表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
最終章 誰が為の世界。
205/211

第199話 聖戦。

 マヤは最後まで渋っていたけど、確かにヴァイスのあの飛行……空中歩行? を使うなら『天空城』にまで行けそうだし、アリスちゃん探しと今の接続不良の解決の助けになるのだからと池田さんに了承の意を伝え、僕達はホームに帰ってきた。

 勿論ヴァイスがOKしてくれたら、という大前提だけど。




「……という訳なんだけど、お願い出来ないかな?」


 『銀の翼』のホームに帰ってきた僕達はまず事情を説明してヴァイスにお願いする。

 その場にはサラサラさんとルルイエさんも居た。ルルイエさんは元々知ってるかもしれないけどサラサラさんは事情知らないし、僕が『天空城』に突撃して迷惑をかけるかもしれないから、それなら一緒に説明すればいいやと同席して貰ったのだ。


 勿論『白の使徒』さんの事とか説明出来ない事が多いから『ヴァイスと一緒なら天空城に入れそうだから手伝って欲しい』という流れでお願いしてみた。


 でも僕の説明を聞き終わってもヴァイスは険しい顔をして黙っていた。

「……駄目、かな?」


 ヴァイスは『モンスター』。つまりこの世界の住人だから勿論何かあって死んだ場合復活出来ないかもしれない。僕はもし死んだとしても復活出来る事は分かったし問題ないけど、やっぱりヴァイスは嫌だろうか……。


「ブルゥゥッッッ!」

 ションボリしてるとヴァイスが小さく嘶いた。

「何よ条件って」

 マヤが嫌そうな顔で尋ねた。

 ……本当になんでマヤはヴァイスの言葉がわかるんだろう? 前に聞いたら『ニュアンスが分かるだけよ』って言ってたけど、わかってるようにしか見えない。

「ブルルルルッ」

「城までだけじゃなくて中も一緒に? 今度こそ同行する? じゃ、それでいいわ」


 マヤとヴァイスの間で何故か話がまとまってしまった。

「って、ちょっと待ってよ! ヴァイスの危険が高まるだけじゃないかっ! 駄目だよそんなのっ!」

「ブルルゥゥッッ!」

 ぐりぐりと頭をすり寄せて訴えかけてくるヴァイス。

 僕にはマヤほどニュアンスはわからないけど、それでもヴァイスが強く訴えかけているのはわかる。

 そもそも僕がヴァイスにお願いした方なんだし、その気持ちを無碍にはしたくない。

 でも……


 じっと見つめるとヴァイスも僕を真剣な瞳で見つめ返していた。

「わかったよ。でも絶対無理しちゃ駄目だからね?」

 僕の了承を聞いてヴァイスは嬉しそうに更に僕にすり寄って嘶いた。

 ……マヤも僕がワガママ言った時こんな感じなんだろうか?


「……マヤはそれでいいの?」

 ずっと黙って聞いていたサラサラさんはヴァイスの了承を確認して口を開いた。

「はい。ユウは私が守ります。……その為に『アレ』をお借りしたいですけど……」

「それは元々そういう話だしクランリーダーとしては構わないけど……」

 真面目な顔で頷き合うマヤとサラサラさん。……アレって何だろう?


「まぁヴァイスとマヤがそれで良いなら私はいいと思わ。でもその計画だと『天空城』までの道中も少し不安よね」


「道中……ですか? でもあれだけゴーレム軍団が外に出てるなら中はそんなには居ないかもだし……」

 運営(いけだ)さんに聞いて全部出払ってるのを知っているとは言えず語尾が曖昧になっていく。


「ああ、勿論『天空城』内もそうだけど、城に入るまでの事ね。ユウちゃんは知らないだろうけどあのゴーレムって結構長距離攻撃する固体が多くて、ヴァイスが空を飛んで『天空城』まで走り抜ける以上途中の眼下に居るゴーレムの対空放火の的になりかねないじゃない?」

「ブルルゥウウウッ!」

 心外だっ! と言わんばかりに口を挟むヴァイス。これは僕でもわかる。


「勿論ヴァイスの事は信じているわ。でも私達も出来るだけの事をやっておくのが良いんじゃないかなぁ……ってね。私は出かけてくるから、ルルイエ掲示板の方をお願い出来るかしら?」

