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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第二章 一人ぼっちの冒険者
30/211

第29話 必要な武器。

「まずは実演を交えて説明しましょう」


 そう言ってアンクルさんは僕を連れて歩き始めた。

 勿論結界(バリアフィールド)は解除しておいた。放っておくとこの後何時間も無意味に維持されるだろうし、そうして誰かの迷惑になっても困る。

 モンスターが入れなくなるだけの空間だからそんなに迷惑になる事はないとは思うけど、一応。


 辺りを探索するまでもなく、すぐにゴブリンの一団が見つかった。

 数は4体。

 本当にゴブリンの数が増えているっぽい。今まで街の近くで色々戦ってみたけど、こんなすぐに大量に出会う事はなかったし。


「ギッギィッ!!」

 と意味不明な言葉で威嚇してくるゴブリンを見て、剣も出さずにアンクルさんは歩調を変えず近づいていく。


「あぶないっ!!」

 ゴブリンが飛びかかってきたのを見て思わず声を上げたけど、アンクルさんは僕ににっこり笑いかけながらその攻撃をするりと躱す。

 その後もゴブリン達はアンクルさんに襲いかかるがその全てを踊るように躱すアンクルさん。


 マヤとのPVP(プレイヤーバトル)でも思ったけど、この人の戦い方は凄く綺麗だ。

 コテツさんの戦い方も踊っているようだったけど、彼女の場合は剣舞みたいだった。でもアンクルさんは本当にただワルツを踊っているように動いて、それにゴブリン達が巻き込まれてコントのようになっている。


「さて、ユウ様は私が何をしてるかおわかりかな?」

 ゴブリンの攻撃を避けながら不意にアンクルさんが尋ねた。

「何って……攻撃の回避?」

 にしか見えないけど……まさか本当にダンスを踊ってる訳じゃないだろうし。


 僕の答えを聞いてアンクルさんは目に見えて大きなため息をつく。

「それでは30点です。『どうやって』回避をしているかが重要なのですよ。それが貴方がこれから成すべき修行です」

 そう言って攻撃して来たゴブリンに肘鉄を叩き込んだ。

 ゴブリンは無数に攻撃を繰り返していたが、これがアンクルさんの初攻撃だ。


「ユウ様はゴブリンに対して、一対一ならば圧倒しておられました。それが6体になった時、逃げるしか出来なかった。それは何故か?どうすれば複数体の敵を相手に戦えるようになるか?

 それを実演し、ユウ様自身も出来るようになる方法を考えるのです」

 そう言ってアンクルさんは2体目のゴブリンを蹴り上げ、こっちを向いて微笑んだ。


 あれ? 何でアンクルさんは僕が一対一でゴブリンに勝てた事知ってるんだっけ……言ったっんだっけ?


 そうしてる間にも何度か攻撃を打ち込むアンクルさん。手加減しているのかゴブリン達が倒れる事はなく、それでもゴブリン達の攻撃の方はアンクルさんに掠る事すらない。

 と、今はちゃんとアンクルさんの動きを追わないと……でも一体どうやってこんな事を?


「高い速力と『回避』スキル?」


 自分が見たアンクルのステータスを思い出す。

「それは必須ではありません。『回避』スキルは大抵の前衛職は所持してるでしょうし、それなりに速力のある者も居るでしょうが、私のように動ける者はあまり居ませんしね」

「そういえばマヤも『回避』スキル持ってたっけ」

「あの猪武者がわざわざ攻撃を回避する姿は想像できませんな」

「ぶふぉっ」


 思わず吹き出してしまった。確かにマヤってそんな華麗な、とかは似合わない。

 でも戦闘中なのにそんな軽口を言える位余裕なのは何か理由がなきゃおかしい……何か……見落とした事なかったっけ……。


「そうだ! 確かアンクルさんにもう一つスキルがあった!! 確か……『先見』?」


 僕が叫んだ時、一瞬アンクルさんの動きがぴたりと止まり、僕と目があった。

「半分正解です」

 にっこり微笑むアンクルさん。


 まだ半分だったか……他に何か……。


「が、ほぼ正解とも言えます」


「どっちだよっ!?」

 教えを乞うてる身なのについツッコミを入れてしまった。でもこれはアンクルさんが悪いよね、うん。

「私は『先見』スキルを使用している事は正解です。ですが、『先見』スキルのないユウ様が同じ事は出来ないでしょう?」

 うん、僕にそんなスキルはない。なら僕がしなきゃいけない事は……


「『先見』スキル無しで、モンスターの動きを予測して、対処出来るようになる?」


 その瞬間、突風が吹き荒れたように感じたと思ったらアンクルさんの姿が消え、次の瞬間には全てのゴブリンが突っ伏して光となり初めていた。


「正解です。さすがユウ様、我が主」


 光となって消えゆく中央で華麗にお辞儀をするアンクルさん。

 その姿は物語の中に出てくる騎士そのもので、本当に絵になっていた。


 同じ男としてちょっと悔しい。

 僕も努力すればあんな風に戦えるようになるんだろうか?

