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ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
第二章 一人ぼっちの冒険者

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第26話 ゴブリンとオーク。

 結局3千(アース)支払って6日分の宿(ホーム)を確保した。

 残金は680(アース)。朝夕の食事は出して貰えるから食費も気にする事はないけど、がんばって稼がないと来週には又路頭に迷う事になる。


 そもそも僕は皆を守れる力を得る為にがんばろうと1人になったんだから、生活費程度で悩んでいるようではダメだ。

 クエストを華麗にこなして足場をしっかり確保しなきゃ!

 そう思って早朝――マヤには何となく顔を合わせにくいから――に冒険者ギルドに来てみたんだけど……


「ソニアさん、これってなんですか?」


 昨日見た時には掲示板に無かった筈の2枚のクエスト。そこにはこう書かれていた。


――――――――――――――――――――――――――――――

<特別クエスト> 「ゴブリン討伐」 必要レベル:3以上 

・受注条件:なし

・達成期限:早期

・依頼内容:王都東門側の大森林付近に襲来したゴブリンの討伐。

・依頼報酬:十体毎に1000(アース)と経験値100点

――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――――

<特別クエスト> 「オーク討伐」 必要レベル:7以上 

・受注条件:なし

・達成期限:早期

・依頼内容:王都東門側の大森林付近に襲来したオークの討伐。

・依頼報酬:一体毎に1500(アース)と経験値30点

――――――――――――――――――――――――――――――


 まず頭の「特別」の文字。この一週間そんなクエストを見た記憶はない。

 それに報酬額、経験値は通常と変わらないけど、報奨金が段違いだ。同じ3レベルの幻影狸(ミラージュラクーン)の報奨金が1体50(アース)、7レベルの巨大熊(ジャイアントベア)の報奨金が1体800(アース)な事を考えても、その額が破格なのがわかる。


「あぁ、それね。又近隣でゴブリンとオークが目撃されるようになったのよ」

「又?」

「そう、ユウさんはゴブリンとオークの事はわかる?」

「えっと……」


 イメージだとゴブリンは子鬼、オークは豚顔だけど『セカンドアース』でもそうなのかな?

 特にオークは作品によって豚だったり樫の木だったりするけど……。


「そうね、わかりやすく説明するとゴブリンは人間の子供位の大きさの妖精族。肌が緑で耳が尖っている事が特徴かしら?オークは逆に人間の大人の1.5倍位ある筋骨隆々な妖精族。こっちも緑色の肌で、顔が豚みたいなのが特徴ね。」


 よかった。イメージ通りだ。

 基本的に動物ばかり相手にしてたけど、やっぱりこういうオーソドックスなモンスターも居るんだなぁ。


「で、どっちも繁殖力が旺盛で……それで数ヶ月おきに数が増えてくると、人里の方まで降りてきて……その……」

「? 降りてきて?」

「わ、若い女性を、その、攫ったり……乱暴したり、とかの被害が、増えるの。どっちのモンスターも大抵の異種族の異性と交配可能だからっ」

 顔を真っ赤にして言い切ったソニアさん。


 そして自分が羞恥プレイをさせていた事に気付いて、こっちまで赤くなってしまう。


「ご、ごめんなさい。ソニアさん、言いにくい事を……」

「いえ、仕事だから」


 そう言いながらソニアさんは落ち着くように少し深呼吸した後、

「そういう事情だから、早期討伐が望まれて、クエスト報酬が高めに設定されてるの。ゴブリンもオークも徒党を組んでる事が多いから、同レベル帯のモンスターに比べても危険度は高くなるしね」


 なるほど、それで『特別』クエストという事だったのか。

 つまり美味しいモンスター、しかも人型という事は戦闘に聖光(ホーリーライト)を組み込む事が出来る!


「じゃあ僕もゴブリン狩りに参加しますね」

「ダメよっ?!」

「へ?」


 即不許可を出すソニアさん。一週間クエストを受け続けててそんな事初めてだ。

 僕のレベルは7。ゴブリンどころかオーク討伐の条件も満たしてると思うけど……。


「えと……ソニアさん、なんでダメなの……?」

「ユウさん、私の話を聞いてた?」

「う、うん……」


 困ってる人がいっぱい居るから僕達冒険者ががんばろうって話だよね?


「ユウさんがゴブリンに襲われたらどうするの!? あらん限り陵辱され尽くしてゴブリンの子供を産んじゃう事になるのよっ!?」

「っ!?」


 ご、ゴブリンって男も妊娠させるのかっ!?

 恐ろしい、ゴブリン恐ろしいっ!!

 ゲーム世界で、高校生で、しかも男で一児の母とか耐えられないっ!?

