表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
最終章 誰が為の世界。
206/211

第200話 突撃天空城。

「それじゃ僕も行ってくるよ。ヴァイス、お願い」

「ブルゥゥッッ!」


 『プレイヤー』の皆が出発して殆ど人の居なくなった『大神殿』で僕の声に出番だと飛び出すヴァイス。

 アイテムウィンドウからいつものプリンスセットに着替えて、そんな元気いっぱいのヴァイスの鐙に足をかけて乗る。


 そう、今日のヴァイスは鞍を付けているのだ。理由は勿論僕が落ちない為、前回の鞍無し空中疾走で酷い目に遭ったしね。一応ヴァイスの防御力も上がる事だし、窮屈そうだけどヴァイスに付ける事を了承して貰った。

 本当に良かった。


 更に言えば乗るのは僕だけという事になった。

 『天空城』に入った後の事を考えれば人数は多い方が良いのかもしれないけど、そこに到達する前に撃ち落とされたら本末転倒だし、ヴァイスに負担をかけない為にも可能な限り荷物は軽くしようという事になったのだ。


「それじゃ私達もフィールドの方に向かうからユウちゃんもがんばってね~」

「ファイトやで~」

「はいっ! ありがとうございますっ!」

 手を振ってポータルゲートに入っていくサラサラさんとルルイエさんに御礼を言う。

「それじゃユウ、また後でね」

「うん、行くよっ! ヴァイスっ!」

「ヒヒーンッッ!」


 最後にマヤと転送による合流を確認した僕のかけ声を合図にヴァイスは駆け出した。

「ユウっ! 気をつけるんだよっ!」

「がんばっての~」

 シルフィードさんと大司教(おじいちゃん)の声に手を振って応えている間にヴァイスは一気に速度を増し、屋根を飛び越え、更に空中を駆け上がっていく。


「って、ちょっ! ヴァイスっ! は、早くないっ!?」

「ヒヒヒーンッ!」


 得意げに嘶くヴァイス。いや違う、速度を落としてと言ったつもりなのに何故早くなってるのっ!?


 そう思っている間にも『大神殿』はどんどん小さくなり、そして外壁がどんどん近づいてくる。

「ちょっ、う゛ぁ、ヴァイスっ! 高さっ! 高さ足りてないよっ!!」


 屋根より高い空中を走り抜けるヴァイスは、しかしまだ外壁の高さよりは低い場所を走っている。つまり、ぶつかってぺっちゃんこになる。


「ヒヒヒン!」

 僕の声に更に速度を上げるヴァイスはしかし高度が上がらない。壁によって出来た影で目の前が暗くなり、目の前に外壁が近づく。

「ほ、ホントにぶつかるっ! ひぃっっ!?」

「ヒッヒャヒーン!」


 と、ぶつかる寸前にヴァイスは外壁を垂直に駆け上がった。

 そのまま壁を飛び越え、更に高度を上げて駆ける。


「あ、あぶないよヴァイスっ! そ、そういう事は先に、い、言ってくれないとっ!」

「フヒヒンッ」

 反省してるようなら良いけど……危なく振り落とされる所だった。鞍が付いていて本当に良かった。


 外壁を抜けた事でフィールドが一気に見渡せるようになり、眼下にさっきの『聖戦(ジハード)』によって輝くプレイヤー軍団とゴーレム軍団の戦場が見える。その先にある目的地の『天空城』も確認出来た。

 戦況は好調だろうか? 『聖戦(ジハード)』のお陰か『プレイヤー』が押してるように見える。


「皆さんっ! がんばってくださいっ!! でも無理しないようにっ!」

 聞こえないと思うけど、一応声をかけた。

「「「うぉぉぉぉっっっっっ!!!!」」」


 その直後タイミングよく雄叫びのような声が響いてプレイヤー軍団が更に前進する。

 ……き、聞こえてないよね?


「まぁ……いいや。さ、さあヴァイス! あの『天空城』までお願いっ!」

「ヒヒンっ!」


 前もって決めてあった通り、高々度を最短距離で駆けるヴァイス。

「ヒヒンっ!」

「え? 何わぁうっ!?」


 ヴァイスの声に聞き返そうとした瞬間、ヴァイスの身体がガクンと方向を変えた。

 と同時に今までいた場所の辺りを光線が通過していく。


「あ、ありがとう、ヴァイス助かっひゃああっ!?」


 更にヴァイスが不規則に曲がり始めた。

 よく見ると地上からミサイルのような物が僕達に迫っている。しかもヴァイスが回避しているのに追撃してくるオマケ付きだ。


「わっ! ひぃっ! ひゃぁっ!?」


 しかしヴァイスの方がスピードは僅かに速いらしく、跳ね、曲がり、飛ぶヴァイスにミサイルは追いつけない。……のは良いんだけど、乗ってる僕が辛い。

 この前の洋館脱出の比じゃなく激しく空中を縦横無尽に駆けるヴァイスはジェットコースターなんて比じゃなく乗ってる僕にダイレクトに恐怖と衝撃を与える。

 でもヴァイスが頑張ってくれているこの状況で僕が弱音を吐く訳にはいかない。


「う゛ぁ、ヴァイスっ! あ、ありがとう、もう少しだからっがんばってっ!」

「ヒヒーンッッッ!」


 僕の声に応えて一際大きな声を上げるヴァイス。

 『天空城』に入り込めば流石に外からのミサイル追撃なんて出来ない筈だし、もう少しがんばれば逃げ切れる。

 そう思っていたら前方に更なるミサイルが打ち上がった。


「ヒヒヒンッ!?」


 ヴァイスの焦りが伝わる。前方のミサイルに囲まれて逃げ場が無くなっていた。このままじゃ迎撃されるっ! せめてヴァイスに『防護印(プロテクション)』をっ!


