待された知り合いってんだろ。あの奥の席だ」

 そういってソニアさん達を女将さんが案内したテーブル。

 そこには既に1人の男性が座っていた。


「…………貴公らは?」

 ソニアさん達を一瞥して、何やら驚いたような落胆したような表情で最初に口を開いたのはアンクルさん。

「こんばんわ、アンクルさん。冒険者ギルドではお世話になっています。受付のソニアです。私達もユウちゃんに誘われたんです」

「妹のタニアです。今日はよろしくお願いします」

「成る程……。私は白き薔薇の巫女姫を守る薔薇の騎士、アンクル・ウォルター。今日はよろしく頼む」


 ソニアさん達の言葉に少し警戒を解いたようにアンクルさんが応え、その時は問題無かったらしい。


 のだが……

 その次に聞こえてきた声で又状況が変わったらしい。


「ここだ、ユウとの約束の酒場は。……でも、最初に言ったようにユウがダメっつったら帰るんだぞ? ルルイエやノワールのせいでマヤとのパーティ解散してる状態なんだから」

「それはもう何度も聞いたって。ウチかて嫌われてるならすぐ退散するよ。それでも、申し訳ない思うてるからこうして謝る場が欲しいやん?」

「ん、ルルイエはもっといろんな人に謝るべき」

「そんなにウチやらかしてるん!?」


 テーブルにやってきた三人娘。

 その会話の内容もソニアさんや――当然アンクルさんにも聞こえていたらしく、ソニアさんから見てもアンクルさんは最初の時以上に衝撃を受けた顔をしていたそうだ。


「……私の名はアンクル・ウォルター。貴公らは?」

「あんたがアンクル(へんたいきし)さんか、マヤから『色々』聞いてるよ。あたしはコテツ。こっちはルルイエとノワール。今日はユウに呼ばれて来た。よろしくな」


「貴公等が……ふむ。ユウ様を呼び捨て……いや、そもそもその言葉遣いが頂けませんな」

「なんだそりゃ? ンなもんあたしの自由だろ?」

「ユウ様はお優しい方だが、それに甘える事は如何かと言っているのだ」

「それこそあたしとユウの問題だろ。部外者に言われたくないね」

「私はユウ様を守る騎士だ。そして何人であろうとユウ様に涙をなっ――」


 険悪な雰囲気に慌てて声を上げたのはコテツさんの隣からだった。

「まぁまぁ、コテっち。ウチら上品なしゃべり方とか出来へのは言われた通りやし。アンクルはんも今日はゴメンしてな? ユウ君がダメ言うたらすぐ帰るから」

 笑顔のまま謝りながら間に入るルルイエさん。

「今日は畏まった場でもないですから大丈夫ですよ。それに折角ユウちゃんが誘ってくれた食事会ですから、楽しくしないと。ね、アンクルさん?」

 それに合わせてフォローするソニアさん。


「了解した」

「あぁ……まぁいいけど」


 それで全員が席についたけど、コテツさんとアンクルさんは視線を合わす事なく、微妙な空気になった時に僕がやってきた。




 ――のだそうだ。


 うーん……何が原因かさっぱりわからない。

 アンクルさんもコテツさんも無意味にケンカしたりするタイプじゃないと思うんだけどなぁ……


 いや、負けるなユウ! むしろこういう時こそホストの僕ががんばる時じゃないかっ!

 雨降って地面を固める事だって出来るはずっ! いや、そうしないとっ!


 空気の悪い食事会なんて誰もしたくないし、僕もイヤだ!


「あ、あの、2人とも……いや、他の皆も、今日は来てくれてありがとう!」

 立ち上がって僕が声を上げると、睨み合っていたアンクルさんとコテツさんも、勿論他の皆も僕を注目してくれた。

「いつもお世話になってばかりで、何のお礼も出来てないけど。せめてもの感謝の気持ちで、今日の食事会は僕の奢りだから、好きなだけ食べて飲んで、楽しんでねっ!」


 グラスを掲げて、怪しいながらもやっとパーティが始まった。


「「乾杯っ!」」



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