 で、でも……


「そ、それでも、困ってる人が居るなら、がんばるから……ぼ、僕も7レベルになったし、だだだ、大丈夫ですよ」

 だからお願いしますとソニアさんに頭を下げる。

 暫く無言の間があったが、ソニアさんは大きくため息をついた。


「冒険者ギルドの受付は条件をクリアしている冒険者のクエスト受注を断る事は出来ません」

 と、クエスト受注処理をしてくれた。

「ありがとうっ!!」

「…………でも、本当に気をつけてね、誰かを守る事も大事だけど、ユウちゃんの事も皆、大切に思ってるんだから」

「はいっ!」

「無理は?」

「し、しないっ!」

「危なくなったら?」

「走って逃げるっ!!」

「よろしい」


 ソニアさんがにっこり笑って頭を撫でてくれた。

 嬉しいんだけど、なんだろう、微妙な気持ち……。




 東の森に来たのは初日、 森狼(フォレストウルフ)に追いかけ回されて以来。

 特別クエストが発令されているせいか、NPCっぽい人は東門を抜けてから1人も出会わず、逆にプレイヤーっぽい人はそれなりに見かけた。


 とりあえずアイテムウィンドウから杖を取り出して森に入と、生い茂った木々が視界を塞ぐ。

 森への道中はそれなりに見かけたプレイヤーも森に入ると全く見えなくなった。

 自分1人しか居ないんじゃ……という気持ちになってくる。

 と同時に初日の恐怖が蘇った。少し足が震える。

 でもゴブリンとオークが増えた分、森狼(フォレストウルフ)は数が減ってるらしいし僕もがんばらないと……。


 そんな風におっかなびっくり歩いていたけど、出会いはすぐだった。 


 「ギギィッ!」


 動物っぽい変な声で木の陰から飛び出してくる小さな影。

 不意打ちをする気もないらしい。同時に


・Lv3ゴブリンとエンカウントしました。


 と、メッセージが表示されている。

 前もって聞いていた通り、僕より少し小柄で尖った耳に緑の肌。ボロボロの服に短剣を持っている。

 これがゴブリン。


 目の前のゴブリンを警戒しながらも辺りを見回す。

 どうやら一匹だけっぽい。

 はぐれたのか偵察なのか、でもここで倒さないと困る人が出てくる。


 僕は祝福(ブレス)加速(アジリティアップ)を唱えて、杖を構えた。


「ギィィィッッ!」

 同時にゴブリンが奇声をを上げて突撃してくる。

 と言っても所詮3レベル、森狼(フォレストウルフ)は勿論の事一角兎(ホーンラビット)なんかと比べても大差ない。普段の僕よりは早いけど、加速(アジリティアップ)状態の僕なら余裕で対処できる。


「必殺! ユウスペシャル!!」

 杖で短剣の突きを流すようにかわしてそのままカウンターを鳩尾にたたき込むと、ゴブリンは吹き飛んだ。

 すぐに立ち上がるゴブリン、非力な僕じゃそこまでのダメージは与えられてないのかな? 更に怒気を増してる気もする。けど……


 戦ってみてわかる。レベルアップだけの効果じゃなく、一角兎(ホーンラビット)との修行の成果か、相手の動きもよく見えたし、自分の杖捌きもなめらかになってる気がする。


 ……なのになんで待機スキルが発生しないんだろう……?

 本当に武器スキルも体術や回避のスキルも才能がないんだろうか……?哀しくなってくる。


 いやいや、まだ初めて一週間! これから!! これからに違いない!


 暗くなる考えを払拭するように、改めて構え直した杖で今度はこっちからゴブリンを攻めた。

 杖を連続で打ち込むとゴブリンはをそれを躱しきれず、いくつか攻撃を身体で受ける。かといって倒れる事すら無いのだからHPが高いモンスターなのかな?


 でも最初の一撃で思った通り、ゴブリンの動きは僕でも何とかなるようだった。


「ギッ!! ギィッ!!! ギギッッ!!!」


 やぶれかぶれかゴブリンは短剣を矢鱈目鱈振り回して反撃を試みてきた。

 が、甘いなゴブリン君。そんな攻撃がこの天才杖使いのユウ様に届く訳がない!


「必殺! ユウスペシャルっ!!」

 逆にカウンターを合わせてゴブリンののど笛に杖を叩き込んだ。


「ギグェェッッッ!?」


 一際大きな叫び声を上げて倒れるゴブリン。そのまま身体が光り、消えていく。


 初対戦でここまで圧倒的に勝利した事って初めてじゃないだろうか?

 やばい、すごく楽しい……これまでの努力がついに花開いた感じだ。

 そう、これだよ! こういうのがネットゲームだよ!! スライムにまとわりつかれたり、狼に追われたりするだけじゃないんだよ!!


「ふっふっふ、英雄ユウの大進撃がついに始まったという事か」

 杖をくるりと振り回して、1人呟く。


 と、近くの藪がガサリと動いた。


 誰もいないからとポーズに台詞まで付けて格好つけてた所を聞かれたっぽい!?

 そういえば見えなかっただけでこの森には結構な数のプレイヤーも居るはず……。


 赤面しながらも誤魔化すように杖をくるくるさせてそちらを見る。



 と、6匹のゴブリンの12の瞳とばっちり目があってしまった。

 勿論12の瞳は全てこれ以上ない程怒りに燃えていた。




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