 そう思った時、地上からレーザーのような光の柱が走り抜け、前方のミサイルを消し飛ばした。


「……え?」


 レーザーだったらゴーレム軍団側の攻撃の筈だけど、それならミサイルを撃ち落とす理由がない。

 魔法であんなの見た事ないし一体誰が……?


 そう思いつつ後ろを見るとレーザーの発生源らしき場所に黄金の弓を構えてニヤリと笑うテルさんが見えた。もしかして今のが『神のダンジョン』で手に入れた武器の力?

 そう思った次の瞬間、空に向かって弓を構えたままのテルさんに周りのゴーレムが群がる。


『やらせねぇよっ!!』 


 声は聞こえなかったが、確かにそう叫んでいるクロノさんが、テルさんに群がるゴーレムをなぎ倒す。更にその隙間を縫ってアンクルさんがテルさんを襲うミサイルを切り払う。

 その間にテルさんが第二射を打ち上げ、僕の後ろにあったミサイルを消し飛ばす。


 それを確認して3人はハイタッチした後、再び僕に向かって親指を立てた。

 正直凄く格好良くて羨ましい。


 僕もがんばらなきゃ。そう思いつつ僕も2人に向かって手を上げて親指を立てた。


「ヴァイスっ! 行くよっ!」

「ヒヒーンッッ!」


 僕達を阻む者はもう居ない。スピードを緩める事なく一気に『天空城』へと突入した。




「ここは……『天空城』の中層エリア……かな?」

 降り立った場所を見回しながら確認する。『天空城』のお城の中層にあるテラスに降りたっていた。

 本来ダンジョンでこういうショートカットは出来ないけど『天空城』の特性とヴァイスという飛行手段によって途中を省略出来た。

 目的地は中央のお城の王の間。そこに居る筈のモンスターが『天空城』を操作している筈で、その近くに『アリス』が居る可能性がある。


「じゃ、さっさと行きましょうか」

「うん、そうしひゃぅっ!?」


 当たり前のようにヴァイスに乗るマヤの声に反射的に悲鳴を上げてしまった。

「ま、マヤ、お願いだから『転移』はもうちょっとわかる形でやってよ。突然現れたら怖いよ」

 まだ心臓がドキドキしてるのを必死で落ち着けながらクレームを付ける。


「前もって話し合っておいたじゃない。ユウがダンジョンに侵入してクランメッセージが通らなくなったら合流するって」

「そ、それはそうだけど、突然声をかけられて心臓止まったらどうするんだよ」

「そうしたら心臓マッサージと人工呼吸はしてあげるわよ?」

「いや、事後策じゃなくて事前策を練ろうよっ!?」

「ほら、ユウ、早くしないと戻ってくるゴーレムも居るかもしれないし、急ぎましょう」

「わ、わかってるよ。お願い、ヴァイス」

「ヒヒーン」


 そう言って再び駆け出すヴァイス。

 ここからは屋内になるし壁や天井もあってあまりアクロバティックな飛行は出来ないから2人乗りで突き進む。

 前情報通り地上にゴーレム達が出払っている為か、目的の部屋以外全部無視して真っ直ぐ進んでいる為か、予想通りモンスターの姿も無く、石造りの廊下にヴァイスの駆ける音だけが響く。


 そうして暫く走ると巨大な扉が目の前に現れた。

「位置的にはこの扉の向こうの筈だけど……」

 そう思いつつ、ヴァイスから降りて扉に手をかける。さすがに馬のヴァイスじゃ扉は開けられないし。

「っ! ユウっ! 下がってっ!!」


 マヤが叫ぶと同時に僕の襟をひっぱって引き戻し、息が詰まる。

「い、いきなり何をするんだよっ!」

「トラップよ、ホラ」


 咳き込みながら文句を言う僕にマヤが自分の盾をさっきまで僕が居た場所に投げた。

 次の瞬間真っ二つになる盾。


「で、何かしらユウ?」

「……あ、ありがとうマヤ」

「どういたしまして。それより、どうしましょうか?」


 真っ二つになった盾を見ながら呟くマヤ。

 確かにそうだ。盾がこんな綺麗に真っ二つになるようじゃ鎧も意味がないだろう。

 僕もマヤも当然『斥候(スカウト)』系のスキルは持ってないし、遠くから破壊出来る遠距離魔法とかもない。


 あと少し、本当に目の前が目的地なのに、僕達はある意味最大の障害に直面してしまった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