「あいあいさー!」

 サラサラさんの問いにびしっと敬礼で答えたルルイエさんを確認して、サラサラさんは身支度を調えてホームを出て行く。


「それじゃあ明後日の朝が丁度土曜日だし作戦決行って事で、ユウちゃんもそれまで準備しておくようにね」

 玄関の扉が閉まる前にサラサラさんが僕に小さくウィンクをしてくれた。

 



 そして『天空城』突入の作戦当日朝。僕は『大神殿』の控え室に居た。

 しかも『巫女姫のローブ』という白と赤で彩られた巫女装束とローブのいいとこ取りのような衣装を着せられて。


「よく似合ってるわよユウ」

「ほんと、SS(スクリーンショット)の撮り甲斐があるわね~」

 頷き合うマヤとサラサラさん。


「いや、おかしいよね!? なんでこれからダンジョンに突入するのにこんな格好させられてるのっ!? しかもこの服別に防御力があったりしないし、巫女っぽいしっ!」


「それはそうよ、ソレはこれからのイベント用の衣装なんだから。突入用には普段の装備で良いわよ?」

 サラサラさんが当たり前のように答えた。

「って、イベントって何?」

「ソレはウチが説明しようっ!」


 今まで居なかったルルイエさんが突然現れた。

「あ、ルルイエさんおはようおございます」

「おはようさん。言うても寝てへんのやけどね。ホンマハードスケジュールで準備大変やったわぁ……いくら何でも明後日て早すぎやっちゅーねん。それでも出来てしまう有能な自分の才能が怖いっ!」

「ルルイエもお疲れ様」

 クネクネとポーズを決めているルルイエさんに笑顔で労いの言葉をかけるサラサラさん。


「えっと……それで、説明って」

「ああ、そやね。『天空城』に突入するのに地上のゴーレムが邪魔やーって話してたん覚えてるやろ?」

「うん」

「邪魔ならウチらが相手すればええって事で、ついでに他の『ゴーレム討伐』しとるプレイヤーも巻き込もうっちゅー事で掲示板でイベント企画立てたんよ」


 そっか、確かに地上で戦っていればゴーレム達も揃って上に居る僕を見上げて攻撃なんて悠長な事は出来ない筈だ。それでも僕を狙ったら今度は下の『プレイヤー』にとっては格好の攻撃タイミングになる訳だし。

 それで『大神殿』でポータルゲートが開く前の朝の時間帯だったんだ。


「あれ? でも、この衣装はなんで?」

 僕の格好はあんまり関係ないような。

「そらイベント名が『白き薔薇の巫女姫の願い、冒険者VSゴーレム軍団』やからやん。ユウっちの演説を聴いて戦場に赴く冒険者っ! 命を賭けて巫女姫の願いを届けるのだっ! みたいな?」

「き、聞いてないよっ!?」

「掲示板見てへんの?」

「見れないよっ!!」

「そやったなぁ、あっはっは」

「笑い事じゃないよっ!?」


 マヤやサラサラさんも笑ってるし、絶対確信犯だっ! 皆グルでやったに違いないっ!

 まさかこの期に及んで本当に『巫女姫』をさせられるなんて……いや、落ち着けこれもアリスちゃんを助けて、コテツさんやホノカちゃんがログイン出来るように回復させる為、その為に敢えて汚名を着るというのも男して正しい姿なんじゃないか!?

 巫女装束着てる時点で正しくない気がしないでもないけど、そう思わないと作戦開始前に心が折れそうだ。


 そう思っていると扉が開く音がした。

「そろそろ時間だが準備は……っと、ユウ、『巫女姫』の格好も似合ってるね」

「あ、シルフィードさん、おはようおございます」

 入ってきたのはシルフィードさんだった。まさかシルフィードさんにまで話を持って行ったなんて……ってそもそも大神殿を借りてるんだからそれ位しないと無理だったのかな?

「はじめまして、ユウ君でしたかな?」

 そう思っているとシルフィードさんの後ろに居た人物が頭を下げた。

 かなり老齢の立派なヒゲが伸びたおじいさんだけど、その身なりや雰囲気が偉い人っぽいのは見て分かる。服装からして『大神殿』の関係者の人だろうか?


