表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクだけがデスゲーム!?  作者: ba
最終章 誰が為の世界。
203/211

第197話 障害。

 『天空城』が現れて一週間。未だゴールドラッシュは続いている。


 『冒険者』が稀少な鉱石や宝石を入手して、それを『冒険者ギルド』や『商人ギルド』が買い取り、『生産者ギルド』で装備が強化され、『冒険者』がソレを買って又ゴーレムに挑む。

 ゴーレムの特性もかなり分かってきて、どうやって分断するか、どのゴーレムがより美味しいかという話題も盛況に交わされているらしい。

 やはりゾンビアタックを高速回転する事で狙うゴーレムさんを確実に倒すというのが定番なようだけど。


 僕はといえばマヤに戦場に出るのを禁止されてる代わりに『冒険者ギルド』に頼まれてAP回復パンの納品量を増やす事になって大忙しだった。

 いつまで『天空城』が居るかわからない以上、稼げる時に稼げるだけ稼ごうという事でAP回復パンのクエストにゴーレム討伐を増やしたらしい。


 狙い通り回転率が上がって納品量を増やして欲しいという事になったのだ。その結果今までより早く起きて仕込みを行うようになった。


「ほな今日もぼちぼち行きましょかー」

 朝食を終えたルルイエさんがコーヒーを飲み干して皆を促した。

「あれ? でも今日はまだコテツさんが来てないけど……」

 そう呟いてテーブルを見回しても席に着いているのはマヤ、ノワールさん、サラサラさん、ホノカちゃん、そしてルルイエさん。

 コテツさんの席は空いたままだ。

 階段の方を見ても降りてくる気配はない。


「ああ、コテツちゃんは今日はログイン出来ないって言ってたわよ~? なんでも調子が悪いみたいで」

 こちらはまだコーヒーを飲んでるサラサラさんが答えた。

「え!? 調子が悪いって病気か何かですか!?」

 サラサラさんの答えに慌てる。昨日はそんな素振り見えなかったけどもしかして風邪とかだろうか? 重くないといいけど……。

「ユウっち、女の子の『調子悪い』にそない反応するんはデリカシー足りんよ? そこは流す所やろ?」

 慌てる僕にルルイエさんが何故かニヤニヤ笑いながら口を挟む。

 と、次の瞬間ルルイエさんの頭にノワールさんのチョップが降った。


「ルル、下ネタ禁止」

「せ、セーフやろ!?」

「アウト」


 下ネタだったらしい。ちらりと見るとホノカちゃんが顔を赤らめてるし、どうやら僕は恥ずかしい事を言ったっぽく、こっちまで赤くなってしまう。

 赤面してるとサラサラさんが手を横に振った。


「ああ、ユウちゃんが心配するような事でも、ましてルルイエが言うような事でもないわよ~? マシントラブルの方みたいね~」

「へー。VRマシンの不調なんて聞いた事ないけどなぁ」

「接続の調子が悪いとかだそうだから、ネット回線の問題なのかもって言ってたわ~」

「あー、それなら有り得るかも知れんね。でもこのゴールドラッシュに参加出来へんなんてコテっち可哀想。コテっちの分までウチが稼ぐから、草葉の陰から見守ってね」


 そう言ってよよよと泣き崩れる真似をするルルイエさん。別に死んでないと思うんだけど……。

「そう、じゃあ今日のルルイエの稼ぎはコテツの分にしましょうか」

「了解」

「本人が言うなら私は構わないわよ~」

 マヤの提案にノワールさんとサラサラさんが頷く。

「ちょっ! それはあんまりやん!? ユウっちもホノっちも難とか言ってって!!」

「私はそれでいいわよ? 私の分減らないし」

「僕は……安全な所で待ってるだけだし、そういう事なら僕の分をコテツさんに……」

「「「それは駄目っ!!」」」


 何故か全員に反対されてしまった。

 大神殿で待っているだけで、戻ってきた皆に『治癒(ヒール)』とその他支援をかけて送り出すだけで分配貰うのは正直申し訳ないんだけど。


「ユウはちゃんと自分の仕事やってんだから胸を張って報酬を受け取りなさいよっ! でないとルルイエみたいなハイエナにアイテム根こそぎ奪われちゃうわよっ!?」

 更にホノカちゃんに怒られた。

「だ、誰がハイエナやのっ!? せめてジャガーとかにしてーなっ!」


 ジャガーなら良いの?




 朝食が終わると皆で『冒険者ギルド』に行くのも日課になっていた。

 僕がパンを納品してる間に皆はクエストを受注する。


「お、ユウじゃねーか。俺等の為に納品お疲れさん!」

「あ、テルさん、こんにちわっ!」


 皆のクエスト受注を待っている間に声をかけてきたのはテルさんだった。

 ……テルさんの為のパン納品じゃないけど……クエストがんばってくれてるのかな?