 いや、なる! なれる! その為に修行しようって決めたんだった!


「えーっと……つまり相手の動きを予測して動けば良いんだね」

「そうですな。更に言えば複数戦を念頭にしているのですから、1人ではなく戦場全ての個体の動きを把握し、それに合わせて動く事が必要になります」

 さらりと事も無げに言うアンクルさん。


「……いや、でも……それって凄く難しいんじゃ……」

「最初に言いましたよ、大変な道だと。……といっても、現実と違って続ける事で何かしらの待機スキルが発生する可能性が高いですが」

「そ、そうか!」


 確かにその可能性は高い!幸い僕のスキルスロットは1個余ってるし。

 戦闘系スキルは中々出てこなかったけど、動きの先読みとか俯瞰した視点って別に戦闘系に限ったスキルじゃないし、目覚めてもおかしくはない!!


「よーし、やるぞ!」

「その意気です。とりあえず2体のゴブリンから始めましょう」


 ふ、3体までなら幻影狸(ミラージュラクーン)で経験済みのこの僕に2体のゴブリン等容易い相手さ。

 とは口に出さず、ここは僕のカッコイイ戦いっぷりをアンクルさんにも見せつけてあげよう!

 戦えるのはアンクルさんだけじゃないって事をねっ!!




「そろそろ帰りましょうか、ユウ様」

 日が傾き初めて、森の中の暗さが増し始めた頃、アンクルさんがそう声をかけてきた。

「は、はぃ……そう……しましょ……う……」

 へたり込みそうになりながら、息も絶え絶えに僕は答えた。


 あの後、僕は3回ゴブリンと戦う事になった。それぞれ2体づつだ。

 最初にアンクルさんが2体を残して他を一瞬で倒し、そこで交代して僕が戦った。


 のだけど……ゴブリン1体なら圧倒出来たのに2体になると難しさが2倍ではなかった。

 当たり前の事かもしれないけど、ゴブリンって連携して攻撃してくるんだよね……。

 連携された攻撃は4倍にも5倍にもなる。……のをモンスター側がするなんてずるい。と思ってしまうのはプレイヤーの傲慢だろうか?


 目の前のゴブリンに集中すると、もう片方からの攻撃に防護印(プロテクション)が破壊されて慌てたり、2体同時に見ようとすると1体づつが疎かになって袋だたきにあったり。

 そうして少しづつダメージを与えつつ、自分に治癒(ヒール)防護印(プロテクション)をかけつつ戦って、長い時間をかけて何とか倒す事は出来た。

 が、動きを予測したり、予測に合わせて対処したり、というのにはまだまだだった。


 アンクルさんは僕が戦ってる間、その周りにやってきたゴブリンを数十体単位で蹴散らしていた。

 途中で数体のオークともエンカウントしてたけど、それも圧倒しちゃってた。


 本当にこんな感じでアンクルさんのように戦えるようになるのだろうか?

 不安になってついアンクルさんを見上げてしまう。


「さすがユウ様です。初めてだというのにユウ様は実に筋が良い。これは将来が楽しみですな!」

「っ! あっ! ありがとう、ございすます!!」

 本当に楽しそうにそう言ったアンクルさんに慌ててお礼を言う。

 慌てすぎて噛んだ。


 自分では良い所なんてさっぱりわからなかったけど、アンクルさんには何か思う所があったんだろうか?

 それとも単なるお世辞だろうか?


 お世辞でも嬉しいなぁ……。


 どうやら僕は褒められて伸びるタイプらしい。

 さっきまでもうダメだと思っていたのに、もう「又明日がんばろう」という気持ちになってしまう。


 あれ? もしかして僕ってかなりチョロい!?


 さっきとは違う意味で恐る恐るアンクルさんの表情を伺う。

 と、目があって、やはり嬉しそうに微笑むアンクルさん。



 うん、アンクルさんにはお世話になったけど、気をつけよう。色々と。




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