「あ、はい、初めまして、ユウです。『大神殿』の方ですか?」

「ホッホッホ、あんたの事はシル坊から聞いとるよ。ワシの事は『おじいちゃん』と呼んでくれてかまわんよ。しかし聞きしにまさる美貌じゃのう。こんな事ならもっと早く逢っておくべきじゃったか」

 柔和な笑みを浮かべるおじいちゃん。

 いやでもおじいちゃんって呼べって言われても……とちらりとシルフィードさんを見ると苦笑していた。


「この方は『大神殿』を管理されている大司教(アークビショップ)様だよ」

 苦笑を浮かべたまま改めて説明してくれるシルフィードさん。

「って、あ、あ、大司教(アークビショップ)様って!」

「なぁに、ただの寺のじいさんじゃよ。面白いイベントするっちゅーから野次馬で観に来ただけじゃしのう」


 そう言って又笑う大司教(アークビショップ)様。『大神殿』のトップがこんな軽くて良いんだろうか?


「まぁそれはいいとして、ユウそろそろ時間だから壇上へ向かおう」

「あ、は、はいっ!」




 シルフィードさんに連れられて何の準備もないままに僕は大神殿のポータルゲート前に作られた壇上へ上げられてしまった。


 舞台袖ではマヤやサラサラさん、シルフィードさんや大司教(アークビショップ)様が隠れて見ている。

 壇上から見下ろす物凄い数の人の姿はもう『セカンドアース』に居る全ての『プレイヤー』が此処に集まっているんじゃないかという気すらしてくる。

 少なくとも『歌唱コンクール』の時の何倍もの人が集まっていた。


 その全ての視線が僕に集まる。


「あ、あの、お、おひゃっ……」


 噛んでしまった……。その瞬間群衆がざわめく声が聞こえた。


 お、落ち着け僕、こういう時こそクールになるんだ。格好いい男に必要なのは余裕だ。

 自分に言い聞かせて深呼吸して気持ちを整える。


「お、おはようございます。『ユウ』です。『白き薔薇の巫女姫』と呼ばれています。今日は突然のイベントに集まって頂き、ありがとうございます。勿論、イベントに関係なくただゴーレムを討伐に来た方も居ると思います。それでも構いません。どうか皆様、お願いします。

 今暫くあのゴーレムと戦い、勝利を掴んでください。でも、無理しないでください。死んでも構わないと無茶な戦い方をしないで下さい。皆で力を合わせて、安全に、確実に、勝利を、経験を、財産を、平和を、手に入れてくださいっ!!

 誰よりも自分の為にっ、命を大事にっ! 楽しく戦いましょうっ!!」


 そう言った時、ウィンドウにメッセージが表示される。

 その台詞を叫ぶように指示されていた。

 意味が分からないけど、言われるままに深く息を吸って出来るだけ大きな声で叫んだ。


「超級神聖魔法っ! 聖戦(ジハード)っっ!!!」


 僕の叫びと共に僕の足下に魔法陣が現れ、その輝きが集まった全てのプレイヤーに降り注いで会場全体いや、会場に居る全ての人々が輝いた。


「「「「うぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!」


 それに呼応して地響きのように叫ぶ群衆。

「ポータルゲート開きましたっ! どうぞっ!」


 タイミング良く『大神殿』の係員が叫ぶと確かに『転移門(ポータル)』の輝きが確認され、そこに向かって我先にと『プレイヤー』達は雄叫びを上げて突入していく。


 のは良いんだけど……『聖戦(ジハード)』って……何?

 見た感じ多分対象を支援する『祝福(ブレス)』や『加速(アジリティアップ)』みたいな強化呪文だと思うけど……。

 僕そんなアーツ持ってないしそもそも『超級神聖魔法』が本当なら『上級』の僕が使える訳がない。


 呆然としながらちらりと横を見たら、大司教(アークビショップ)様が満面の笑みでVサインしていた。



 大司教(おじいちゃん)の仕業かぁぁっっっっっっっ!!



 全てを理解し心の中で絶叫しつつも、それを口に出す事も出来ずどんどんポータルゲートに『プレイヤー』達が僕に感謝の言葉を叫びながら突入していく。


 コレ絶対に勘違いされてるよね……でも訂正も出来ないし。

 いや大司教(おじいちゃん)は支援してくれたんだから別に文句を言う事じゃないけど、もうちょっとこう……なんとかならなかったんだろうか?

 あの満面の笑みとVサインを見るに面白がってやっただけにしか感じられない。


 そう思いつつも結局どうしようもないまま僕の『天空城』突入作戦は始まった。








/どうでも良い設定


神聖魔法(超級)アーツ『聖戦(ジハード)

範囲内の味方全員に効果。全能力値向上、微HP回復、回数制限有で霊護印(エレメンタルガード)防護印(プロテクション)の効果有。再使用可能時間1日。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