「でよ、物は相談なんだが、ちーっとばかり回復アイテム融通してくれね?」

 と、思ったらテルさんは小声で僕に囁く。

「駄目ですよ。そういうのしちゃ駄目ってきつく言われてますから」

「ちっ、やっぱ駄目かー! 今日はクランメンバーのログイン率も悪りーし、良い事1個もねぇや」


 そう言ってぼやくテルさん。

「? パーティ足りないんですか?」

「足りないっつー訳じゃねーが、ウチのクランは馬鹿ばっかで、結構数で押すタイプだしなぁ。人数が減るとモロに辛れーんだよなぁ」


 成る程、確かに『銀の翼(ウチ)』や『悠久』は割と少数精鋭だけど、テルさんの『スターダスター』や『白薔薇騎士団』は集団の連携で戦うタイプな気がする。

 特に今回のような平地での広域戦闘だとそういう組織連携は強いのかもしれない。


「あ、でもそういう事なら『悠久』とかと組んで戦えば……」

 『悠久』はたった3人なんだしさすがに3人でゴーレム軍団と戦うよりはクロノさん達にとっても悪い話じゃない気がする。テルさんとクロノさん仲良いし。

「やだよ。どうして俺があんな中二黒騎士と仲良くレアドロップを分け合わなきゃなんねーんだ? ……っと、そういう事ならユウ、お前がウチに……」


「却下よ」

 いつの間にか後ろに居たマヤが長剣を抜きながら一言呟いた。

「ちっ! 過保護娘が来たか。」

「ユウにおかしな事吹き込むようなら今すぐ頭と胴体を分断してあげようかしら?」

 舌打ちをするテルさんにマヤが長剣を突きつける。

「このゴールドラッシュの最中にんな無駄なPVP(プレイヤーバトル)なんてしねーよっ! んじゃっ、ユウまたなっ!」


 そう言って長剣を突きつけられてる事なんて気にも留めずに、テルさんは手をひらひら振りながら去っていった。

 テルさんが『冒険者ギルド』から出て行くのを確認してマヤは舌打ちしながら長剣を鞘に収める。


「……まぁいいわ。ユウ、こっちの準備も終わったし行きましょう」

「う、うん」


 そうして今日も僕達は『ゴーレム討伐』に向かう。




 ゴールドラッシュも10日目を迎えた。その間に1つ戦況に大きな変化が起きた。

 『ゴーレム討伐』の参加人数が少しづつ減ってきているのだ。


 別にレアドロップが下がった訳でも、まだ流通が飽和して値下がったりという訳じゃない。

 そもそも『セカンドアース』へのログイン率が少しづつ減ってきているのだ。


 僕達が最初にソレに気付いたのはコテツさんがどうやってもログイン出来ないという事からだった。

 次いでテルさんやアンクルさんや他の人に聞いてみたらやっぱりログイン出来ないクランメンバーが多いという事だった。更に今日はホノカちゃんとノワールさんもログイン出来ないという連絡があったそうだ。


 ネットゲームで接続不良自体は割と良くある事らしいけど、それでもユーザーにとってはたまったものじゃない。特に今の『ゴールドラッシュ』中の接続不良で掲示板等も不満が爆発してるらしい。


 僕達は……といえばコテツさんもホノカちゃんもログイン出来ない状態という事で今日は無理せず狩りはお休みで、サラサラさんはログイン出来ない3人と連絡を取る為にさっきログアウトしていった。


 『銀の翼』のホームに残される僕とマヤとルルイエさん。

 メンバーが半分以下になるといつも騒がしいリビングも閑散とした感じがする。


「あ、あー、ユウっち。ちょい今日時間ええかな?」

 そんな時、ルルイエさんが僕に話しかけてきた。

「あ、はい。いいですよ、もう今日の分の納品も終わったし」

「うん、えっとな、実は……先輩、池田はんがユウっちと話したい、言うてんねん」

 ルルイエさんの言葉にマヤの眉がぴくりと動く。


「池田さんが、ですか? 別に良いですけど……」

 でも何だろう? もしかして僕の身体の方で何かあったんだろうか? 特に僕自身に変調はないし、まだ『ログアウト』表示は出てないけど……あ、アリスちゃんの情報が入ったとか? なら良いな。


「そかっ! ほな、よろしゅうっ!」

 呼ばれた理由を考えていると、ルルイエさんがそう言った瞬間、視界が一瞬で切り替わって『神のダンジョン』で池田さんと話した『あの部屋』に立っていた。


「ルルイエ、もうちょっとわかりやすく転移してよ。心の準備がないとちょっと驚くわよ」

 そう言うマヤが僕の横に立っている。

 ちょっとどころじゃなくて物凄く驚いたよっ!? 一瞬で視界が切り替わるって凄く怖いっ! けど、マヤが平気そうなのに僕がびびったりしてたら格好悪いから平静を装う。


「やあユウ君、そしてマヤ君。すまないね、呼び出して」

 今日はフードどころか『白の使徒』のローブも着ず、普通に白衣を着たお医者さんか科学者さんみたいな格好の池田さんが出迎えてくれた。その後ろにはやはりあの日と同じく白衣を羽織ったテレスさんも立っている。

 これではむしろファンタジーな格好してる僕やマヤの方がコスプレしてるような気恥ずかしさを覚える。

「あ、いえ、構いません。今日はお休みだったし」

「用件は何?」

 勧められた椅子に座って答えるとマヤは本題を迫った。


 その様子に池田さんは苦笑する。

「そうだね。用件は話題の『天空城』についてだ」

「それと『接続不良』についてもかしら?」


 マヤの問いに一瞬真面目な顔になった池田さんが頷いた。

「そう、それにも関連している。そしてアリスについても可能性がある事柄だからユウ君を呼んだんだ」

「アリスちゃんが見つかったんですかっ!?」

 池田さんの答えに椅子から立ち上がって尋ねた。


「いや、まだ可能性の段階だ。それでも藁にもすがる思いだからね。……とりあえず順を追って説明しよう」


 そう言って池田さんがテレスさんに指示をすると、横のホワイトボードに『天空城』が映し出された。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